パッセンジャーズ 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>パッセンジャーズ

執筆日:2018年1月21日

あらすじ・ネタバレ

まず簡単なあらすじとネタバレ。
ある旅客機が墜落したが複数の生存者がいた。主人公のクレアはカウンセラーで、この生存者のカウンセリングを担当することになる。クレアはカウンセラーと患者の関係を越えてはならないと思いながらも生存者の一人エリックと親しくなり、男女の仲となった。しかしカウンセリングを続けるうちになぜか生存者たちが消えていってしまう。航空会社のアーキンの態度も不審なため、クレアは何かを隠している航空会社の陰謀だと考えるようになる。だが事実は違った。実はエリックもアーキンも、そしてクレア自身も墜落した飛行機に搭乗していた。クレアは自分が死んだことに気付いていなかった。クレアやエリックの前には既に死んだ者が迎えに来ていたが、これは天国からの迎えだった。消えていった生存者(と思われていた者)たちは自分が死んだことに気付いて成仏していたのだ。クレアも恋仲になったエリックと共に成仏した。
クレアには喧嘩したまま仲直りできなかったエマという姉がいた。クレアがいなくなった部屋を訪れるとそこに「姉さんがいない人生は寂しい」という手紙を見つけた。

ここからは詳しいあらすじとネタバレ。

ある旅客機にトラブルが発生し墜落の危機に陥る。墜落した旅客機の周囲に生存者が複数人歩いているシーンが冒頭に出る。

主人公クレアはセラピスト。
旅客機が墜落して乗客100人超のうち数人だけが生存した。クレアはセラピストとして生存者のケアをすることになる。

生存者のうち一人のエリックという男性に話すと何か楽しそうにしていて妙な雰囲気だった。「姉妹がいるなら電話した方がいい」という謎の忠告を受ける。姉がいるのは事実だが、なぜエリックが知っているのが不審に思った。

クレアは姉のエマに電話するが留守だった。実はクレアとエマは喧嘩しており、交流がなくなっていたのだった。
クレアがグループカウンセリングで生存者の話を聞くとディーンという男性から「上空で光を見た」という話があった。
航空会社のアーキンと会って話すと、事故はパイロットのミスでコントロールを失ったという人的ミスだと説明されたが、クレアは事故は他の要因ではないかと反論する。しかしセラピストの仕事は原因究明ではない、口には気を付けろとアーキンに警告される。

エリックに再び会って話すと自分はセラピーが必要な患者なんかじゃないと言う。しかしクレアはグループカウンセリングに参加することを薦めた。
クレアはエリックが自分について知るはずないこと、例えば姉がいることやコーヒーの好みなど、をエリックが知っていることを不思議に思っていた。

PTSDを患った者は超能力のようなものを得ることがあるという話を調べていたので、エリックはそうではないかと思い友人のペリーに話した。

生存者の一人ディーンが行方不明になった。彼は上空で光を見たと言っていた人物だった。
墜落生存者の一人、ノーマンという男性がクレアの前に現れ、何かから逃げるようにクレアに指示する。

ノーマンは「ディーンの言う通り上空で爆発が起きた」のを思い出したという。そのためノーマンは高空会社は口封じのために自分らを狙っていると言う。確かにノーマンの周囲には謎の男性がいた。しかしクレアは被害妄想だとなだめた。

クレアは再びエマに電話して仲直りしたいと言った。相変わらず留守電だった。

エリックを訪ねたらなぜか風が屋内から噴出してきてクレアは驚く。エリックは趣味として絵を描くようになっていた。しかし彼はそのうちに自棄になったような様子で絵を殴り描いた。クレアはどうしたのか聞いてもなんでもないと言う。そして二人が話している時に外から犬の声がして、それに苛立ったようにエリックは外に飛び出す。クレアは何かとアプローチしてくるエリックに「プロポーズするのをやめるならこれからも交流を続ける」と言った。

家ではたびたびクレアの家に遊びに来る老婆トニが「恋愛には積極的になった方がいい」というアドバイスをする。エリックがクレアの家を訪れて忘れ物を届けに来た。家に入れてくれと頼み込むエリックをクレアは拒絶した。

