パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールドエンド 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールドエンド

執筆日:2015年8月03日

評論

8月2日の洋画劇場での視聴。1作目から続くストーリーの決着がつく、ディズニーテーマパーク原作の3作目だ。4作目もあるが、そちらは1〜3で登場したオーランド・ブルームやキーラ・ナイトレイが登場しない、独立した作品であると言ってもいいので、これはある意味最終作。

あらすじとストーリー解説。
前作でデイヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)の心臓を手に入れたベケット卿(トム・ホランダー)は心臓を盾に、デイヴィ・ジョーンズを思いのままに操っていた。海賊は次々と粛清される。が、処刑される直前の少年が歌を歌いだす。周囲の海賊たちも歌いだし、それは海賊たちの決起を意味するものだった。
海賊たちはベケット卿の猛威に危機感を募らせ、9人の選ばれた海賊たちを集めて協力することにする。が、その中の一人はあのジャック・スパロウだ。
前作デッドマンズチェストのラストでクラーケンに食われたジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)。彼は完全に死んだわけではないが、クラーケンに食われると「デイヴィ・ジョーンズ・ロッカー」と呼ばれる世界の果てのような場所に閉じ込められてしまっていた。
彼を復活させるために世界の果てまで旅をすることにしたバルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)、ウィル(オーランド・ブルーム)、エリザベス(キーラ・ナイトレイ)たち。だが、彼がいると思われる世界の果てに行くには海図が必要だ。シンガポールの海賊サオ・フェン(チョウ・ユンファ)から海図を手に入れる。

世界の果てと思われる場所に来ると、ジャックがそこにいた。白いカニの力によって船が動くという奇妙な現象と共に。
ジャックを連れて脱出しようとしたが、ジャックは前作のラストでウィルやエリザベスに裏切られたということでウィルたちを信用していない。しかし、デイヴィ・ジョーンズ・ロッカーから脱出するための海図をバルボッサがちらつかせるため、ジャックは仕方なく同行することに。
世界の果ては通常の物理法則が当てはまらない世界だ。だが、ジャックはそこから脱出する方法に気付く。船をひっくり返して海中に沈めてしまうことだ。その状態で夕日が水平線に消えると、ジャックの読み通りデイヴィ・ジョーンズ・ロッカーからは脱出できた。
その後、ある島でサオ・フェン率いるシンガポールの海賊たちと、ベケットたちに遭遇。3つの勢力の思惑が錯綜する。ジャックはベケット卿と話し合い、自分を助ける代わりに仲間たちを売ろうとするが、ベケット卿はこれを拒否。サオ・フェンはエリザベスを手中に収めようとした。が、サオ・フェンはベケットたち東インド会社の手により絶命し、彼はエリザベスに伝説の海賊の印を譲り、エリザベスが伝説の海賊の一人となった。
一方ウィルは父親のいるフライング・ダッチマン号へと向かった。

9人の海賊が揃って会議を開く。そこにはジャックの父親のキャプテン・ティーグ(キース・リチャーズ)も。
誰が海賊のリーダーになるかという話になると皆が自分を推薦する。が、ジャックだけはエリザベスを推薦したため、多数決でエリザベスが伝説の海賊たちを含む海賊たち全体のリーダーとなった。

そのうち、ベケット卿とデイヴィ・ジョーンズとの前面戦争が始まりそうになる。ここでパーレイ(交渉)を行い、あちら側にいたウィルと引き換えにジャックを向こうに引き渡す海賊側。そして結局は全面戦争することになるのだが、海賊側には切り札があった。
それは、9人の伝説の海賊の印(それぞれの宝)を海の女神カリプソことティア・ダルマ(ナオミ・ハリス)に捧げることでベケット卿率いる軍を倒してくれるように頼むことだった。が、結局はカリプソは思うようには動いてくれず、巨大化したのにちに無数のカニになって海に散っていってしまった。

