ニック・オブ・タイム -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2016年10月22日

あらすじ・ネタバレ

ロサンゼルス郊外のユニオン駅に正午ごろ到着したワトソン(ジョニー・デップ)。娘のリン(コートニー・チェイス)を連れて行動していたが、突如、駅で男女二人組に声をかけられる。この男スミス(クリストファー・ウォーケン)と女ジョーンズ(ローマ・マフィア)は警察手帳をワトソンに見せて強制的に車に押し込める。そしてそこで、「ある人物を1時30分までに殺せ、そうでないと娘を殺す」とワトソンを脅す。そしてその人物の写真が入っているという封筒と、拳銃を渡されたのだった。

娘を人質に取られてしまったワトソン。娘はジョーンズと共に車におり、トランシーバーによりスミスとジョーンズはいつでも連絡を取れる状態。とりあえず指示に従うふりをするが、助けを求めて画策する。警官に声をかけたり、タクシー運転手にメッセージを残したりするが、上手くいかず、また常にスミスがそばで見張っており脅してくるので行動にも制限がある。
殺すよう指示された人物がいるというホテルにワトソンが到着するとそこで衝撃の真実が。ターゲットとなる、ワトソンが殺すように指示された人物というのは、エレノアという女性州知事だった。これを知ってさらに焦燥を深めるワトソン。知事が乗ったエレベーターに乗ることには成功し、そこで知事に事情を明かそうとしたが、スミスも乗り込んできたことでそれはできず、殺人をためらい、エレベーター内で殺すことも結局はできなかった。

知事がホテルの屋上で演説を行うので、今度はそこで殺すようにスミスに指示される。屋上では金属探知機でのボディチェックがあり、銃を持っているワトソンは拘束されてしまうだろうと覚悟したワトソンだったが、チェックをする係はワトソンのボディチェックをする時に金属探知機の電源を切った。またさらに、屋上にいる警備員に「暗殺を計画している男がいる」と言い助けを求めたところ「君も暗殺者だろ」などと返される。つまり、ボディチェックの男も警備員もスミスとグルなのだ。

知事の演説中に知事の秘書の女性に事情を話すことには成功したワトソン。幸い、秘書はワトソンを信じてくれて、「信用できる人間に事情を話す」という。秘書が言う人物とは、知事の夫のブレンダン(ピーター・ストラウス)だった。しかしそこでさらに衝撃の真実。なんと、スミスはブレンダンと通じていて、知事殺害を企てていたのはブレンダンだった。その場で秘書は射殺されてしまう。ワトソンはそこで自分が銃の凄腕となってスミスたちを倒すビジョンを見たが、殴られて意識朦朧としていた中での妄想にすぎなかった。意識を取り戻したワトソンは改めて知事殺害をするよう脅迫されたのだった。

ワトソンは秘書と会う前にも一度、ホテルのエントランス付近で靴磨きをしている男性、ヒューイ(チャールズ・S・ダットン)に会い、なんとか事情を伝えることはできていた。ヒューイは退役軍人で、義足の黒人男性。秘書が殺された後、もう一度彼に会う。「面倒事に巻き込まれたくなどない」というヒューイだったが、ワトソンが「ヒューイは耳が聞こえない」と嘘をつきスミスを油断させると、スミスはヒューイのすぐそばで殺しについての会話をしてしまう。それによりヒューイはワトソンに協力する気になったのだった。
そしてヒューイは「直接知事に会え」という提案をする。ワトソンはヒューイに協力してくれたホテル従業員の服装と自分の服装をトイレで交換、それによりスミスにはワトソンがトイレに入り続けていると思い込ませることができ、自分は従業員の服を着て、知事の部屋へと潜入することができたのだった。

知事に会いワトソンは銃を突きつけながらも、「あなたの夫が暗殺を企んでいる、あなたの秘書も殺された」と事情を説明するも知事は半信半疑。最後には大声を出して警備を呼び、ワトソンは退散することになってしまったのだった。しかし、この行動は無駄ではなく、知事に疑心を植え付けることはできていた。
タイムリミットの1時30分が迫る。知事は最後に屋内でテレビ演説を行うことになっていた。ここで知事を殺さなければいよいよワトソンの娘のリンも殺されてしまうことになる。変装していたワトソンはトイレで自分の恰好に戻り、スミスに見張られながらその現場へと行く。

いよいよ娘を助けるためには知事を殺すしかなくなったワトソンだが、知事が演説を行う現場が「厚い壁のせいで通信ができない」場所であることを知った。このため、例え自分が指示に逆らってもスミスは外にいるジョーンズにすぐに連絡をすることはできないと考え、知事をではなく、スミスを狙う。すると現場は騒然となる。結局、知事はワトソンではないスミスの仲間に撃たれてしまい、知事のボディガードはこれをかばった。
エレノア知事が死んだと思い込んだ夫のブレンダンは「弱者の味方をするような政策をするからこうなった」などと妻の前で話すが、知事は生きていた。エレノアは夫を疑っていたため、ボディガードは防弾チョッキを着こんでおり、そのためエレノアも無事だったのだ。ブレンダンの思惑を知ったエレノアは「なんて人!」と言い、こうしてブレンダンの思惑は完全に明るみに。

一方、車内のジョーンズはタイムリミットが来たのでワトソンの娘のリンを殺そうとする。しかしそこに現れたのはヒューイ。サービスだと偽って車を洗い、リンを殺させないようにする。激昂したジョーンズはヒューイの義足を銃撃する。リンは逃げ出そうとするが、そこにスミスが現れてリンを殺そうとする。しかし間一髪のところで、スミスをワトソンが撃った銃弾が貫く。スミスは「やるなワトソン。やはり只者じゃなかった」などと言い残して絶命した。
ジョーンズはヒューイと肉弾戦になっていたが、ヒューイは自分の義足でジョーンズを殴って昏倒させて勝利した。