グループカウンセリングでディーンに続きノーマンも来なくなった。再び航空会社のアーキンが訪れてくる。あくまでパイロットのせいだと言うアーキンをクレアは嫌悪した。

エリックが突然建物の屋上からクレアに呼びかける。クレアも屋上に呼び、そこでエリックは結婚しかけたが結婚式に逃げ出したなどことを話す。

そのままエリックはクレアと二人乗りでバイクツーリングに出かけ、夜にボートに乗る。
エリックは突然海に飛び込む。浮かんでこないのでクレアも慌てて飛び込む。クレアを驚かすためのエリックの冗談だった。
そのまま海に浮かびながら唇を重ね、クレアとエリックは一夜を共にした。
ベッドの中でクレアは姉のエマと喧嘩した件をエリックに話した。生き方の違うエマに対して酷いことを言ったと。しかしエリックは関係は元に戻せると言った。

クレアは花を持って直接エマの家に行った。しかし姉はやはり留守だった。するとアーキンがいた。尾行していたのだ。「患者と寝るのも治療の一つか。君は信用できんな」とクレアに言った。

クレアは友人のペリーにアーキンが付きまとっていること、ディーンとノーマンがいなくなったことなどを話して陰謀があるかもと相談する。
そしてエリックと患者と医者の関係を越えてしまったことも話した。ペリーは特に何も言わず話を聞いた。

一方エリックは家のキャンパスにバラバラになった飛行機らしきものを描いていた。

クレアがノーマンの家を訪れるとノーマンはおらず、以前ノーマンと行動した時にいた謎の男がいた。クレアは逃げようとするが「助けてくれ」と言っていたので引き返して話を聞く。
彼は自分の名前を思い出せないという。ノーマンの顔を見覚えがあったのでノーマンの周辺をうろうろしていたらしい。そして彼も飛行機事故の生存者の一人らしいことがわかった。

エリックは飛行機墜落現場にいた。そして事故の記憶を思い出す。激しく焦燥し「俺は生きてる」と言った。そんなエリックの元に謎の男が現れた。エリックはその場を去った。

クレアは名前を忘れた男性を連れてアーキンの元へ連れていった。アーキンのことも見たことがあると男性は言った。 クレアは「やはり航空会社は何かを隠している」とアーキンに迫るが、クレアがふと気づくと名無しの男性はいなくなっており、周囲の人間は奇異の目でクレアを見つめていた。

クレアが生存者の一人シャノンの元を訪れるとシャノンは謎の人影を見ていて、うろたえていた。
そこにエリックが現れる。シャノンと共に車に乗り、クレア、エリック、シャノンの三人はホテルに泊まった。シャノンに身の上話を聞くと「自分を残して死んだ両親に会ったら許すと伝えたい」という話をした。

三人がホテルで泊まっている時、犬がやってきた。今まで何度もエリックの前に現れた犬だ。エリックによれば自分が6つの時死んだ犬らしい。「自分は事故で死んだ」というエリックに「あなたは生きてる」とクレアは言い聞かす。
しかしエリックはホテルを飛び出していってしまう。そして線路上に飛び出していた。線路の上で列車に轢かれようとしたが、列車はすり抜けていってしまう。
「僕に近づくな」と言うエリックの言う通りクレアはホテルに戻る。すると今度はシャノンがいない。

代わりにそこにいたのはいつも自分の家で会う老婆トニだった。彼女はなぜかエリックの名前を知っていた。クレアはこのトニにエリックの名前を教えたことはないので、このトニも何らかの陰謀に関わっていると疑う。
クレアはペリーに「次々に生存者がいなくなる」と相談する。ペリーは「真実を知りたいか」と言う。クレアはペリーも航空会社に丸め込まれたと言い出す。

憔悴してエマの家を訪れたクレアの元に突如アーキンが現れ、「生存者などいない。全員が死んだ」と言った。あの時パイロットは離婚話で疲れており、副操縦士に全て任せていたという。
相変わらずパイロットのせいではないとクレアはアーキンに反論するが、君は間違っているとアーキンは言う。そして事故は自分のせいだと言い残して去った。

アーキンはその場に乗客名簿を残していた。クレアはそれを閲覧。そこでクレアも飛行機に乗っていたことを知る。クレアも含め、グループカウンセリングに参加していた皆やエリックは全て死者、幽霊のような存在だったのだ。

