トータル・リコール(リメイク版) 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2017年12月24日

あらすじ・ネタバレ

21世紀末、化学戦争の結果地球は大部分が居住不可能になった近未来。人類が居住できるのは2つの区域だった。富裕層が暮らすブリテン連合(UFB)と、労働者の住むコロニー。労働者たちはUFBの労働力として働くのだが、UFBはイギリス、コロニーはオーストラリアにある。つまり地球の反対側なのだが、労働者たちはコロニーから「フォール」という、地球内部を通る移動手段を使って短時間でUFBまで移動していた。激しい格差に反対するレジスタンスがコロニーには存在し、UFBへの反抗として爆破テロ事件も起こしていた。UFB側は「シンセティック」というロボットの警官を駆使して支配していた。UFBのトップはコーヘイゲンという人物、レジスタンスのリーダーはマサイアスという人物。

主人公ダグラス・クエイドはローリーという妻を持ち、コロニーに住む平凡な労働者だった。しかし最近妙な夢に悩まされていた。それは自分が諜報員として活動しているというものだった。
コロニーには「リコール社」という企業があった。そこへ行けば行けば望む夢を見られるのだという。そこに行った同僚いわく「人生最高の体験だった」という。気になっていたダグラスはここに向かった。

リコール社が見せる「夢」には制限があった。「現実に経験したことを見るのは不可能」ということだ。ダグラスはいつも見ていた夢と同じく「諜報員」になり活躍する夢を希望したが、係員の者が急に血相を変えてダグラスに対して「一体何者だ?」と敵意をむき出しにした。まるで身に覚えのないダグラス。そこにUFBの戦闘部隊が突入してきた。リコール社の人間は殺され、ダグラスも捕らえようとする。しかしダグラスは急に人並外れた戦闘力を発揮し、部隊の人間を殺害してしまう。

慌てて自宅に戻ったダグラス。すでにニュースではリコール社で発生した事件を伝えていた。妻ローリーに「あれをやったのはレジスタンスではなく俺なんだ」と説明するがローリーはこれをなだめる。しかしローリーが突如ダグラスの首を絞め始める。いきなり攻撃的になったローリーと交戦しながらもダグラスは彼女から事情を聞き出す。なんとローリーはUFBの諜報員であり、ダグラスの妻となっていたのもその仕事の一貫。ダグラスを監視するためだったのだという。ダグラスの主観としてはローリーとは7年にも前に結婚していたのだが、それは偽りの記憶を植え付けられているだけなのだという。ならば自分は本当は何者なのかとローリーに問うと、それはローリーも知らないのだという。

ローリーの元から逃げ出したダグラスに、ハモンドという男が電話で接触してきた。ハモンドは「本来のダグラス」の友人らしいのだが、記憶を失っているダグラスにとっては知らない男だった。ハモンドはダグラスに対してある貸金庫の番号を教えた。

その金庫の中にはかつてのダグラスの持ち物があった。その中には金、謎の黒い物体、そしてかつてのダグラス自身が記録した映像も残されていた。それは今の様に自分が記憶を失ってしまった時のために残しておいたもの。かつての自宅に向かえというメッセージだった。

その自宅へ向かうために変装してUFBに侵入しようとしたダグラス。顔を変えるホログラム変装装置を使ったが、検問所で正体がバレてしまう。逃げ出したダグラスが高速道路(この時代の車は磁力により地上から少し浮いている)に入り込むとそこにある女性がやってきた。それは最近よく見ていた夢の中で会う女性そのものだった。彼女の名前はメリーナ。
メリーナと共に車で逃走し、なんとか逃げ切ることができたダグラス。しかし走行中に磁力装置を無効にして高所から車で落下するという荒業を行ったためにメリーナは気絶してしまった。

映像の中の自分が言っていた通りの場所の自宅にメリーナを抱えて来たダグラス。そこにあるピアノの前に座ると自然に指が動き、ダグラスは曲を弾き出した。ある一つの黒鍵部分を外し、貸金庫にあった黒い物体を代わりに入れ込むとカール自身の人格が内臓されたAIが起動した。

そしてここでそのAIが事実を話し出した。ダグラス・クエイドは偽りの名前で、本当の名前は「カール・ハウザー」であり、UFBのトップのコーヘイゲンがレジスタンスのリーダーのマサイアスを暗殺するために差し向けたスパイだということ。しかしコロニーで後に恋人となるメリーナに出会い目が覚めて、「レジスタンスこそが正しい」と考えを改めたのだった。UFBでの爆破テロはコーヘイゲンの自作自演であり、それを口実にコロニーに侵攻してコロニーの土地をもUFBの領土とすることがコーヘイゲンの目的だった。そしてカールの頭脳にはロボット警官のシンセティックの停止コードが隠されているという。レジスタンスと接触して頭脳からこれを取り出せとAIは言った。

