シンドラーのリスト 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2015年08月12日

評論

月額1000円程度で映画見放題のサービス、huluにこのたび入会。そして視聴第一弾が、トップページでオススメされていたこのシンドラーのリストだ。
なんと3時間15分ほどの長編大作。実在したオスカー・シンドラーというドイツ人実業家が、ナチスドイツの処刑の手からユダヤ人1100人を救ったという実話に基づいた、小説原作のスティーブン・スピルバーグ監督作品。そして主演はリーアム・ニーソン。自分の場合「96時間」シリーズがきっかけで知った人なのだが、1993年のこの有名作ですでに主演とかやってたんだなあ…なんてキャストを見てしみじみ思った。あの映画で知った人がこれにも!って感じの連鎖で映画通になっていくんだろうね、きっと。自分はまだまだ通なんて程遠いところにいるけども。

それはともかくストーリー&あらすじ、ネタバレを書く。何せ3時間なので長いが、視聴しながらメモしたものをそのままペーストしてみる。

まず冒頭、様々なパーティ会場でドイツ人とコネを作っていくシンドラーが映される。 ユダヤ人評議会の運営の男イザック・シュターンに飯ごうを作る工場の話を持ちかける。その男に運営はまかせ、自分はPRをすると。
ある教会の闇市場で服を注文などするシンドラーも。危ない橋を渡って物資を調達することも必要ということだ。

1941年、ユダヤ人が押し込められた狭い地区ゲットー。そんな中でシンドラーは飯ごうの取引を行う。相手は割りに合わないというが、「今は金じゃなく物が重要な時代だ」と、シュターンを説得したときのように話し、交渉を成立させる。 ユダヤ人地区に工場を設立。雇うのはユダヤ人。経歴を偽ってドイツ人の審査をかいぐぐったりした。シュターンが斡旋し、工場で働けるようにするシーンが続く。また、シンドラーはタイプライターを打つ仕事を女性にやられつつ品定めをするシーンも。 シンドラーは女好きなのだ。
ドイツ親衛隊SSが視察に来た時には、最高級の食べ物、嗜好品で機嫌を取る。 嫁さんのエミリエ・シンドラーが来た時に浮気現場を見られるなどする。 嫁さんとパーティ会場に出て「事業の成功のために必要なのは戦争だった」と言う。身体障害者の老人がシンドラーの下を訪れ「仕事をくれてありがとう」と礼を言いに来て、シンドラーはその場はいい顔をするが、その後でシュターンに二度とするなと苦言を。
その後、工場の人間が雪かき作業をされるように強制されてしまう。その際、シンドラーに礼を言いに来た老人が役立たずとして射殺される。シンドラーはその老人についてたずねられると「熟練工だった」と答える。それは誇張ではあるが、シンドラーの言葉には彼の理不尽な死に対する怒りもこめられていた。

次はシュターンが強制的に移住させられてしまうことに。汽車が出発した後にすんでのところでシンドラーが救い出す。
この際、汽車に乗った者の荷物が整理され、金目のものは再利用するような処理?がなされるシーンがある。その中には歯まで。
42年の冬、ポーランドのクラクフにあるプワシュフ強制収容所の所長となるアーモン・ゲート将校がヘレン・ヒルシュをメイドにするシーン、いわれもなく女性労働者を射殺するシーン、そしてユダヤ人がクラクフで栄えるのは今日までだと宣言する。 1943年、ユダヤ人地区のゲットーが解散される。ユダヤ人の家にナチスが押し入り、全ての財産を没収するシーン。パンに宝石などを詰めて隠すユダヤ人、劇薬を飲んで自害する病人のユダヤ人も。抵抗すれば容赦なく射殺された。ナチス側の子供が親しいユダヤ人の子供とその祖母を助けるシーンも。 全てをただ丘の上から見下ろすシンドラー。全てがモノクロの映画だが、ただそれだけが色の着いた、赤い服を着た少女が一人彷徨うのを見届けた後、その場を立ち去った。一部のユダヤ人はそれぞれの家の隠れ場所に身を隠したが、夜になったから再度見回りに来た兵士によって皆殺しに。この際、赤い服の少女も家のベッドの下に隠れたのだが、彼女がどうなったのか、ここでは描かれない。