クレアは以前乗ったボートのところにいるエリックの元を訪れる。
エリックはすでに自分が死んでいることに気付いていた。なぜ教えてくれなかったのかと尋ねるクレアに、エリックは「自分で気づくものさ」と返した。

飛行機に乗った時の回想。エリックとクレアは隣の席だった。偶然で初対面の出会いだったが、色々話すうちに二人は親しくなっていたのだった。

エリックは「親しかった人々が訪れて自分が死んだことに気付かせてくれる」ということを教えてくれた。いつも家で会った女性トニは叔母であり、ペリーはクレアを可愛がってくれた先生だった。エリックが見ていた犬もエリックが子供の頃大事に飼っていた犬だった。墜落現場にいた謎の男はエリックの父親だった。それらは皆、死んだクレアやエリックを迎えに来てくれていたのだ。

再び飛行機での回想。親しくなったエリックとクレアは後で会う約束をした。アーキンは操縦士だった。 そして翼から炎が出て事故が発生した。クレアは死を覚悟し、喧嘩別れしてしまったエマに対して「大好きよ」と叫んだ。エリックは最後までエマにあきらめるな」と励まし続けた。

ラストシーン。ここで初めてクレアの姉のエマが登場。エマは夫と二人でクレアの家を訪れていた。
そこに手紙が遺されていた。「姉さんのいない人生は寂しすぎる」と書かれたそれをエマは抱きしめた。これが結末。

感想・評価

死人が死んだことに気付かず〜って話。多分一番有名なのはシックスセンスですね。そしてこのパッセンジャーズはこの前見た7500と同じく旅客機墜落により死んだ者という点が共通している。あれは2014年映画、こっちは2008年映画であるので、恐らく7500がこれを参考にしたのだろうか。

ということで設定自体には目新しさは感じず、そもそも最初の墜落現場で生存者らしき人物たちが全く無傷なのが明らかに不自然であるので、もしかすると最初から大方の予想がつきかねない作品。墜落現場の周囲を生存者(ではなかったのだが)が歩いている描写は入れない方がよかったんじゃないかと思う。

序盤のエリックだが、ちょっと執拗にクレアにアタックしすぎて若干鬱陶しく感じられてしまう。これはすでに旅客機内でクレアとエリックが出会っていて親しくなっていたことの伏線だし、堅い生き方をしてきたクレアの心を変える存在となるからこういう感じにしたのかもしれないが。序盤だけ見ればストーカーっぽくて、このエリックに嫌悪感を抱く場合も多いんじゃ?とも思う。

否定的なことばかり先に書いたが、総合的には好きな作品。非常に印象に残る作品になった。視聴後は何か凄く胸を締め付けられるような気持ちになってしまった。
それは「死んだことに気付いていない人間を、先に逝った親しい者が迎えに来る」という設定が何か凄く切なくて。

クレアにとってはトニ、ペリー、エリックにとっては可愛がっていた犬や父親。シャノンにとっては事故死してしまった両親。なんか傍から見ると優しくもあり、切なくもあり、寂しくもあり…。ちょっと泣きそうになってしまった。
自分が死んだ時に親しかった誰かが迎えに来てくれる。それは死者にとっては最も喜ばしいことかもしれない。きっと自分が死んださえ忘れて、出会いを喜ぶのではないだろうか?

そんなふうに凄く感情を揺さぶられたせいか見た後数時間は寂寥感のようなやるせない気持ちを引きずってしまった。
映画観てこんな気持ちにさせられるってことはそうない。忘れられない作品になった。

登場人物解説

クレア・サマーズ

演:アン・ハサウェイ
セラピストの主人公。墜落した旅客機の生存者であるエリックたちのカウンセリングを行う役目を担う。患者たちが消えたりする不可解な出来事が起こったため「航空会社が何かを隠しているのはないか」と思うようになるが、実はクレアも旅客機に乗っていて、エリックたちと共に死んでいた。冒頭の飛行機墜落シーンの直後、悪夢から覚めるようにベッドからクレアが起き上がるため、この時点で「クレアも乗っていたんじゃ?」と推測することはできる。旅客機内ではエリックの隣の席で、意気投合してあっという間に親しくなったらしいことがラストの墜落シーンでわかる。

