おおかみこどもの雨と雪 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>おおかみこどもの雨と雪

執筆日:2015年7月20日

評論

細田守監督のアニメ映画。17日に放映した時をかける少女を先に書いたがこちらも書く。
時かけは視聴3回目だったが、これは2回目だ。

父親を亡くして天涯孤独の身の「花」。彼女の娘である「雪」のモノローグで物語は語られる。
女子大生だった花は、とあるきっかけから「彼」と出会う。いつしか彼氏彼女の関係となって付き合い始める。
親密な関係になった「彼」から秘密を打ち明けられる。実は「彼」は狼男であるということ。しかしそれでも花は彼に対する思いは全く変わらなかった。

花と彼は愛し合い、子供、長女の「雪」が生まれる。人間と狼男のハーフである雪は人間の姿と子供の姿を切り替えることができる性質を持っていた。さらに第二子、長男である「雨」も生まれた。
幸せな家庭をこれから作っていくはずだったが、ある日「彼」が事故で死んでしまう。
たった一人で二人の子供を育てていくことになってしまった花。当初は都会の中で生きていこうとしたが、子供が人と狼男のハーフだということは隠し通していかなければならないという軋轢の中で花は磨耗していく。花は田舎でひっそりと生きることを選んだ。

山奥のオンボロな廃墟めいた一軒家を安く買い上げ、リフォームして暮らし始めた花、雪、雨。
周囲に家がない環境のため今までと違い周囲の目を気にする必要性は無くなったが、それでも楽な暮らしではない。彼が残したお金はあるものの、経済的に困窮しているため、畑を使って農作物を作らなければならなかったからだ。素人の花がそう上手く作物を作れるはずがなく失敗の連続。
しかしある日、韮崎(にらさき)という老人がぶっきらぼうながら花に助言をしてくれる。以降、アドバイスをしてくれるようになり、それからは韮崎だけでなく近くに住んでいる年寄りたちが花を助けてくれるようになった。これは実は韮崎が他の人間に、花を助けてくれるように頼んでいたからだった。

雪や雨も順調に育っていき、雪は小学校に入ることになった。
最初は人が大勢いることに驚いた雪だったが、すぐに慣れた。しかし、狼であるがゆえの自分の趣味などが普通の女の子とは違いすぎることに引け目を感じており、それを意識して押さえ込むように。ある日、勘の鋭い転校生の藤井草平に詰め寄られ、とっさに狼の爪を出して傷を負わせてしまう。とりあえず狼であることが公にはならなかった。
雨も雪を追ってすぐに小学校に上がる。しかし引っ込み思案な雨はあまり学校には馴染めず、数年は小学校に通ったものの、不登校になり、代わりに家の近くの山に良く入るようになり、キツネを先生だとして山河を駆け回るように。
つまり、姉の雪は人間として、弟の雨は狼として、ハーフの二人の子供はそれぞれ別の道を歩み始めたのだった。二人は生き方について衝突し大喧嘩することも。

ある嵐の日、雨は山の中に入っていく。心配して追う花。山の中で半ば遭難するも、雨の手により助けられる。が、雨は母親の花に別れを告げ、この日を境に完全に狼として生きるようになった。
同じ日、雪は草平に対して自分の正体を明かす。しかし草平はそれを見ても驚くことはなく、以前、傷を負わされた時から知っていたと返した。これにより雪はずっと草平に対して持っていたしこりを解消した。

それからは雪は中学校に進学、花とは別居することに。雨は花の住む家の近くの山で狼として生きることに。
どこからか聞こえる狼の遠吠えを聞いて嬉しそうにする花のシーンで物語は終わる。

ここから感想。
今回2回目の視聴だったわけだが、1回目の視聴が終わったとき、「結局この話は何だったんだろう?」という疑問が出たのを覚えている。
現実に有り得ない狼男なんてものが出てきて、それと恋に落ちてハーフの子供が二人できて、苦労しながらも育てて、子供はそれぞれ人間として、狼として生きることを選びましたおしまい。って話だから、ちょっと盛り上がりに欠けるのは確かだから。

きっと、「あの〜がこんな風になって…」というように親戚のおばちゃんじみた目線で見るのが良いんじゃないだろうか。女子大生だった花が男もびっくりなたくましさ(家の自力リフォームはマジ凄い)二児の母親として生きるようになったこと、子供の頃はおてんばで、人前でも狼の姿になったりして冷や冷やさせていた雪が、むしろ最後には狼であることを隠し続ける、人間として生きることを選ぶこと。逆に、子供の頃はひ弱で弱気だった雨が、最後には姉を喧嘩で負かすほどのたくましい狼となって巣立つこと。

時かけが実際のところタイムリープという要素が添え物で、本質は王道の青春物語であることと同様、こちらも狼要素はあくまで添え物。
人間誰しもに訪れる、人生における心境の変化、重要な局面での選択、そういったものを取捨していった登場人物たち、その人生の軌跡。そういったものをしみじみと眺め、「人生ってただただ流れていくよなあ」なんて自分に照らし合わせて考えたりして楽しむ作品なんだなと、2回目の視聴後には思った。きっと自分のように感傷的な人間ほど楽しめる作品。

項目別評価

花のたくましさや、二人の子供の成長、それに美しく描かれた田舎の自然映像を見て楽しむ物語。
狼の子供であるという点だけ除けばただただ普通の人生を見せられてるだけとも言えるので、盛り上がりに欠ける作品ではあるのであまりエンタメ性のある作品ではない。ただの女子のはずの花がどういうわけかやたらとたくましいが、逆境にも一貫して折れることがないのには感服する。ていうかある意味、狼以上に人間離れしすぎである。

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