ソウ/SAW 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ソウ/SAW

執筆日:2015年10月27日

ストーリー・ネタバレ

有名なサイコスリラーシリーズの1作品目。以前から見たいと考えたいたものの機会がなかった。おそらく立ち位置として似ている「CUBE」は随分昔に一応見たのだけども。現在なんと7作品目までも出ているシリーズだが、とりあえず2とか3くらいまでは今後見てみようと思う。
ここからはネタバレ。

ある男が気を失った状態で溺れそうになったところで目を覚ます。男はバスタブの中。あわてて栓を抜いてバスタブの外に出ると男の声が聞こえた。
その男の近くに照明のスイッチがあるようなのでONにすると、そこは汚い廃墟の部屋であり、2人の男がそれぞれ対角線上の壁際におり、2人とも足に鎖をつけられて拘束。そして2人の男の中央には拳銃自殺をしたらしい、リボルバーを持ったまま息絶えている死体があった。

2人の男はそれぞれ、バスタブに入っていたのがアダム、別の方はローレンスという。アダムはやや柄の悪い男で、対してローレンスは落ち着いた雰囲気の医者だ。二人が自分の身に着けている衣服のポケットを探ってみると封筒が入っており、それには鍵とカセットテープが。
アダムが自殺死体の手に握られているテーププレイヤーを入手して聴いてみると、アダムのテープは「お前はこの地下室で死ぬ。あるいは逃げ出せるか?」という趣旨のものが。ローレンスのテープには「アダムを殺せば出してやる。Xという文字には宝物がある。ただし午後6時までに殺せなければ妻と娘が死に、自分自身も死ぬ」という趣旨の内容だった。さらに良く聴くと「ハートに従え」という声が小声で入っていた。
ハートの文字がトイレの貯水タンクに書かれているのを発見する。それはアダム側にあったのでアダムはタンクの中を調べると黒い袋の中には2つのノコギリが入っていた。二人はそれを使って鎖を切ろうとするが、貧弱なノコギリなので鎖を断ち切ることなど到底できそうもない。

ローレンスはノコギリは「脚を切らせるためのものだ」と気づく。そしてここでローレンスの回想に入る。ローレンスには犯人に思い当たるふしがあったのだ。
それは異常なゲームを被害者に行わせる「ジグソウ」という人物だった。
ある自殺願望のある男や、放火犯、麻薬中毒の女性が過去同じように事件に巻き込まれていた。そのどれにも共通しているのは「命を大事にしない」ということ。そういう人間に命の大切さを学ばせるためにジグソウはこのような極限状態のゲームを行わせているのだった。
ローレンスがなぜジグソウを知っていたのかというと、ジグソウの起こした事件の現場に自分のペンライトが見つかったことがあり、黒人のタップ、その相棒のアジア系のシンという二人の刑事に参考人として取り調べを受けたことがあったのだ。そしてローレンスは麻薬中毒で唯一ジグソウの事件から生還した女性の話を刑事から聞かせられた。彼女は大量に麻薬を注射され動けなくなっている男の胃の中から、自分を殺す道具(勢いよく開いて顔を粉砕する器具)のカギを入手し、なんとか生還したのだった。

場面は地下室のアダムとローレンスの現場に戻る。アダムは部屋のガラスがマジックミラーであることに気づく。破壊するとそこにはカメラらしきものが。現在もこの場を犯人が生で見ているのだ。
ローレンスの回想になる。彼には愛しい妻アリソンと娘ダイアナがいるが、娘が何やら不審な発言をしている。「部屋に男の人がいて話しかけてくる」などと言うのだ。気のせいだとローレンスは言うが、それでもダイアナは「ママと私を置いていかないで」などと言うのだった。そしてローレンスとアリソンは喧嘩を。アリソンはローレンスが自分を愛していないと思っているのだ。のちにわかるが、この母娘の態度はローレンスが浮気をしていることを示唆している。
アダムにむかってローレンスは手帳を投げ、そこに入れてある自分が持つアリソンとダイアナの写真を見せる。ローレンスが指定した位置の写真をアダムが見ると、なんとそこには猿ぐつわをされたアリソンとダイアナの写真が。そして裏には「目を閉じて見えるものもある」というヒントが。この時点でアダムはその写真と文章のことをローレンスには言わない。
再度回想に入ると、ダイアナの部屋には本当に男がおり、アリソンとダイアナは囚われたのだった。二人を捕らえたのはローレンスの回想の中で出てきた、病院の雑務係のゼップだ。

