ニュー・シネマ・パラダイス 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2017年05月06日

あらすじ・ネタバレ

この作品には約120分の劇場公開版と約170分のオリジナル版が存在するがここでのネタバレは前者の短い方のもの。

冒頭、ある女性が息子に電話をかけている。それはローマにいる息子に対してだが、女性の娘は「もう30年も帰ってきていないのだからあきらめましょう」と言う。母親が何を息子に伝えたいかというと、「アルフレード」という男性が死去したということだ。

場面は変わってとある家。帰宅してきたサルバトーレという男性はベッドで寝ていた愛人と話す。このサルバトーレが冒頭で電話をしていた母親の息子だった。その愛人からアルフレードという男性が死んだことを伝えられたサルバトーレはそっけなく返事をして眠りにつこうとするが、彼はベッドに入ると目を瞑ることはなく、子供の頃の回想を始めた。

それは第二次大戦が終わった直後のシチリアのとある村の話。サルバトーレはここの生まれであり、子供の頃は「トト」という愛称で呼ばれていた。村にたった一つだけある映画館「シネマ・パラダイス」にトトはよく出入りしていて、そこの映写室で技師をしている中年男性こそが「アルフレード」だった。アルフレードは自分の仕事場に出入りするトトを鬱陶しがるも、相手をしていた。
ちなみに、この村での映画上映は規則があった。性的なシーン(主にキスシーン)は神父の検閲によりカットされてしまうのだ。そのため、キスシーンが始まりそうになるとその瞬間にカットが入り一気に場面が変わってしまう。映画館はいつも満員だったが、このカットが入るたびにブーイングが入り、「もう20年もキスシーンを見ていない」と文句を言う客もいるほどだった。このカットしたキスシーンばかり集めたフィルムをトトが欲しがるため、渋々ながらもアルフレードは許可する。しかしそれでも管理するのは自分だと言い、フィルムをトトに渡すことはなかった。

またトトは、母親から牛乳を買うように頼まれたお金を映画に使ってしまうこともあった。それを叱る現場に居合わせたアルフレードがそのお金を立て替えてトトを救うことも。アルフレードは賢くませたことを言うトトをなんだかんだ言いながらも愛情を持って接していた。トトはいつもアルフレードと映画のことばかり話しているらしく、さらに持ち帰ったフィルムを燃やして妹に怪我をさせてしまうなどしたため、アルフレードはトトの母親から「もうトトを映写室に入れないで!」ときつく言われるのだった。

理由を見つけてまた映写室にやってきたトトに対して映画館で映写技師として働くのは孤独で辛い仕事だとアルフレードは諭した。さらに勝手に映写機を動かしてしまうトトをきつく叱るが、トトは全く堪えることはなかった。この頃、ナポリ人のある男がサッカーくじをあてて一攫千金を手にするという小さな事件があった。

自分を学のない男だと言うアルフレードは小学校を卒業できておらず、いまさらに卒業試験を受けることになった。試験会場にはトトもおり、問題が分からないアルフレードはトトに問題を教えるよう、カンニングを促した。面白がり意地悪をして見せないトトだったが、結局はアルフレードに見せてやったのだった。
これがきっかけとなり再びアルフレードは映写室にトトが入ることを許可し、映写技師としての知識を教えていった。トトとアルフレードの間には親子のような絆が生まれていた。
一方、トトの父親は戦争から帰ってくるはずだったが戦死していることが明らかになった。

日常が流れていく中である事件が起こった。映写室が家事になり、アルフレードが失明する重傷を負ってしまったのだ。
この事件をきっかけに村で唯一の映画館はなくなってしまう。しかし以前サッカーくじを当てたナポリ人の財力で「ニュー・シネマ・パラダイス」となって映画館は蘇ったのだった。そして失明したアルフレードに代わり、青年となったトトが映写技師を務めることになった。