事態が収まった後、一人の老人がホテルから離れていった。それはワトソンが秘書とブレンダンの部屋に入った時にもいた男だった。
これで終了。

感想・評価

序盤では、最初に空港で突如スミスに脅迫された時点では本当の警察が何かの事情のためにワトソンを脅迫しているんだろうな、なんて勘違いしていたので、「とりあえずやっちゃえばいいんじゃないかな?多分知事が悪人なんだろ」なんて思ってしまっていたのだけども、普通にスミスは普通に悪い男だったという。いや、完全に読み違えていました。

完全に孤立した状態で靴磨きの黒人男性ヒューイにだけはどうにかこうにか助けを求めることには成功し、徐々に状況を改善していく。視聴者側としては孤立無援な当初の心細さが徐々に安心感へと変わっていくのが楽しく、特に知事に会えたあたりでは「これはきっとどうにかなるだろう」という気持ちになれる。主人公ワトソンに共感し、この変遷を楽しむ映画なのではないかと思う。

ところで、視聴し終わって振り返ってみると、この映画にはいくつか不明な点がある。以下に挙げてみるが、単に自分が情報を見逃しているために理解していない可能性もあるので注意。録画とかしていなかったので見返すことができないのです。それと、感想やあらすじを書くのにウィキペディアは参考にしているものの、他のサイトはあえて見ないようにしている。

まず、なぜワトソンとリンの父子はロサンゼルスへ来たのか?ということ。
確か、序盤のワトソンとリンとの会話で母親について触れるものがあったような気がする。そしてタクシーの運転手との会話で妻は死んだらしいことがわかる。ワトソンは12時過ぎてしまっているのを見て「遅刻だ」とも言っている。これが具体的に何だったのかは不明。

二つ目。ワトソンに殺しを強制するスミスたちはそもそもなぜ自分たちで殺さず、素人を脅迫して知事を殺さなければならないのか?
これが一番疑問だったのだが、どうも明確な答えは作中で明かされなかったような気が…。確か、ワトソンがエレノア知事の夫ブレンダンの部屋まで来て気絶させられた時に「スナイパーで殺せば早いのにこんな素人に頼ることにならないとは…」とか言っているのを、意識朦朧としたワトソンが聞くシーンはあった。いやそれってどんな事情だ?。罪をなすりつける、としてもどうもリスクも手間もありすぎて腑に落ちない。事実、ワトソンはイレギュラーな行動を取りまくり、スミス、ブレンダンたちの計画はもうメチャクチャなわけで。駅では「大切な者がいる誠実な男」が御しやすいと考えてスミスたちは捜していたようだが、いくらなんでも決行一時間前ほどにそれを見つけて脅迫して殺しを依頼して…ってリスキーすぎるだろう。こんな感じなら、少なくとも数日前からワトソンにコンタクトしているならまだ現実味があったように思える。
ワトソンもワトソンで、いっつもそばにいるスミスに「なぜ自分なんだ?」とも何とも聞かないんだもんなあ…。聞いても答えなかった可能性はあるが、それが殺しを決意する後押しになると考えて、タイミングによってはスミスが教えてくれる可能性もあったと思うんだが。

三つ目。最後のシーンでホテル前から去って行った男は誰か?
これはワトソンが知事の夫の部屋に来た時にいる男である。ブレンダンとグルの悪い人間ではあるのだろうが、この男の存在が謎。ウィキペディアにもなんと「謎の男」表記になっている。思わせぶりだが誰やねんアンタ!謎の男が謎の男のまま終わるってどういうことだ…?

その謎とは全然関係ないが、これは上手いと思った展開が、ワトソンとヒューイの二回目のやり取り。
ワトソンは靴磨きをしてもらっている最中に、近づいてきたスミスに対して、ヒューイは耳があまり聞こえない(実はそんなに悪くない)と嘘をつく。そして背後からスミスがヒューイに声をかけてもヒューイは無視をして、本当に耳が聞こえないとスミスに思い込ませることに成功、そしてスミスはまんまとヒューイの近くでワトソンと殺しについて話をしてしまい、ヒューイは事情をより深く知り、ワトソンに協力する気になる、というところだ。
ここのやり取りは一回目のやり取りで、ヒューイが面倒事に関わりたくないがために「耳が聞こえない」などと嘘をついたのを上手くワトソンが再利用していて、そしてその意図を汲み、ヒューイがスミスの呼びかけを無視をするという、スミスに対する高度な(というほどでもないか)トラップ。ここは「おお、二人ともやるな」などと感心してしまった。
ここ以外でも、冒頭の駅ではリンに悪絡みしてくる男に対して皮肉を言いながら痛い目を見せてやったり、ホテルのバーで一杯飲んだ後に会計を求められた時にスミスを指さして「あの男が支払う」などと言って時間稼ぎをしたりと、頭の回転が早いところをワトソンは見せている。スミスが死に際に感心するように、確かにただものではない機転と冷静さは持っているキャラクターであるのは随所で表現されていたわけだ。

項目別評価

唐突に始まり、徐々に状況が明かされる流れは視聴する者を引き込み、先が知りたくなるパワーがある。「素人に殺しをさせる」というそもそもの設定に無理があるところや、重要なところが偶然任せ気味、たとえば最後の現場がちょうど外部と音信ができないこと、ヒューイがタイミングよくジョーンズとリンが乗った車を発見することなどがやや気になったが、佳作以上の作品ではあると思う。あと、ジョニーデップがとても若く、今見ると新鮮。

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