さらに場面が変わって、囚われたアリソンとダイアナがいるローレンスの家を監視している男が。彼はゼップを確認すると「お前は誰だ?ローレンスはお前がここにいることを知っているのか?」などと独り言を言っている。どうやら黒人だ。
ここでタップ刑事とシンが主役の回想シーンになる。ジグソウ事件の唯一の生還者である麻薬中毒の女性の部屋にあったビデオを丹念に調べることで、そのビデオが撮影された場所を割り出したタップとシン。二人がそこに突入すると囚われた男がいた。そこに犯人らしき気配が戻ってきたのを察知し、タップとシンは一度身を隠す。犯人らしき男は黒いフードをかぶっていて顔が見えない。囚われた男に対して「ジェフ」と呼びかける男。その男の名前らしい。そしてタップとシンが飛び出してホールドアップさせようとするも、ジェフが囚われている器具を作動させてしまう。ジェフの頭の左右から迫りくるドリル。シンはその器具を止めようとし、タップは犯人の男を取り押さえる。しかしシンが結局器具を止められずに強引に銃撃により破壊したとき、隙をついて犯人がタップの首を深く掻っ切って逃走してしまう。シンは犯人を追いかけるが、仕掛けられた罠により頭を無残にふっ飛ばされてしまう。そしてタップは息も絶え絶えで追ったが、シンの死体を発見するのみだった。

つまり、ローレンスの家を見張っていたのはタップだったのだ。彼は相棒を殺された怒りで動いておりローレンスの家を見張っていたが、そこに偶然ゼップがアリソンとダイアナを襲撃したのだった。
またアダムとローレンスの現場に戻る。アダムはローレンスにはまだ言っていないヒントから、ローレンスに照明を消させた。暗闇の中、ローレンス側の壁に「X」の文字が光で浮かび上がる。そこを破壊すると中には箱が。小さな錠前がついていたが、これのカギは最初に発見した小さい鍵のようだった。中にはタバコと携帯電話。そして紙があり、そこには「タバコは血を含ませると毒性を持つ。」という文章が。これを使ってアダムを殺せということだ。携帯を使って電話するも、着信専用の設定になっており使えないものだった。
ローレンスはある策を思いつく。アダムと画策して、アダムをタバコで殺したように見せかけたのだ。だが、すぐに見破られたのか、アダムの鎖に電流が走った。どうやら犯人は鎖に電流を流すことも可能であるらしい。

携帯電話に着信が。ローレンスが出ると、ダイアナとアリソンと話すことができた。そしてアリソンが「アダムを信用しないで。彼はあなたを知っている」という言葉を残して電話は切れる。
ローレンスがアダムに問い詰めるとアダムは真相を話し始めた。彼はローレンスを尾行し、写真を撮っている盗撮屋だったのだ。ここの回想で、ローレンスは自分の病院に勤務している若い女性と浮気していたこともわかる。
ローレンスがアダムに誰に頼まれたと聞くと「首に傷のある黒人だ」という。ここでローレンスがアダムに依頼したのはタップ刑事だと気づくことになる。そしてアダムがトイレの貯水タンクから取り出した袋には実はアダムが撮ったローレンスの撮影した写真も入っていたことを、アダムがここで明かす。そこに映った写真の一枚にはゼップの姿があり、ここでゼップが犯人であることも二人は知る。

時間は刻々と過ぎ、ついに午後6時になってしまう。が、囚われたアリソンとダイアナは縛られた縄をほどいていた。
母娘を殺しに来たゼップに逆襲し、アリソンが銃を奪うももみ合いになる。銃声を聞いた監視中のタップ刑事がローレンス邸に乗り込む。アリソンもダイアナも殺されずに済んだ。タップは逃げたゼップを追うのだった。
この一部始終を音声だけ聞いていたローレンスは半狂乱になり、正気を失う。
そしてついに自分の足をノコギリで切断するという行動に及ぶ。いくらアダムが呼びかけようとも話を聞かず、ついに切断。そして自殺死体が持っているリボルバー拳銃を取り、詫びながらアダムを撃った。

一方、ゼップを追うタップだったが、もみ合いになったところでタップが腹に銃撃を受けて死亡。
ついにローレンスとアダムが監禁されている部屋にゼップがやってくるが、「もう時間切れだ」と言い、アダムを殺したにもかかわらずローレンスを撃とうとするゼップ。しかしそこで死んだと思われたアダムが起き上がり、ゼップを落ちていた破片で撲殺する。アダムは肩を撃ち抜かれただけだったのだ。