トトはある美しい少女のエレナに恋をした。父親に等しいアルフレードからこの恋のアドバイスや助けを得て、ついにトトはエレナと恋人となる。しかしエレナは上流階級の娘であり、その父親が交際を認めなかった。さらにトトは徴兵により村を離れることとなってしまい、その間にエレナもどこかへ去り、繋がりが絶えてしまうのだった。

徴兵から無事に戻るもそこにエレナはいない。そしてアルフレードは「ここで映写技師を続けるのはお前のためにならない」と言い、トトが村を出て都会へ行くように促す。さらに「故郷へ戻ってくると戻れなくなるからもう故郷には帰ってくるな」と突き放した。しかしこれも全てはトトのためを思ってのことだった。

しかしアルフレードの訃報を聞き30年ぶりにトト、サルバトーレは故郷に戻ってきた。有名な映画監督となっていたサルバトーレに対して多くの人間は敬意を払い、誇りに思っていた。30年前に家族を顧みず出ていったサルバトーレを母親も恨んではおらず、それが正しかったとさえ言ってくれた。
テレビが普及した時代においてあのニュー・シネマ・パラダイスはすでに故郷に必要なものではなくなっており、じきに建物ごと解体される予定となってしまっていた。サルバトーレはアルフレードの妻からあるものを受け取った。それはキスシーンをカットしたあのフィルムだった。

結末のシーン。ローマにもどったサルバトーレはそのフィルムを映写機を使って視聴し始める。それはカットされたキスシーンばかりが集められたものだった。それを子供のような表情で見るサルバトーレ。彼が見る映画のスクリーンに Fin」の文字が現れると、この「ニュー・シネマ・パラダイス」も終わりを迎えエンドクレジットが流れ始める。

感想・評価

毎度映画の感想を書くとなると、まずはネットでこの作品に関しての解説を多少は観るようにしている。出来る事ならそれもなしに書きたいのだが、自分だけで完結してしまうと、その映画に関してあまりにも頓珍漢なことを書きかねないのであり、噴飯ものの評価にもなってしまう可能性があるからだ。それもまた紛れもない自然な評論となるから別にそれはそれでいいのだが、とにかく自分の場合はそうしている。

で、もちろんこの名作の誉れの高い「ニュー・シネマ・パラダイス」に関してもまずはネットで検索をしたのだが、まず驚きの事実。
自分が見た(Huluで視聴)のは劇場公開版であり、他にこれよりも50分も長い完全オリジナル版が存在するということ。

そして50分ものカットシーンがあるということで、2つは全く違った趣旨になってしまっているとのことである。自分はオリジナル版を見ていないがどうやら劇場公開版は以下のようなシーンがカットされているらしい。

ということで、完全オリジナル版だとアルフレードがトトとエレナを引き離すという、トトが一生ものの恨みを持ちかねないことをやっているようだ。しかしどうやら完全版でもトトがアルフレードを恨んだりするようなことはないようだが…。それだけ当時の身分の違いという壁は大きいかったということを表しているのかもしれないが、トトは30年の間、身を固めることをせず恐らく50才?も近いような年齢で未だに恋人をとっかえひっかえ、というような生活を送っているようである。完全版を見ていない状態で言うのもなんだが、エレナの件が尾を引いてそうなっているようにも思えるし、本当にアルフレードがトトにしてやったのは正しかったのだろうか?と思ってしまう。

というのはまあ、「劇場公開版を見てオリジナル版を又聞きした」という変則的な目線からの感想だ。120分の短縮版を見ただけなので、オリジナル版を見ないでそういう感想を書くのは頂けないだろう。短縮版だけを見る限りではトトとエレナが引き離されたのはやむを得ない理由だったわけで誰が悪いわけでもない。