エリック・クラーク

演: パトリック・ウィルソン
生存した男性。何か常に嬉しそうにしていて、クレアいは躁状態だと言われる。クレアがカウンセリングをしようとしても自分は患者じゃないと言う。事故が起きる前に強い風を感じたと証言。これは墜落直前の旅客機の壁が吹き飛んでしまったことを示唆していた。恐らく最初から自分が死んだことに気付いていた人物。それでもそれを認めたくなかったのか情緒不安定で、突然感情的になることがある。クレアに最初から妙になれなれしいのは旅客機に乗っていた時点で相当親しくなっていたからで、それはエリックは覚えていたからだろう。幼い頃可愛がっていた犬が何度も迎えに来ていた。墜落現場を見に行った時はほんの一瞬だけ謎の男性が現れるが、これはエリックの死んだ父親。

アーキン

演:デヴィッド・モース
事故を起こした航空会社の人間。実はパイロットなのだが、それは終盤までわからない。何かとクレアの元を訪れ生存者の様子を気にかける。まるで航空会社が犯した整備ミスか何かを隠すかのように「あれはパイロットの操作ミスだった。それ以外の何物でもない」とクレアに何度も言うが、実は自分自身が墜落した旅客機のパイロットであり、「離婚話があったために精神的に参っていて、副操縦士に全ての操縦を任せていた」というのが事実だった。「パイロットのせいだ」というのはつまり仕事を放棄した自分を許せず責め続けていたということ。しかし、ラストの墜落シーンを見ると突然翼に炎が上がっており、やはりクレアが言う通り整備ミスだったはず。翼が燃えている様子を見ていないアーキンとしては、いくら自分の責任でないとしても「私事で任務を放棄したこと」に対する罪悪感が消えず、死んだ後も自分を責め続けているのだろう。

シャノン

演:クレア・デュヴァル
女性生存者。6つで親を転落事故で亡くして叔母に育てられた。両親が自分を置いて先に逝ってしまったことにより、生きることに虚しさを覚えていたようで、旅客機墜落直前のシーンでもこのシャノンだけは全く騒がず、ただ泣きそうな顔をしているのみ。よほどのペシミストなのだろうが、ホテルでクレアと話した時は「両親に許すと伝えたい」と言っていた。そしてクレアがエリックを追っている間にシャノンの元にはその両親が現れ、共に天国へ行ったらしい。

ディーン

事故前に上空で光を見たと証言。一番真っ先にいなくなった。つまり成仏した。

ノーマン

年老いた男性。ディーンの次にいなくなった(成仏した)。

ペリー

演:アンドレ・ブラウアー
クレアと同じくセラピスト。かと思いきや実はクレアが幼児の頃に世話になった先生だった。クレアは困った時真っ先にこのペリーに相談しに行っており、セラピストと患者の関係を越えてエリックと寝てしまったことまでも話しているため、クレアがどれだけこのペリーを信頼していたかが読み取れる。

トニ

演:ダイアン・ウィースト
クレアが家にいると時折現れる老婆。視聴側からすると、マンションの管理人とか、隣人とかそういう存在に見えるのだが、実は彼女もペリーと同じで、すでに死去しているクレアの叔母だった。ペリーと違い、クレアはこのトニに会っても名前を呼ばず、視聴者からすると何者なのかわからない。ちょっと頭のおかしい人にも見えるのだが、実は自分の面倒を見てくれた、死んだ叔母だった。アタックしてくるエリックと恋愛してみるようにクレアにアドバイスする。

エマ

クレアの姉。クレアは何度も電話したり、家を訪れたりしているがいつも留守。これは本当にいつも留守なのか、それとも死者であるクレアとは別の世界になっているのか、それは分からないが、とにかくクレアは作中でエマと会話することも顔を合わせることもない。しかしラストシーンでは死んでしまったクレアのマンションにやってきて、「姉さんがいない人生は寂しすぎる」と書かれた手紙を見つける。クレアよりも奔放な性格らしく、互いの生き方について言い合いになり、クレアがエマに対して(具体的にはわからないが)暴言を飛ばし、それ以来疎遠になっていたらしい。エマには夫がいるが、墜落事故がなかったらクレアもエリックと結ばれていたのだろうと想像すると、より悲しい。

項目別評価

話自体は他にも同じようなものがあるので、そういう作品を観ていたら冒頭シーンで作品の秘密に気付いてしまう可能性は高い。しかし「親しい人が迎えに来る」というのが響いて非常に切ない気持ちにさせられた。

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