もはやなす術無しだが、エリザベスの演説により海賊たちの士気は上がる。
相手には無数の船団が待ち構えているのだが、実際に行われるのはエリザベスたちとフライングダッチマン号の一騎打ち。嵐の、しかも渦潮に巻き込まれつつの戦いであるので他の船は入れない状況にある。死闘の最中、ウィルはエリザベスにプロポーズし、エリザベスもそれを受ける。
ここでの死闘により、ジャックはデイヴィ・ジョーンズの心臓が入った宝箱、デッドマンズチェストを奪う。それを盾にするが、ウィルがデイヴィ・ジョーンズに刺し殺されてしまう。そこでジャックは機転を利かせ、ウィルが完全に死んでしまう前にウィルの手によってデイヴィ・ジョーンズの心臓を貫かせた。ついに絶命し、海に落ちるデイヴィ・ジョーンズ。

なんとかデイヴィ・ジョーンズ率いるフライングダッチマンには勝ち、嵐と渦潮よりジャックとエリザベスは脱したものの、フライングダッチマンは渦潮に巻き込まれ、ウィルもそれと運命を共にする。
が、次にフライングダッチマンが海中から現れるとそこには平然としているウィルの姿が。デイヴィ・ジョーンズの心臓を貫いたことによりデイヴィ・ジョーンズの役目、フライングダッチマン号の船長として生きることを強いられる呪いにより、ウィルは生き返ったのだ。
フライングダッチマン号を味方と思い込んで無防備に近づかせるベケット卿の船。が、ウィルが船長となったフライングダッチマン号と、ジャックたちの乗る船に挟み込まれて集中砲火を受けたベケット卿の船は木っ端微塵に破壊され、ベケット卿も茫然自失のままに死亡。船団が遠くに控えていたが、それらとは戦わずにそのままジャックたちは逃げてしまった。

ウィルは助かったものの、呪いにより10年に一度しか陸には上がれない身になってしまった。そんなウィルに会いにいくエリザベス。船を下りる際、ジャックと前作ラストのようにキスしようとするも、ジャックはもう勘弁だと拒否する。
ウィル、そしてエリザベスは自らの運命を悲劇とは思わず、ウィルは自分の心臓の入った宝箱をエリザベスに託し 、10年に一度会うことを誓い合う。
エピローグでは10年後、岬にてエリザベス、そしてエリザベスの息子がウィルが10年ぶりに陸に戻ってくるところを見守るシーンが映され、そこで終幕となる。

ここから感想。
時間にして2時間30分以上。これはデッドマンズ・チェストでさえ感じたことだが、この3作目となるとさらに「冗長」であると感じる。
今回、選ばれた海賊たちという設定の新キャラたちが大量に出るし、あげくジャックの父親なんても出てきて、それらが我を通そうとああだこうだと騒ぎまくるため、まあとっちらかっていて、「それで今は何してるんだっけ?」というように話が分からなくなりかけることがままある。特に、1時間弱くらい経過したあたりの、ジャックとサオ・フェンとベケット卿の思惑が色々と入り混じるあたり。誰が何をしたいのか?よくわからなくなってくる。ジャックは仲間を売ろうとするし、ウィルもサオ・フェンと密かに契約しているし、思惑が絡みすぎて混乱する。数回視聴してもそう思うんだから、1回目ならなおさらだ。

しかしこの作品は三作目続いてきたシリーズの最終作としてみるとそう悪くないもんだと思う。
二作目、デッドマンズチェストの感想でも書いたのだが、この作品の売りって、「裏切ったり裏切られたりする」ことだと思うのだ。利己的な海賊どもが好き勝手動くがゆえの行き当たりばったりな、「もう滅茶苦茶だよ」というカオスを楽しむ。海賊なんて奴らは基本的にちゃらんぽらんで、適当で、いい加減で、自分勝手なヤツらなのだ。そして底知れず陽気な連中でもあるだろう。だから、あまり深く考えず、海賊たちがギャーギャーやってるのを見て楽しむ作品。

