スペクトル(映画) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>スペクトル(映画)

執筆日:2017年05月30日

あらすじ・ネタバレ

冒頭、どこかの紛争地帯で仲間とはぐれた兵士が通信で指示を受けている。しかし兵士は目に見えない何らかの化け物に襲い掛かられ、死んでしまった。

場面は変わってアメリカ。科学者であるクライン博士は軍で使われているゴーグルを開発した人物で、ある時召集を受ける。
東欧のモルドバでオーランド大将という人物から話を聞く。モルドバでは反乱軍と政府軍の内戦が続いていて、アメリカが介入している。そして冒頭で兵士を殺した化け物が出現することについてクライン博士が調べることになった。それはまるで幽霊のようなもので、クラインが作ったゴーグルをつけていないと見えない超常的な存在だった。これによって死んだ人物の内臓は凍り付いていて、皮膚は焼けただれるという特徴があった。現地人には「アラタレ」と呼ばれていた。現地の言葉では「悪夢」を意味する。

博士はもっと近くで撮影しないと判らないと考え、兵士たちと共に、特殊なカメラを持って前線へ向かうことになった。CIAの女性職員であるフランも同行することになる。
ある建物内部で部隊が襲われ、そこにクラインたちの部隊も向かう。一人だけ生き残りがいたが、その人物はバスタブの中にじっと隠れていて助かっていた。しかしその生き残りは「みんな殺された。俺達も殺される」と言う。そうしてついに幽霊のようなあの化け物、「アラタレ」が現れ、次々に兵士たちが殺されていく。どんな重装備20人近くもの兵士が一気に殺害された。

命からがら逃げ出したクラインたち。ある工場へとたどり着いた。なぜかそこにはアラタレが襲ってこなかった。クラインたちはそれが工場の周りに撒かれていた鉄くずのおかげだと知った。それを撒いた人物が工場内にいるはずと探すと、幼い姉弟が見つかった。二人はサリとボドガンという名であり、その父親が鉄クズを撒いたらしかった。しかしそれを行っている最中ですでに父親も死んでしまっていた。

鉄が弱点であるということを知ったクライン博士たちは即席で鉄クズ片を撒き散らす爆弾を作り、救出ヘリが来る広場まで移動を開始する。なんとか広場までたどり着くも、追ってくるアラタレの数はどんどん増えていき、兵士たちは次々に殺されていった。ボドガンも死んでしまった。絶体絶命と思われた時にヘリが到着する。ヘリのメインローターが巻き起こす風でアラタレが近寄れないので、なんとか生存したクラインたちは逃げ出すことができた。

オーランド大将たちがいる基地へ戻ろうとしたが、アラタレの数はどんどん増殖していっており、基地も壊滅していた。そのためクラインたちは別の場所へと避難。そこは難民シェルターだった。
怪我をしたサリの手当をしつつクラインはサリから「父親は何か知らなかったか?」と聞くと、サリたちの父親はある発電所向けにセラミックのコンテナを作る仕事についていたという。

オーランド大将もなんとか生存して難民シェルターにやってきたが、基地の人間も240人中生存は19人のみ。もう打つ手はないと皆絶望しかけていた。しかしクラインはアラタレは化け物などではなく人工的なもので、発電所にこそアラタレが生み出されていて、セラミックを通過することはできない、また高温の弾丸を撃ちこむことで倒すこともできると見抜いた。生き残ったクラインと兵士たちの反撃が始まった。

生き残った兵士たちはクラインが作り出した対アラタレ弾を装備して発電所を目指した。アラタレ用の弾は確かにアラタレを倒すことができ、発電所までたどり着く。クラインとフランが発電所内部へ入りアラタレ出現の根元を断とうとし、兵士たちはその周囲のアラタレの相手をする。発電所内部には大量のアラタレがセラミック製の箱の中に閉じ込められていた。ここにいたアラタレが逃げ出し、今のような大惨事に繋がったのだとクラインたちは推測した。
そして次々にアラタレが箱から逃げ出してクラインとフランにも危機が迫るが、クラインが電力供給を止めるために装置に繋がれたケーブルを外すと同時にすべてのアラタレが消滅したのだった。
クラインとフランがさらに発電所を探索すると、そこには脳髄だけになった人間たちの姿が。それらの思念がアラタレに宿ってアラタレは動いていたのだった。アラタレが消滅し、脳髄だけになっていても生きているような死んでいるような状態でそれらは存在していたが、クラインは「痛みを感じている」と脳波を見て言い、それらの電源も切って解放してやったのだった。