片足の足首から下を失ったローレンスはアダムに「助けを呼びにいく。必ず戻ってくる」というが、失血死するのを覚悟の上だ。アダムは「一人にするな」と言うも、ローレンスは出ていく。残されたアダムは自分が殺害したゼップの体を調べて鍵がないか確認するが、鍵ではなくテープを発見した。「6時を過ぎたらアリソンとダイアナを殺せ。でなければお前は毒で死ぬ」という内容だった。ゼップも「ゲーム」をプレイしているジグソウの被害者にすぎなかったのだ。愕然とするアダム。その近くでなんと今の今まで部屋の中心に転がっていた自殺体が起き上がる。彼こそが真犯人ジグソウだ。頭を撃ち抜いたような傷はフェイクでしかなく、はがせるものだった。ずっと部屋で二人の様子を見ていたのだ。そして彼、ジグソウは、ローレンスの回想の中に出てきた、脳腫瘍のある患者、ジョンだった。そして「鎖のカギはバスタブの中だ」とアダムに言う。つまり鍵は最初にアダムがバスタブから脱出した時点で排水溝へ流れてしまっている。アダムが鎖を断ち切って逃げるのは不可能だった。そしてアダムに対して「ゲームオーバーだ」と言い放ち、地下室の扉を閉めてしまう。絶叫するアダムの声が聞こえる中、エンドクレジットが流れ始める。

感想・評価

ゼップがローレンスの妻と子を拘束したのは開始から40分程度でわかるので、真犯人は別にいるということはこの時点で予測がつく。「俺の仕事をしなきゃな」という台詞や、ゼップがタップ刑事に追われている最中なのにゴードンに電流が流れたりすることからも、大抵の視聴者が分かってしまうところだろうが、まさか真犯人が死体に扮していたというのはなかなか予想できないところではないだろうか。ただ、全く動かないで半日ちかく部屋の真ん中にじっとしているのはちょっと現実的でないので強引ではある。動かずとも呼吸だけでもしていたら気づかれる可能性は高いだろうしなあ。しかしまあ、他の「ゲーム」のプレイヤーが自殺した現場をまた別のゲームのプレイヤーの舞台として使うのは不自然にも思えたので、勘がいい人なら予想できるのかもしれない。

アダムとローレンス、二人の心理の流れに関しては無理がなく、非常に現実的なものに仕上がっていると感じた。
非日常な状況での協力し合う線、敵意を感じる線、それらに無理がない。アダムは品のない盗撮屋、ローレンスは社会的に成功している医者。ローレンスにとってのアダムも、アダムにとってのローレンスも、はっきり言っていけすかない人間だろう。仮に平和な日常で出逢ったりしたら間違ってもウマの合う二人ではないだろうが、最後の最後には極限状態がゆえの、そんなものを超えた互いへの寄り添いや思いやりを見せる。この辺りに少しでも無理があれば駄作になりかねないところだろう。地味だが丁寧な部分だ。改めて考えれば、アダムだけ助かる方法を提示されてないのが理不尽だな…。

気にかかった点だが、犯人ジグソウが結局何を目的としてあんな極限状態ゲームを行うのかはっきりはしない。2015年現在で7作も出ていて、もはや超有名な大ヒットシリーズとなっているだけに、続編を見ればそのあたりもっとわかるのかもしれないが、少なくとも初代作品であるこの映画の中では犯人は脳腫瘍患者の老人で、命を大事にしない人間に罰を与えるという悪趣味な野郎であることくらいしか明らかになっていない。バックボーンが気になるところではあるが、それが不条理さをさらに際立てているので作品としては正解、か。この手のものは犯人の得体の知れなさが恐怖を煽るってのも大きいしねえ。

まとめると、ラスト除いてほとんどが予想の範疇の作品ではあったものの、極限シチュエーションゆえに目が離せないのは確かだし、続編を見たいと思わせるくらいには面白い作品だった。

項目別評価

ミステリーとして、昨日見たロスト・ボディほどは衝撃的ではなかったものの、やはりラストには驚かされたし、生死のかかった極限状態の人間を見るという悪趣味な観点からも面白い。世間ではなかなか評価が高い作品だと思うが、ひねくれ者の自分が見ても十分に納得できる出来ではあった。2004年時点で見ればもっと高い点をつけたと思う。

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