砂の城 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2018年1月7日

あらすじ・ネタバレ

2003年のイラク戦争の最中のこと。
主人公、オークルは学費を稼ぐために兵士となったが、オークルはインテリ寄りな人間であり、戦場で戦うということなどは自分に向いていないと感じていた。そのため、わざと車のドアに手を挟んで骨折し、アメリカに帰国しようとした。しかし、「これより重傷な人間も前線に行っている」と言われ、それは叶わなかった。

オークルの想像通り任務は過酷だった。同じ隊にはハーパー、チャツキー、エンゾ、バートンという面子がおり、ハーパーは新入りのオークルの面倒をよく見てくれた。

ようやく任務が終わったところで、オークルたちは別の任務に行かなければならなくなった。米軍の戦闘ヘリのアパッチがテロリストの武器取引現場を殲滅するためミサイルでバクーバという町の水道を破壊してしまったため、それを修理するという任務。

その現場ではサイバーソン大尉という人物の命令を聞いてオークルたちは作業をしていた。水道修理作業のほか、住民に水を配給する作業もしていた。水道修理作業は過酷であり、オークルたち10人にも満たない人数ではいつまでも終わらない。
そのため現地、バクーバの町の住民たちを雇い、作業を手伝ってもらうのを提案する。しかし誰も集まらなかった。サイバーソン大尉とハーパー軍曹が町の部族長の所に行って住民に協力してくれるように頼み込んだが、「アメリカに協力すると危険が及ぶ」と言われ、協力は得られなかった。しかしこの頃、オークルはカディールという近くの学校の校長と出会った。

そしてバクーバの町にも敵対するテロリストはおり、水の配給中に銃撃を受けた。この襲撃でチャツキーが殉職してしまう。
現地の協力も得られないままに危険な任務を行うのはやっていられないと愚痴を言うオークルたちだったが、サイバーソン大尉は「文句は今日だけ言っていい。しかし明日になれば忘れろ」と言った。

誰も手伝ってくれないため水を欲しいというカディールに対して不貞腐れるオークルだったが、カディールは「あなたたちは頼む相手を間違えている」と言った。オークルはこのカディールを通して人員を集める提案をした。

カディール校長のおかげで、水道修理の現場作業員が集まり、作業が捗るようになった。作業員の中にはカディールの弟もいた。彼は英語ができ、このような現場で働く工学の知識もあった。彼は「アメリカでは大学に行くのにお金がいるのか?」と言い、オークルはうらやんだ。

ある日、いつも作業員が来る時間になっても現場に誰も来なかった。オークルたち隊員一同が町に様子を見に行くと、そこには惨殺されたカディール校長の遺体が吊るされていた。米軍に協力したためテロリストに狙われたのだった。

兄を惨殺されたカディールの弟の情報でテロリストのアジトの場所がわかったのでオークルたちはここを攻め込み殲滅することにした。しかしその任務中に今度はバートンが瀕死の重傷を負い、救護ヘリで運ばれリタイアした。

アジトの殲滅自体は達成したため再び現地住民たちが協力してくれるようになったが、今度は水道工事現場に爆弾が仕掛けられており、爆発事故が起きた。

結局、オークルたちの任務は中断となった。オークルは精神的に限界と判断されたのか、上官に本国に帰還するように言われる。しかしオークルはまだ任務を続けたいと反論する。しかし上官には黙れと言われ、覆らなかった。

オークルは親しかったハーパーに対して「実は手の怪我は帰りたいためにわざとやった」と事実を話した。ハーパーは「叶ったじゃないか」と言った。

こうしてオークルは水道修理の任務は半ばにして、本国アメリカへ帰ることになった。

感想・評価

当初は兵士となったことを後悔し自分で怪我を創ったほどの主人公が、最後は上官命令で帰還を命じられてもそれに反抗して「任務を続けたい」と言うほどにまで成長。と簡単に言うと爽やかで前向きな成長物語なようにも聞こえるのだが。

