マイ・ブラザー -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2015年11月08日

ストーリー・ネタバレ

米軍大尉であるサム(トビー・マグワイア)は愛する妻グレース(ナタリー・ポートマン)と2人の娘を持つ真面目で誠実な男。
しかしサムの弟トミー(ジェイク・ギレンホール)はろくでなしであり、強盗をして刑務所入りしているような男。服役を終えたトミーをサムが迎えにいったが、帰って早々、トミーを邪険にしている、サムとトミーの父親ハンク(サム・シェパード)と喧嘩になってしまう。グレースも、陰ではトミーを好きではないなどと娘たちにもらしている。

トミーが出所して間もなく、サムがアフガニスタンへ派遣されることになった。
そして、ヘリ搭乗中にあっさり撃墜され、消息は分からないものの戦死扱いになってグレースたちの元へ悲報が届いた。
悲しみに暮れるトミーやグレース。そしてサムの葬式ではまたもトミーとハンクが喧嘩になってしまような状況で先が思いやられる。
しかし、兄が死んだことで考えるところがあったのか、トミーは真人間として生きるよう努める。そして徐々にグレースやその娘2人とも親交を深めていくのだった。
ある日トミーとグレースが会話をする。その中でグレースは現在のトミーを悪からず思っていることを言葉にし、2人はキスを交わす。しかしサムが死んで間もない今、それ以上は憚られるのか、キス以上のことはしなかった。

一方、死んだと思われたサムはなんと実は生存しており、現地のテロリストたちに捕虜として何週間も囚われていた。
生き残ったもう一人の部下のジョー・ウィリス二等兵(パトリック・フリューガー)と共に暗い穴倉に閉じ込められていた。ジョーには生き残るために拷問を受けてもテロリストの要求(人質としての映像、コメントを撮影する)ことを拒否するように何度も念を押していたサムだったが、ジョーは焼きごてを押し付けられるなどの拷問に耐えられずついに要求通りにしてしまい、撮影に応じる。そしてもはや用無しとなってしまったのでテロリストたちはジョーを殺そうとする。しかも自分たちの手を下して行うのではなく、サムに鉄パイプを渡して「殺せ」と命令してくるのだ。そうでなければサムも殺される状況。苦悩しながらもサムはついに部下であるジョーを滅多打ちして撲殺する。
一人また囚われていたサムだが、米軍の戦闘機がテロリストたちをせん滅し、奇跡的に生還することができた。

その知らせはグレースたちに届く。もちろん歓喜するグレース。
しかし帰ってきたサムはどこか様子がおかしいのだった。それはやはりジョーを自らの手で殺したことによる苦悩ゆえだ。誰にも打ち明けることができず一人悩むサムの心は壊れかけていた。
サムは娘の冗談に「何が面白い?」などと言ったり、グレースには「トミーと寝たのか?」と聞き、トミーにも同様に「妻と寝たのか?」などと聞く。グレースは正直に「確かにキスまではしたけどそれだけ」と言うが、サムは信じてはくれない。そんな様子なのでトミーはトミーでグレースとは寝ていないことを証明するため、そこらでひっかけた、出会って間もない女を連れてパーティに出たりもして気を遣う。が、そのパーティでサムの娘の1人のイザベルがすねてサムを激怒させてしまう。さらにイザベルは「ママはおじさん(トミー)と寝た。パパなんて死ねばよかった」とまで言ってしまう。

いよいよ追い詰められたサムは叫びながら自宅で暴れる。「俺がどれだけ苦しんだかわかるか!?」とグレースに泣き叫びながらの絶叫だ。ついには拳銃自殺しそうになるも、弟のトミーの呼びかけによりなんとか正気を取り戻し、すんでのところでそれは阻止された。
この騒ぎによりサムは警察に拘束された。面会に訪れたグレースは「何があったのか言って。もし言わなければ二度とあなたとは会えない」と泣きながら言う。するとついにサムは「ジョーを殺した」と涙を流しながら告白。そんなサムをグレースは何も言わずにただ抱きしめるのだった。

感想・評価

トビー・マグワイアはスパイダーマンくらいでしか見たことないけど、顔や名前に特徴があるんですぐに名前も出てきた。マグワイアって野球選手でも有名だし覚えやすい。ジェイク・ギレンホールは最近見た映画ではプリズナーズで見た。そんなことはどうでもいいですね、はい。

huluで視聴したが、その簡単な概要では「兄を戦争で亡くした弟が心を入れ替える」というようなものだった。そうなると当然、弟側が主役となるのだろうと思ったのだが、まさかの兄生存。そして部下殺しの罪悪感で壊れかけた兄を見て弟や妻が狼狽する、という構成。マイ・ブラザーなんてタイトルよりはマイ・ファミリーでよかったんじゃないのか?ちなみに原題は「Brothers(ブラザーズ)」だそうで。

無事にアメリカに帰ってきてからのサムは執拗に妻のグレースに対して「お前は弟と寝たんだろ」と詰め寄る。トミーに対しても同様だ。なんでそれまで?と疑問だったのだが、他のサイトのレビューを見て納得させられた意見があった。それは「自分が犯した部下殺しの罪悪感を和らげるため、妻や弟も不道徳を犯していてほしかった」というものだ。こういう考えは視聴中全く浮かばなかったので感心した。なるほど確かに自分だけでなく他の身近な人間も悪者であれば自分だけが罪人というような罪悪感はいくぶん和らぐのかもしれない。そう考えると、終盤で拳銃自殺をしそうになるシーン、サムがグレースに対してこの○バズレが!とひどく罵倒しながらも一方でお前たちを愛している!と叫ぶ様は、罪悪感、家族への愛情、弟と妻への猜疑心が入り混じった、リアルな感情表現かもしれない。

それにしても、娘のイザベルのパーティでの台詞はいくらなんでもあんまりである。母親と叔父が浮気がしていると嘘をついたあげくにパパが死ねばよかった、なんて言葉を吐く。こんなこと言われたら大抵の父親はちょっと立ち直れなそう…。10にもなっていないような娘にこんな台詞を言わせるのはちょっと無理がある気がしたし、本当にあんまりにもあんまりなのでこの辺はもうちょっとマイルドにしてほしかったかな。

項目別評価

ややタイトル詐欺気味だが、戦争で負った業を誰が和らげるのか?それは家族しかいない。というようなテーマ性は十分に伝わるもの。サムが泣きながらグレースに告白し、それに対して何も言わずに抱きしめるグレース、そしてエンドクレジットへ。というラストの流れが素晴らしい。気になる点もないではないが、いい意味で終わりよければ良し、を地でいっている良作。

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