ゲットー解散後に誰もいなくなった工場で膨大な数の飯ごうを見下ろすシンドラー。 ゲート将校は刑務所の自分の部屋から動きの悪いユダヤ人を遠距離からの射撃で射殺するシーン。 ゲートとシンドラーが会食するシーン。最初はいい顔をしていたシンドラーだが、ゲートと一人になると「自分の工場の人員を帰せ!」と激昂する。交渉により、望み通り労働者を取り戻すことができた。
刑務所内の工場でこれからは運営。が、シンドラーの側近のシュターンはゲートの目の届くところに置かれてシンドラーとは距離を置かれた。しかしゲート主催ののパーティの際にシュターンとこっそり会い、会合を行うシンドラー。彼をなんとかゲートから引き離したいと考えるシンドラー。

蝶つがい作りの名人がなぜこれだけしか作れないのかとゲートに目を付けられ射殺されそうになるも銃が作動せず殺されずにすむ。。シュターンからその男や、銃殺されそうになったとき機転を利かせた子供の話を聞き、、シンドラーはカードのようなものをそのたびに発行する。シンドラーのお墨付きを表すもの?
パールマンという女性がシンドラーは「善い人だ」と聞いてシンドラーを訪れる。自分の両親を収容所から救って工場に入れてほしいと。しかしシンドラーは誤解だとして女性を追い出す。
シュターンへと「人はいずれ死ぬ!」と言いながら愚痴をこぼす。誰でも引き受けてくれるなどという噂が広がっていることを不快だと。シュターンが次から次へと引き受けたことによって、あらぬ誤解が広まったのだとシュターンに迫るシンドラー。このままでは自分も危険になると。 しかし、ひとしきり激情を飛ばした後、パールマン夫婦を工場へと引き入れる手はずをしたシンドラー。

ゲートのメイドとなったヘレンと会い、話すシンドラー。ヘレンはいつ射殺されるかと恐怖しているが、シンドラーは彼女をなだめる。 その後ゲートと会話して「殺さないことこそが力だ」という話をするシンドラー。その話が効いたのか、自分の靴を落とした少年を「許す」などと言ったり、タバコを盗もうとした女性を「今日は見逃す」などとしたり、バスタブの荒い肩が下手な少年を許すゲートがあった。が、直後また思いなおしたのかバスタブを洗った少年を撃ち殺した。結局、自分には無理だと判断したのだろう。

ヘレンの前でお前はいいメイドだというゲート。人間以下のユダヤ人としながらも、ヘレンを口説くような言葉を並べる。キスをしようとするが、とたんに「汚れたユダヤ女」などと言って殴る。 同じ頃、上ではシンドラーの誕生パーティが行われている。作業員代表の2人が現れたとたんに静まる一同だが、シンドラーは変わらず笑顔を浮かべながら接し、さらには2人の娘のうち年上の方に熱いキスすると周囲のナチスは顔を見合わせる。

ユダヤ人女性たちが集まってガスで殺される際の噂をしている。しかし自分たち労働者が殺されるはずないと言う。 しかし次の日、新たな囚人が送られてきて、代わりに元々いた囚人が丸裸にされて選別される。残る者は服を着ろと言われるが、残りは送られる。また、子供も全員送られてしまい、後から気付いた大人たちが狂乱。 一部の賢い子供達は上手く隠れてしのいだ。
シンドラーは選別された汽車の発着所に。水が欲しいとうなる囚人たち。シンドラーは「水をぶっかけてやろう」とあたかも余興のように提案する。笑いながら「そうしよう」と言うゲート。が、それが余興ではなく純粋な慈悲によるものだと気付いたゲートは途中から真顔になった。