感想・評価

目に見えない化け物の正体は一体何なのか?科学者を主人公に据えてその正体を暴くまでが本筋になっているSFアクション。モンスターパニック映画っていうと、大抵はその化け物の正体というのは比較的序盤で明かされるものだと思うのだが、この作品はそれを後半まで引っ張っておりミステリー的な要素もあるのが特徴的。例えばプレデターなんかも正体は何かって作中登場人物目線ではよくわからないものの、視聴者としてはまあ宇宙人だよね、ってわかるが、この作品に登場するアルタレって化け物は、視聴者目線でも本当にその正体が分からない。「人型なんだから人間が何らかの技術でそういう姿になってるんだろう」「いやでも透き通るし幽霊?」「別次元から出てきた化け物?」とか何となく考察はするのだが決定的なものがない。実は人間の思念が宿ったものだった、というところまで分かるのは本当に最後の最後となっている。

アラタレの幽霊のごとき不可視性に通過性に、自由自在に飛び回る機動力に、当たると100%即死の殺傷力に、しかも無数に存在という超性能は、おそらくどんなモンスターパニックもののクリーチャーよりも恐ろしい。こんなんと出会うくらいならならエイリアンとターミネーターとプレデターの3つ巴に巻き込まれた方がまだ生存確率は高そう。攻撃を受ければ、本当にただの一人も一瞬たりとも生きてないというのがあまりに容赦ない。あと、こういう映画では子供が生存するのは定番だからサリの弟ボドガンが死んだ時は考えが甘かったなと痛感する。こいつの前ではどんな重装甲も、武器も、子供補正すらも通用しないのか…と絶望しかけるが、もちろん映画だから(身も蓋もない)弱点を主人公が見つける。弱点発覚後には敵の本陣に乗り込み殲滅、という王道の流れになるが、SFモンスターパニック映画として面白い。なかなかオススメです。

登場人物解説

クライン博士

演:ジェームズ・バッジ・デー
主人公。軍で使われた特殊なゴーグルを作った有能な科学者。工場で即席で対アラタレ平気を作ったり、難民シェルターでさらに有効なものを作ったりとちょっと都合よすぎるくらいに有能。

フラン・マディソン

演:エミリー・モーティマー
CIA職員。アラタレはクローキング技術というものを利用した存在だと思っていた。活躍としてはサリの面倒見、クラインと共に発電所突入。

オーランド大将

演:ブルース・グリーンウッド
東欧モルドバで内戦を沈めようとしている米軍の現地トップの人間。後方にいたが、アルタレが増殖して基地も襲ってきたので命からがら難民シェルターでクラインたちと合流。

サリ

演:ユーソラ・パーカー
工場で生き残っていた少女。父親がセラミック工場で働いており、アラタレが通過できない容器を作っていた。そのためにアラタレの弱点を知っていたらしい。

ボドガン

演:アーロン・セバン
サリの弟。父親が死んだことはサリが伏せていたので知らない。しかし子供補正すらアラタレには通用せず、ランデブーポイントでアラタレに殺されてしまう。

アラタレ

青白い幽霊のような姿で、その姿は特殊なゴーグルをつけてかろうじて見える程度。触れると100%即死する怖ろしい殺傷力を持ち、空中を自由に飛び回り、セラミックや鉄以外のものを貫通し、しかも無数にいるという反則級の強さでやりたいほうだい。「ボーズ凝縮」という、原子が超低温になると発生する現象を使ってうんたらかんたらで作り出されたものらしい。さらには脳髄だけになった人間の思念のようなものにより動いていたということも結末で明らかに。

項目別評価

モンスターが出現するアクション映画としてはその正体が終盤まで伏せられているのが特徴的。そのため「結局この化け物は何なんだ?」と視聴者側に思わせ、最後まで観させてしまう吸引力がある。展開自体は王道だが、深く考えないで楽しめるエンタメ作品。

凡人の感想・ネタバレ映画>スペクトル(映画)