簡単には信じられなかったカールだが、メリーナが手の傷痕を見せる。それはカールが見ていた夢の中で銃弾で撃ち抜かれたもの。落ちそうになるメリーナの手をカールが掴んだ時、2人の手を銃弾がまとめて撃ち抜いたものだった。カールは自分のその傷は仕事中に事故で負ったものだと思い込んでいたが、そうではないと知ったのだった。

場所を察知されたため移動を開始した二人だったがUFBの部隊に囲まれてしまう。しかしそこで同僚のハリーがカール説得のために現れた。ハリーは「今お前が見ているのは現実じゃない。リコール社が提供する夢の中にいる。俺も薬を使ってお前の夢の中に入ってきた」と言う。気を許していた友人であるハリーの言葉でカールは動揺するが、ハリーの言葉には嘘があると見抜き、さらに涙を流すメリーナの様子から信用できるのはメリーナ、レジスタンスの方だと判断。ハリーを撃ち殺して逃げ出した。再びローリーも猛追してくるが二人は振り切った。

ついにレジスタンスのアジトへとやってきたカールとメリーナ。マサイアスはコロニーでもUFBでもない汚染された「ノーゾーン」と呼ばれる区域に隠れていた。そのためコーヘイゲンはマサイアスの場所を突き止められなかったのだった。

マサイアスと出会ったカール。そしていよいよカールの頭脳をスキャンしてUFBを転覆させるための情報を取り出そうとしたとき、コーヘイゲンの顔が現れ「マサイアス、お前を探していた」と言う。そして次の瞬間、レジスタンスのアジトにコーヘイゲン自ら部隊を率いて乗り込んできた。そして「シンセティックの停止コードなど存在しない」という事実を突きつける。カールの頭脳の中に停止コードがあるという情報もコーヘイゲンが流したニセの情報であり、カールは三重スパイとして利用されていたのだった。そしてコロニーに点在するレジスタンスのアジトの場所などを知ったコーヘイゲンはそこに部隊を送り殲滅させようとした。そしてカールに「スパイだったころの記憶」を撃ち込んでかつてのカールに戻そうとした。

コーヘイゲンは去り、その措置が行われようとしていた。しかしカールを拘束した戦闘員たちの一人は以前連絡してきたハモンドがいた。彼は他の戦闘員に気付かれないようにカールの拘束を解いた。そして反撃したカールだったが、この時の交戦でハモンドは他の戦闘員に殺されてしまったのだった。カールは自分を助けてくれたハモンドの死を悼んだ。

コーヘイゲンたちUFB部隊はコロニーに進攻するためにフォールに乗り込んだ。カールもフォールに似り込み、まずメリーナを救出した。フォールが移動する中でコーヘイゲンたちUFBと戦うカールとメリーナ。ついにコーヘイゲンに打ち勝ち、コーヘイゲンは爆発フォールと共に爆炎に飲みこまれた。だが激しい戦いの末、カールは重傷を負って気を失ってしまった。

カールが目を覚ますとそこは医療施設だった。目の前いんはメリーナがいたが、彼女の手に銃弾の傷痕がないことに気付いたカール。これはメリーナではなく、カールが検問を通る時に使った変装装置を使ったローリーだった。負傷したままで肉弾戦を行うカールとローリー。地面に頭を打った拍子でローリーは死亡する。カールは本物のメリーナを見つけ出し抱き合う。

そしてテレビ放送はフォールの破壊と共にUFBの支配は終わりを告げたことを伝えていたのだった。

感想・評価

アーノルド・シュワルツェネッガー主演1990年映画のリメイク作品。以下、ものすごーく昔に1度見たきりで内容を覚えていない(主人公が装置で変装するシーンだけはうっすら覚えがある)人間の感想。

自分の好きな夢を見ることができるリコール社へ主人公カールが向かい、そこで「諜報員として活躍する夢」を見るよう措置を施されようとした時から異変が起こるわけだが、タイミングがタイミングだけに思っちゃいますよね、「あれこれもう夢見てるんじゃ?」って。だがこれは典型的ミスリードだ。結局、カールは一度もリコール社へ行けば見ることができるという「自分の思うがままの夢」の世界へ入ることはなかった。