その後シンドラーは人種編成法に違反したとして一時収監される。誕生日にユダヤ人の女性にキスしたことのせいだ。その後、ナチスの高官と会いユダヤ人女に気をつけろなどと注意されるシンドラー。
1944年、フヨヴァ・グルカの丘でプワシュフ収容所とゲットーで殺された犠牲者1万余に焼却命令が出たとされる場にシンドラーはいた。それは埋めた遺体を掘り返してもという命令で、人間を焼いた灰が車にまで積もるほど。プワシュフ収容所は閉鎖され、残りはアウシュヴィッツ送りに。掘り返した遺体の中には、シンドラーがゲットーで見た赤い服の少女の遺体があり、顔もわからないほどに傷んでおり、無造作に運ばれていった。それを見たシンドラーは呆然とする。
刑務所が閉鎖するにあたって、内部にあるシンドラーの工場も閉鎖。シュターンと話すシンドラーは「望み通り使いきれないほどの金をためた、故郷に帰る」と言う。そして「いつか戦争が終わったらお前と飲みたい」とシュターンに言うシンドラー。以前はつれなかったシュターンが「今飲みましょう」と返し、杯を交わす。

シンドラーはゲートに労働者を殺さずに自分にくれと頼む。 ここでシンドラーは一人ひとり名前を言い、それに従いシュターンが「リスト」を作る。シュターンはどうやってゲートを説得したのか?と聞く。シンドラーは金で1000人以上のユダヤ人の命を買ったのだ。これは「善のリスト」だと言うシュターン。
リストの最後にヘレンの名前があることを認めないゲート。ゲートはウィーンへヘレンを連れて帰ってメイドにするなどと言う。しかしそれは不可能だというシンドラー。無理ならば自ら頭を撃ってやると言うゲート。結局、高額につられてヘレンも手放したのだった。

チェコのブリンナッツの町にシンドラーのリストに書かれた男達が送られてきた。すぐに女達も来ると言うシンドラーだったが、女達はアウシュビッツに送られてしまっていた。シンドラーは「ひどい間違いだ」としてアウシュビッツへ。
アウシュビッツでは間違って送られたリストに書かれた女達が丸裸にされ「殺菌室」と書かれた部屋へ入れられた。ガス室だと思い込んでいた女性たちは安堵する。しかしその後、地下のガス室らしき部屋に送られる囚人たちを見た。
しかし女達は間違いでなく、確信的にアウシュビッツへ送られたようだった。他の企業も同じように人材を確保したつもりが、空の汽車が着いた話もあるという。大企業でさえ、ナチスの決定には逆らえない、諦めろとシンドラーに言うナチス高官。しかしシンドラーはそんな彼にダイヤを出して買収しようとする。そしてそれが通る。
リストに載った女達は再び貨車に乗せられて今度こそシンドラーの工場の元へと送られることになった。子供は差別され危うくアウシュビッツに残されそうになるも、シンドラーがその場におり、それを阻止した。「45mm砲の奥に手が届いて掃除ができるのは子供だけだ」と言いながら。
工場はナチスたちの手で管理されることになるが、シンドラーは「理不尽な殺人に対しては賠償を求める」と釘を刺す。勝手な処刑は許さない、生産を妨げることも禁ずると。。それを聞くナチスたちの中にはゲートもいた。
シュターンが工場で作られる大砲などが不適格品だという苦情が来ているという報告をする。シュターンは警告するも、楽観的に「他の社の製品を買って送ろう」などという。また、ユダヤ人の休息日である金曜日には休息をさせ、ほとんど工場を稼働させるつもりがないようなシンドラー。キャプションで「操業開始から7ヶ月で工場は生産量ゼロ」だと表示される。労働者への食費、役人への賄賂で数百万マルクが消えたという。

ついにシンドラーの資金にも限界が来る。が、同時にナチスドイツの敗北の知らせが届き、戦争が終わる。
工場内で労働者に向かって演説を行うシンドラー。自分はナチス党員の犯罪者だと。これからは追われる身だと。だがユダヤ労働者たちは自由の身であると。また、そこにいた兵士に「君たちは上から労働者を皆殺しにしろと命令されているだろう、やるなら今だ」と言う。しかし動かない兵士たち。殺人者としてでなく兵士として家族の元へ戻れとシンドラーは言い、兵士たちは去った。
ユダヤ人たちが見送る中でシンドラーは去る。シュターンはシンドラーに労働者の一人の銀歯を溶かして作った指輪を送り、「1つの生命を救う者が世界を救える」という聖書の言葉を送る。。シンドラーはシュターンと握手を交わし、「努力すればもっと救い出せた、馬鹿な無駄遣いをした」と泣いて言うがシュターンは首を振りながら「あなたはここの1100人を救った」と言う。しかしそれでも「車も売れば10人救えた、バッジを売れば1人でも救えたかも、人間一人を」と悔やむ。そして救った多くのユダヤ人に見送られてシンドラーは去る。
シンドラーを送ったまま外で眠っていたユダヤ人労働者の下にソ連陸軍が来て、解放すると宣言する。行き場のないユダヤ人たちはにそのソ連軍兵は「あっちに町がある」と指差す。そこへ歌いながら向かうシンドラーのリストの人々。