しかしこのシーンをカットしているせいなのか、この物語において抑揚がなくなっているような気もする。というのも、最後のフィルムを見るシーンでエンドクレジットに移行した瞬間、「ええ終わり…?」って言葉が思わず出てしまったのだ。だって、トト目線から見れば帰ってきても待っていた主だった人物といえば母親だけで、エレナと出会わず、もちろん死んでしまったアルフレードとも出会わずともなれば、故郷に帰ったところで何のドラマもなかったのだ。これで終わってしまったらただ「主人公が望郷によりセンチメンタリズムに浸かる」だけの映画だけじゃないだろうか?トトは帰郷時に母親から「あなたはいつも違う女性といるがお前を心から愛している声をまだ聴いていない」と言われる。これは中年のトトが進行形で抱えている問題であり、最後まで明確な解決とはならない問題だ。これは結局はエレナを追い続けているからではないか、不本意だった若かりし頃の恋人との離別がトトの心に影を落としているからではないか?そんな風にも思えるので、やはりこれに決着をつけてくれるのはエレナとの再会だったんじゃないのかな、と。
いやだから、完全版を見ないでこういうこと書くのが間違いなのかもしれないんだけどね。少なくとも自分が毎月金払ってるHuluでは120分のものしかないんで、どこ行けば見れますかね?

というわけで、170分の完全版の方が蛇足だとかいう意見も少なからず多いらしいが、少なくとも120分の短縮版だけを見た限りだと、これはこれで「何か足りない」んじゃないかなあ、と。そんな感想でした。

人物解説

サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ

演:サルヴァトーレ・カシオ(幼年期) マルコ・レオナルディ(青年期) ジャック・ペラン(中年期)
主人公。幼少時は「トト」と呼ばれている。アルフレードに厄介がられながらも村に一つだけある映画館の映写室に通い、いつしかアルフレードとは親子のような関係に。アルフレードが事故で引退後は正式に映写技師になるが、徴兵により一度村を離れ、この時に恋人のエレナとも離れ離れになってしまう。帰ってくると自分の代わりに技師をやっている人間がいて肩を落とす。そんなトトにアルフレードは「村を出ろ」とアドバイス。「もう帰ってくるな」とも。その通りにして、立派な映画監督になり成功者となるも、トト の母親のマリア曰く「いつも違う女といて、どの女も真にトトを愛しているわけではない」らしい。少年時の子役は生意気でませているが、とても愛らしいと思った。アルフレードが可愛がるのもわかる。画像は何してるとこかっていうと映画館のシートに顔をつけながら振り返っているポーズ。

アルフレード

演:フィリップ・ノワレ
トトと親子のような関係になる中年の男性。たくわえたヒゲがチャーミング。村に一つだけある映画館で映写技師をやっているが、学のない自分にはこれくらいしかやれることがなく、映写技師は孤独で辛い仕事だと思っている。小学生の卒業試験に四苦八苦しカンニングを企むほどに学は足りてないようだ。映画館の火事の後は失明し常時サングラスをかけるようになる。トトには技師としての技術や知識を授けるが、トトのことを想いあえて突き放し、「故郷を出ろ」とアドバイスする。トトは30年の間一度も帰郷しなかったらしいが、トトが村を出る時点で結構な高齢に見える。しかし30年も生きたのだからせいぜい50〜60才だったということか。

エレナ

演:アニェーゼ・ナーノ
トトが青年時代に会う美しい女性。この絵で伝わるかどうかは微妙なところだと思うが本当に美人。しかもいいとこのお嬢様。一度は「あなたに愛情はない」と辛らつにトトを振るが、毎晩家の前で返事を待つと宣言しその通りにするトトについに陥落。二人は恋人となるも、身分の差からエレナの父親が認めず、またトトが徴兵されたのもあり、それきり出会うことはない。完全版だと30年振りの帰郷の折に再会するらしい。

項目別評価

トトとアルフレードの友人のような親子のような絆に感じ入る話だった。一般的には非常に評価の高い映画だが、個人的には絶賛というには遠い、「いい話ではあるが割と普通」という印象の物語だった。というと感じが悪いが、序盤で幼いトトとアルフレードが本当の親子のような交流をする場面の数々は癒され、よく挙げられる結末のシーンよりもその辺りが好きだった。

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