でもこういう話が出ておいて一度もリコール社の作るという夢の中を見せないというのもなんか妙だ。だって一度でも本当にそういう夢の中に入っていないと、ミスリードとして機能しにくいと思うのだ。ハリーが出てきて 「これは現実じゃない。お前はリコール社が見せる夢の中にいる」というシーンがあるが、これは一度でも夢の中に入っていればより信憑性が増すのだが、一度もカールは夢の中に入っていないので、「いやこれは現実だろ」と見抜くのが簡単になってしまっている。しかもこの場所の外ではさっきまでカールを追い回していたローリーがわざとらしく妻を演じてるもんで、「あんたら本当に騙せると思っとるんかい!」と突っ込みたくなってしまう。しかし、同じ状況でも前振り次第ではこの場面で「あれ?本当に夢なのか?」と思わせることは可能なはずだ。もっと「これは夢?現実?もうわけがわからないよ!」という、視聴者を混乱させるベクトルにより特化すればより設定を活かせたものになったのではないか?これは何もカールに経験させる必要はなく、カールにリコール社での経験を話した同僚の回想などで描写する形でもよかった。そうすればハリーの説得シーンでの揺さぶりが大きくなったはずだ。
しかしそういう話にはなっておらず、簡単に言えば「記憶を失ったスパイが奮闘するアクション映画」であり内容は実にシンプルだ。総合的に見ると、「よくまとまった佳作アクション映画」くらいの評価だ。

そしてどうやらオリジナル版トータル・リコールでは作中の出来事すべてが夢であることを示唆するシーンがあるとか?これは是非ともオリジナル版も見てみたくなる。が、残念ながらNetflixで現在配信されているのは2012年リメイク版のみなんだよなあ。残念。

人物解説

カール・ハウザー(ダグラス・クエイド)

コリン・ファレル演じる主人公。元々はUFBのトップのコーヘイゲンがコロニーに送り込んだスパイだったが、コロニーで考えを改め、UFBこそが打倒すべき悪だと考えるようになった。本名はカール・ハウザーだが、UFBに捕まってから偽りの記憶を埋め込まれて自分がコロニーでライン工の仕事をしているダグラス・クエイドという人間だと思い込んでいた。レジスタンス側になる前のスパイだった時代では非情な男で、拷問が得意だったらしい。しかしハモンドのようなカールのために命を賭けてくれる友人もいたので、元来、義に厚い人間だったのではないかと思われる。

メリーナ

コロニーのレジスタンスに所属するカールの恋人。カールがダグラスとして生活している間も夢の中でこのメリーナと共に行動していた時の夢を見ていた。このメリーナのおかげでスパイだったカールは心を入れ替えたらしい。

ローリー

ダグラス・クエイドとしてのカールの妻。カール同様にUFB所属のスパイ。監視も兼ねてダグラス・クエイドの妻となっていたが不本意だったらしい。コーヘイゲンが死んだ後も食い下がってくる真のラスボス。検問でカールが使用した変装ホログラム装置を拾い上げるシーンがあり、これがラストの伏線にもなっている。

ハリー

ダグラスとして生活していたカールの同僚。UFBに追われているカールの元に現れ「お前は現実ではなく夢を見ている。俺はお前の夢の中に薬を使って入り込んだ」ともっともらしいことを言ってカールを説得しようとするが、結局それは嘘で、カールに撃ち殺された。このハリーもUFBの人間だったのかどうかはっきり明言されてはいなかったような気がする。カールの説得はUFBに頼まれてのものか?

マサイアス

レジスタンスのリーダー。だが登場して割とすぐにコーヘイゲンに殺されてしまうので立場の割にはあまり重要な人物ではない。しかしコーヘイゲンはマサイアスを殺すことに執着していた。

コーヘイゲン

UFBのリーダー。コロニーに進攻する口実を創るためにUFBで自作自演でテロを起こしていた。最後にはUFBとコロニーとをつなぐ「フォール」と共に爆死する。

ハモンド

UFB所属のカールの友人。記憶を失っていたカールに連絡してヒントを与えた。後半、カールが捕らえられた時にもカールを助けるが、その裏切りのために一緒にいたUFBの戦闘部隊に殺されてしまう。命を賭してまでカールを助けようとしたのでカールに対してよほどの情があるようだが、それがなんなのかはわからないままに退場してしまう。カールに対して相当の借りでもあったのだろう。こういう人物がUFB側にいたことから、カールはコロニーに寝返る前から人望のある人物だったとも推測できる。

項目別評価

特に目新しい設定がある作品ではないが、アクションシーン、CGに妥協なく、高いレベルでまとまっている。自分は実践していないが、オリジナル版と比較すると面白いはずだ。

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