その後は戦後の顛末が。アーモン・ゲートは捕らえられ、かつて刑務所所長を務めた地のクラクフで絞首刑にされた。シンドラーは結婚にも事業にも失敗し、1958年にエルサレムに招かれ「正義の人」に選ばれ、ホロコースト記念館の前の正義の通りに植樹を行った。その木は今日も生長し続けているという。 最後はモノクロ映像に色がつき、かつてシンドラーのリストに載った人々の今が映されれ、シンドラーの墓に石を置いて悼むシーン。ここでは、この映画の役者と、実在するその人物そのものが共に出演している。その中にはヘレンや、車椅子に座る高齢のエミリエ・シンドラーも。
そしてキャプション。「今日ポーランドに住んでいるユダヤ人は4000人弱、シンドラーのリストの子孫は6000人を超える」と。墓参りの最後、シンドラーの墓に主演のリーアム・ニーソンがバラを置くシーンが。
そして「この映画を虐殺された600万人のユダヤ人に捧げる」のキャプション後、エンドクレジットへ。

ここからは感想とレビュー。
まず、この作品の何がポイントかというと、「シンドラーはそもそもただの利益重視の実業家であって特別善人というわけでもない」ということだと思うのだ。彼は開始からしばらくは、具体的にはパールマンという女性が自分を「善い人」などと誤解して懇願に来るときまで。だがその際にパールマンの両親を工場へと受け入れるように手配し、彼はいつしかその通り、まさに誤解でもなんでもなく確かに「善い人」となっていた。戦争が終わった際に泣きながら「もっと救えたかもしれない」などと悔いるほどの善人になっていたのだ。

彼が考え方を改めたのは、作中で演出されている限りでは少なくとも2つの要因があるだろう。

まずは、ゲットー強制解散時に見た赤い服の少女だ。モノクロの今作品においてただ一つの色を持っている彼女はそれがどれだけシンドラーの価値観に影響を与えたかを示している。最初にあてもなく彷徨う彼女の姿をシンドラーは丘の上から追い続けるが、次に見たのは焼却命令が出た際だ。年端もいかない少女の、酷く傷んだ遺体を見たシンドラーはまた呆然とすることになる。モノクロであることを効果的に使った演出によりその存在の大きさを言葉無しで語っている。

そしてもう一つは、シンドラーの側近となる、ユダヤ人のシュターンの存在だ。彼はシンドラーにスカウトされた場面の最初から一貫して、ほとんど感情を露わにせず、シンドラーに酒をふるまわれてもそっけない。そんな寡黙な彼だが、まかされた工場運営の業務にだけはひたすら真面目。可能な限りユダヤ人を救おうと奔走し、そして同時に常にシンドラーの得になるように尽力する。
自分が印象的だったのが、プワシュフ収容所でシュターンと密会を交わしたときのシンドラーの表情だ。シンドラーはシュターンと話して彼の後姿を見送る際、わずかに笑みを浮かべている。このシーンは、過剰なまでにシンドラーを心配し、「メモをとって!」とシュターンが強く言葉を発した後のシーンだ。それほどまでに自分を心配してくれるユダヤ人にシンドラーが強い信頼を抱いていることを表しているシーンなのではないだろうか。パールマンが懇願に来た後に「俺は善意でなど動かない!誤解だ!お前が誰これ構わず受け入れるからだ!」というようにシュターンに大声で当たるも、シュターンが「工場に受け入れればそれだけ命が助かる」と言った後結局、「お前がそう言うんじゃしょうがない…」とばかりにパールマンの懇願の通りにするのだ。シュターンをよほど信頼していなければ金儲け主義のシンドラーが動くはずがない。
言葉少な、表情も少なでジョークも言わないような、しかし義に厚いシュターンの人柄に、シンドラーが感化されていたのだろう。ならば、彼が属するユダヤ人という人種そのものに情が移っていくのは自然なことだ。シュターンは作中だと一貫して無表情でぶっちゃけ何を考えているのかわからないようにも見えるが、感情をあらわにすることもなくただ淡々と善意をもってユダヤ人救出のために動いている人間。。シュターンが1969年に死去したとき、シンドラーは号泣したのだという。