まずメインとなる作業である水の配給、それに水道の工事というのが何せ地味だ。それに水道工事をすることになったのは米軍アパッチのミサイルのせいだから住民そして部族長には歓迎されず、さらには米軍に敵対するテロリストにまで狙われてしまうという二重苦。それに反撃するも、殲滅はできず工事現場の爆破テロという報復に対する報復まで受ける。報復が報復が呼んでしまうので任務は諦め、その後は主人公が上官命令で帰還。

どこをとっても気持ちのいい部分がなく、作中でオークルたちが提言するように「もう放っておいて帰ったらどうよ?」と思ってしまうほどだ。この作品もまた、イラク戦争での実体験に基づいているノンフィクションものらしいが、恐らくほとんど脚色がないのではないかと思える。何せ美談となるような部分がほとんどないのだ。あえて言うなら、現地住民であるカディールの弟とハーパー軍曹が弁当を取り換えて食べて交流を楽しんだ、くらいのもの。戦争で良いことなんて全くない上に不毛だ、というのを伝えてくるような作品。

実にリアルな等身大のイラク戦争映画だとは思うが、いかんせん爽快感が無く地味であり、視聴後はモヤモヤが残る。エンタメ性の強い戦争映画を観たいというのなら避けるべき。しかし格好のいい銃撃戦などをメインに据えず、紛れもない戦争の一面を描いた作品としての価値があるのは間違いない。

登場人物解説

オークル

主人公。兵士になったのは金を稼ぐためで家に帰りたがってる。父親はコークを買ってくると言って二度と戻らなかったのでペプシ派。当初はわざと骨を折るほど任務を嫌がっていたのに、水道工事の任務につくうちに任務を遂行したいと願うまでに成長。しかし上官らに命令され本国帰還。

ハーパー軍曹

オークルと同じ隊。落ち着いた物腰で冷静。オークルの面倒見約で最もオークルとよく話した。実質、準主役。最後には3週間の休暇の後リヤドで合流白という命令を受けた。オークルとは「本国で会おう」と握手を交わし別れた。本国に婚約者がいる。

チャツキー

荒っぽい命知らずな軍曹。ヘリの爆撃を観て「俺はこれを観るためにイラクに来たんだ〜!」とはしゃぐちょっと危なげな人物。水道工事前の戦闘で死んだ。

エンゾ

同じく同じ隊。バートンの親友。アジト殲滅作戦でバートンが瀕死になった時には非常にうろたえる。

バートン軍曹

同じく同じ隊。アジトへ乗り込んだ際に瀕死の重傷を負う。助かりそうにない様子に見えたがヘリで運ばれた後の生死は不明。

サイバーソン大尉

オークルたちが就くことになった水道修理の現場の責任者。アイカという犬を緑色にしろという命令をオークルに下した。「緑色の犬派いい犬だ。そんな犬を撃つ奴は許さない」とよくわからないことを言った。

マフムード

水道修理の現場での通訳役。ポーカーが強く、大尉は奴とポーカーはするなと忠告した。部族長との会話の際にも通訳した。

部族長

バクーバの部族長。オークルの隊は彼に助力を求めたが米軍に協力すると危険が及ぶと言われ拒否される。町は昼はアメリカのものだが夜はそうではない。夜は守れまいと言った。そんな感じなのでサイバーソン大尉から暴言を吐かれる。しかしのちに協力したカディールが殺されたことからすると、この人物の言うことも決して間違ってはおらず致し方ないところだ。

カディール校長

現地の協力者。彼の力により現地人を雇って水道工事をすることができた。が、米軍に協力したため殺され吊るされる。

カディールの弟

カディールと共に水場修復の協力者一人。校長の弟。タダで大学へ行き英語や工学を学んだとオークルに話してオークルを羨ましがらせた。兄と似すぎていて見分けがつかない。兄が殺された後は連中のアジトをオークルらに教えた。

項目別評価

歓迎されていない町での水道工事を続ける中での出来事を通して主人公に変化が訪れるが、任務は半ばで中断の上、上官に帰還を命じられる、という話で、どこをとっても何か煮え切らない、いかんせん地味な内容。しかし紛争地域での一つの側面を表現している作品であり、派手派手な船倉映画を観た後ならば箸休めにいいかもしれない。

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