探偵はBARにいる2 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>探偵はBARにいる2

執筆日:2015年7月1日

評論

大泉洋主演、松田龍平助演の、小説「ススキノ探偵シリーズ」の映画化という位置づけの作品。
第一弾が2011年公開で、そのヒットにより即行で第二弾が製作されたらしい。自分は6月末の日曜洋画劇場でやるまで全く名前すら知らなかった。というか、日曜洋画劇場はたまにやったと思ったら邦画流すのやめろよ!と思う。

ススキノというあまりフィクションの舞台にはならない場所であること、そして夜の街ススキノらしく下品な作風、基本的にダメ人間ながら正義感と人情に溢れる大泉洋演じる「探偵」、その相棒の松田龍平演じる高田のコンビを見て楽しむ映画ということになりそうだ。
にしても、視聴後に作品を調べていてようやく気付いたことだったが、「探偵」は名前が設定されてなくて一切本名とか出てこないのね。なかなか面白い設定だ。

話の流れはこうだ。
探偵が懇意にしていたゲイバーのマサコ(ゴリ)はマジックを練習し、全国大会で優勝する。しかしその2日後に死体で見つかった。
犯人を探し出そうとする探偵と高田。どうも両刀」であって脱原発を掲げる政治家、橡脇孝一郎(渡部篤郎)が昔マサコと付き合っていて、そのマサコが全国大会で優勝などして目立つ立場になり、橡脇が過去をマサコから洩れることを恐れてマサコを消したのかも?という推測を立てる。また、調査の最中で弓子(尾野真千子)という女性に出会う。弓子は有名なバイオリニストで、マサコはその熱心なファンだったという。ファンを殺されたのが許せないという怒りに駆られ、弓子は探偵に依頼者としてマサコ殺害の真相を突き止める依頼をし、また共に捜査をすることにもなる。橡脇が送ってきた刺客らしき集団に何度も探偵は襲われるが、そのたび撃退、なんとか逃げおおせる。
マサコと知り合いだったというゲイバーのトオルも姿を消しているため、その実家の室蘭に探偵と高田、弓子の三人が向かうと、トオルは無事でいた。そしてマサコも室蘭出身であることを突き止める。またさらに、探偵を何度も襲ってきた集団は、単なる橡脇の支持者であって、橡脇の障害となるものを消すために橡脇の意思とは関係なしに動いていただけだということも、その集団を締め上げて問い詰めたところで分かった。

橡脇の父親の愛人で、現在は橡脇の後援会長であり秘書のような立場の新堂艶子(筒井真理子)のところへ乗り込み、さらには強引に橡脇本人にも会う探偵。橡脇はマサコ殺害の夜にマサコに会いに行ったことは確かだったが、自分は何もしていないという。ただ周辺の自分を支援する脱原発派の人々がマサコを勝手に殺してしまったのかもしれないと橡脇は言うのみで、実際のところは橡脇も新堂も把握していないということだ。人が死んでるのに無責任だと問い詰める探偵だったが、橡脇は自分のせいで人が死んでいるのならいつかは必ず罪を償うが今ではない、見逃してくれと言う。橡脇の脱原発への気持ちは本物であり、決して悪人ではないのだ。
一度すごすごと帰る探偵だったが、やはりマサコの死をそのまま見過ごすことはできないと刑事告発を考える。それを聞いた弓子は少し妙な様子でありながらも納得して去っていったようだった。
その後景気づけとばかりに探偵は高田、そして序盤に情報をくれた、ススキノの客呼びの「学生」というあだ名で呼ばれている男と飲んでいた。学生というのはあだ名なだけで社会人で、妻も子もいる男だ。するとその学生の言葉が最初に聞いたものとくいちがっていてどうもおかしい。さらに問い詰めると、なんとこの学生こそがマサコを殺した犯人であることが明らかに。マサコの死は橡脇とは一切関係なく、ただこの学生が、マジックの大会で優勝して人気者になっていたマサコが気に食わないがためだけに殺したのだった。
その後、マサコのことをこの上なく侮辱しながら走って逃げた学生はトラックに轢かれて即死してしまう。

弓子にどう話したものかと悩んでいた探偵だったが、ここでマサコの過去を調べるように頼んでおいた人物から連絡が入る。それによって、実は弓子はマサコの妹であることが判明。マネージャーに連絡しても弓子の消息は分からず、橡脇を襲うつもりなのだと直感した探偵は橡脇の講演現場に直行。そこでなんとか弓子の凶行を止めるも、自身が刃物で刺されることとなる。が、幸い軽症ですんだ。
退院後の探偵は弓子の懺悔をバーで聞く。マサコは体を売って得た金を全て弓子に仕送りしており、そのおかげで弓子はバイオリニストとして大成することができた。以前は成功したら兄のマサコと共に暮らすと決めていたものの、実際はそうはせず、そうしている間に兄が死んでしまったことを悲しむ弓子だったが、探偵はマサコは憐れまれるような人生は送っていないと一喝。弓子はまたバイオリニストに戻り、一件落着、札幌に初雪が降り、エンディングへ。

ここからは軽く感想。
まず、一作目を見ていないので、特に序盤に出てくるヤクザ関係の人物が探偵と顔なじみっぽいのを見て「ああ一作目の知り合いなんだろうな」と思う部分があって、そういう場面では二作目から見てしまったことのネックを感じざるを得なかった。まあその辺の人間は別に話の大筋には絡んでこないのでさほど問題なかったが。
マサコの過去やいかにも訳あり風の弓子の背景を最後まで伏せておいて、それが終盤のサプライズとして機能するという話の流れとしては悪くなかったと思う。しかし気になったのはアクションシーンだ。なんかショボいというか、全然危機感感じなくて、これいるか?と。
だって何人に囲まれても探偵と高田が問題なく撃退しちゃうんだもんなあ。おかげで茶番臭が凄いし、アンタッチャブルな政治家の暗部に関わっている、という危機感がどうも薄くなってしまっている感じ。まあコメディ分強い作品だからそうシリアスになりすぎてもあれだけど、探偵と高田が多数に囲まれて撃退する、というシーンが映画中に3回も4回もあるとなるとちょっと気にもなる。何十人に囲まれても無傷で勝つって黄門様ご一行じゃあるまいし、と思ってしまった。
それと、いくらなんでも単なる支持者があんな暴力でもって橡脇の障害を排除するという暴挙に出るのは、現実味が無い。反原発のために人まで殺そうとする、ってのは流石になあ。

項目別評価

脱原発にスポットが当たったりとかしたときは、こういうのいらんと思った。しかし実際の犯人はただの嫉妬から来る短絡的なものだったというのは、むしろホッとした。マサコと弓子の兄妹愛に帰着させたのは、ストーリーのまとまりとしていい着地点だった。
ただ、「そんなコッテコテやっちゃうんだ…」ていうものが多くて安っぽくて臭いシーンが気になった。早まった弓子の凶行を身をもってとめるとか、エンディングでの「あ…雪…」とか。
それとやはりアクションシーン。飲み屋、路面電車、バーと何度も20人以上に囲まれるような場面あるのに普通に2人で勝ってしまうのはどうなんだろうか。あげくカーチェイスでも真正面から撃ちあってもよくわからないがギャグとして無傷だ。別にリアリティを追求するわけじゃないが、それができちゃうならそりゃ楽だよな、と思ってしまう。大泉洋と松田龍平のコンビ自体は、なかなか面白いとは思ったのだが、全体に漂う茶番臭がどうにも気になってしまう、あまり肌には合わない作品だった。

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