人並みの善意はあるものの取り立てて善人というわけでもなかったシンドラー。しかし彼が収容所というナチス虐殺の現場の最前線に立ち、ユダヤ人と交流を重ね、少しずつ変わっていく。それが大きな見所の映画だ。金を追求して動いていたはずが流れで、いつの間にか、ユダヤ人を慈しむ人物となったいた。そんな過剰に劇がかっていないリアリティが魅力。
だからこそ、彼が最後に泣きながら「車を売れば、バッジを売ればもっと救えた」というシーンはちょっと過剰演出だった。いきなり泣き出したものだからちょっとこっちがうろたえてしまった。
いや、巨大な私財の全てをなげうってまでユダヤ人を救ったという彼の実際の経歴からすると、それほどの感情があったということはもしかしたら確かなのかもしれないが、この映画の話に限れば、泣いてまで悔やむほどのシーンは入れなくてもよかったんじゃないのかなあ…と思った。粛々と、悠然とユダヤ人たちに見送られてほしかったというか。…まあ正直もこのシーンで泣いたんだけど、別の、過剰でない抑えた演出が見たかった。

「別にユダヤ人のためにやったんじゃないんだからね!」なんてツンデレであってほしかったとかいうわけじゃないが、ユダヤ人に感化されつつも、自分自身の意地とかそういうものに従ってやっているような印象を映画を通して受けていたので、それほどまでに、もっと救えたはずなどと泣いて悔いるほどに純粋に人命を尊んでの行動だったというのは泣くシーンまではちょっと伝わってこなかったなあ、という感じがした。調べてみたら、このシーンは原作にないとのことで、それならやはり蛇足だったと言わざるをえない。
創作で受け手を感動させるには「臭く」ならないように調整するのが重要だと自分は思う。ひねくれた大人だからそう思うのかもしれないが。とにかくその点、この映画では決して過剰ではないながらもシンドラーのユダヤ人への労わりや慈悲が伝わってくるもので素晴らしいと思っていた。これから処刑されるのが確定的なアウシュビッツ行きの囚人たちを思って水ぶっかけの余興を提案するところなんかが顕著だ。しかしこのラストシーンで「臭さ」を出してしまって残念、という感じである。ただ上で書いたように、私財を全て全て投げうっての行動という確かな客観的事実だけを見れば、事実ではなくとも、あながちシンドラーの内面としては過剰でもないかもしれないとも思えないこともない。それに、「人間一人だぞ!一人も助けられた!」とシンドラーが泣いて語るあのシーンには、人一人の命など虫ケラのように消えていってしまうということを嘆いた、スピルバーグの戦争反対のメッセージ性もきっとこめられてるんだろう。

ラストシーンへの苦言はあるが、そこを差し引いても十分感動できる巨編だし、人にオススメできる映画。映画について調べるうちに強制収容所やシンドラーやゲートなどといった人物への見識も広がるし、時代背景の勉強にもなる。強制収容所での囚人への理不尽な扱いなどもリアリティを感じさせるもの。時間があるなら是非見よう。

項目別評価

3時間超えな上に派手さがない映画なのである種の覚悟を決めて視聴する必要がある。が、最初はあくまでただの利益重点の実業家でしかなかったシンドラーが変わっていくのに説得力を持たせるにはこの長さが必要だったろう。ラストを除けば唯一、色がついていた名も知らぬ少女などの演出が、言葉はなくともシンドラーにとっての価値観の変動の転換となっていることを表しているなど、そういう演出にぐっときた。まずシンドラーという人間についてさわり程度でも知っていないとかなり難解になるシナリオなので、少し下調べした上で視聴をオススメする。

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