あるサイトでの感想で見たのだが、原作がディズニーのテーマパークなだけあって、この映画自体もそのものずばり、テーマパークと同じ方向性のエンタメなんじゃないかというような意見があり、共感できた。脚本、ストーリー展開など見ればどうにも褒められたもんじゃないのだが、その辺は深く考えずにおいておいて、「陽気にポジティブにその場のノリで向こう見ずにアクティブに生きてる奴らを見て、こっちもなんとなくポジティブな気持ちになれる」くらいの力は持っているんじゃないかと。細かいことはいいから人生楽しもうぜ?って視聴者に語ってくる映画なんじゃないかと。

それと、三作通してジャック、ウィル、エリザベスの三人は登場するわけだが、ジャックとウィル、あるいはジャックとエリザベスが絡むシーンは、大概どちらかがつっけんどんだったりして、三作も通してるのにそれほどジャックとウィル&エリザベスというのは厚い信頼関係を持っている、という間柄にはなっていないと思う。それはほとんど最後の最後までだ。三作目に限ってはウィルとエリザベスさえも仲違いする。でも、それが面白い。ジャックにとってウィルやエリザベスは、あるいはウィルやエリザベスにとってジャックは、はっきり言えば最後まで互いに利用するだけの関係でしかなかったわけだ。あくまで一時的な熱にすぎなかった。しかしそれでも、それなりに付き合いを続け、共に修羅場をくぐってきたゆえの「腐れ縁」的な親しみは互いに感じているのだろう。だからこそジャックはウィルがデイヴィー・ジョーンズに心臓を貫かれたときに今まで見せなかったような狼狽の表情を見せたのだろうし。深い馴れ合いなんて存在しないが、それなりに積み重ねてきた絆がある。ジャックとウィル&エリザベスは、アウトローで場当たり的ではあるが、確かな「海賊」同士の絆を作り上げたのだと思う。これは三作見て、キャラに愛着持ったからこその好意的感想だけども。

しかしこのワールドエンドではエリザベスがウィルよりジャックを選んだような描写があるが、それが結構違和感あるというか、「お前前作で見殺しにしたじゃん…」と思ってしまうな。エリザベスからのジャックに対しての恋愛感情みたいなものははっきり言っていらなかったと思う。おかげでエリザベスがとんだ尻軽になってしまっている。

作品自体にきつい言い方をすれば、「金のかかった超大作の割にはさほど面白くない映画」かもしれない。それほど難しくない話のはずなのに、あえて分かりにくい展開、演出、台詞選びにしているような印象。クラーケンに食われた人間は世界の果てに囚われるというルール、カリプソとデイヴィ・ジョーンズの因縁、ティア・ダルマが実はカリプソだった、9人の海賊の印によるカリプソの魂の解放、など、突飛な設定も話を分かりにくくしているものとしてマイナス要因。特に、カリプソとデイヴィ・ジョーンズの関係に関しては全て台詞での説明で、結局どういう関係なんだっけ?と終わってみてもイマイチ理解できていない。
アトラクションが原作、そして海賊を扱っているという、明らかに子供向けでもあるようなテーマであるのに、話が複雑で分かりにくいというのは大きな欠点。もう少し分かりやすい話にまとめることができればよかったのになあ。

項目別評価

2時間30分超えと長すぎること、ストーリーの散らかり、登場人物が多すぎがゆえの混乱、ウィルとエリザベスが、本人たちの思いはともあれ、決して本当の幸せとは言えない結末を迎えること。色々と問題はあると思うのだが、このシリーズはとどのつまり「その場のノリ」を楽しむものなんだろう。
最後の海戦に関しては嵐の演出が妥協ないので臨場感ある。さすがとんでもなく金がかかってる映画なだけのことはある。
そしてジャック、ウィル、エリザベスの3人の3作でこつこつ積み上げてきたものにそれぞれの形で決着が着くのは、通してみてみると感慨深くて、そこが好きだ。裏切ったり裏切られたりしたが、まあ終わってみれば全部楽しかったね、という感じの、言ってみれば「悪友」のような、ウィル&エリザベスとジャックの3人の関係が結構気に入ってたんだな、と今回3作目を見終わったときに感じた。

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