劔岳 点の記 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2018年01月14日

あらすじ・ネタバレ

1906年。日本地図を完成させるため、空白となっている前人未踏とされる北アルプスの劔岳に、陸軍の測量部に属する柴崎芳太郎が挑むことになった。

前任である古田と出会い劔岳に挑むことを報告すると現地の大山村の宇治という男を案内人にするのが良いと言われ、紹介してもらえた。

柴崎は富山県に向かい、案内人の宇治と話し、地元の協力も得る。
宇治と共に下調べに二人で上った。宇治からは3つの登り口候補があることを聞く。
宇治は劔岳はいずれ誰かが踏破しなければならない山だと言う。
三の沢を登るのは不可能だと宇治に言われる。
劔岳の南壁に辿り着くが、宇治はここより先に行った者はいないという。裸足になって岩の向こうを見に行く宇治。南壁を越えられても測量危惧を持ち込むのは困難だと柴崎は考えた。ここで下見は終えた。

帰りの道で山岳会の人間と出会う。小島烏水と岡野金次郎という男たちだった。小島はヨーロッパの登山危惧を使っていることをこれ見よがしに柴崎に見せた。
劔岳に登るのは危険な遊びだと柴崎が二人に言うと、人から見れば遊びに見えるかもしれないと言われ、私たちはあなたたちより先に劔岳に登ると小島に宣言された。その小島は「来年必ず頂きに立って見せる。しかし測量部はどのように頂を目指すのだろうか」と思った。」 山をよく知っている行者は山にこもり続けていたが、天候が荒れていたため連れて戻らないと危険だと考えて彼のところに行った。彼は「雪を背負って降りよ」と二人に言った。これが後に二人にとっての重大なアドバイスとなる。
ふもとに降りてから行者と話すと「どんなことでも為せば成る」と言われる。
柴崎は宇治と見送られ、来年の春にまたと別れた。

軍に戻った柴崎の報告によれば三島三角点の設置は不可能だと判断された。しかし上官の中井と矢口からは「なぜできん?」と迫られる。すでに新聞は「山岳会と測量部どちらが陥落させるのか」と煽っている。玉井大尉だけはかばってくれたが、もうやるしかないと二人には言われた。
古田と会うと「断る勇気が必要だ」とも言われるが、最終的にどうするかは宇治と相談して決めろとアドバイスされる。

明治40年の春になった。ついに測量隊を結成し、劔岳に挑むことになった。
地元の警察には「山に登るのは無謀」と忠告され嫌味を言われる。
富山日報の牛山という人間が柴崎にインタビューしようとするが、騒ぎ立てる新聞を快く思っていない柴崎は突っぱねた。

山に登る前、宇治の息子の幸助が宇治に対して「登ったらダメだ。掟破りだ」と言う。しかし宇治は幸助をひっぱたき、「山に登りたい人を登らせたいだけ」と言う。

そして測量は始まった。初日は明治40年の4月24日となった。柴崎、宇治のほか、柴崎の後輩の生田や、ベテランの木山
、それに金で雇った地元の人夫らも同行する。
柴崎の後輩の生田は「山岳会が来る前に劔岳をやりませんか」と言うが、まず周囲の山々を図ってからとなる。順序というものがあると柴崎は諭した。
日々の日記をつける柴崎は劔岳の入り口をどう見つけるかと悩んでいた。
そんな時、柴崎、宇治たちは雪崩に巻き込まれてしまう。鶴次郎、生田、木山らも巻き込まれた、特に生田は危うかったが、なんとか全員が生還。危険な仕事であることを改めて認識させられた。
柴崎たちが苦戦する中、山岳会の小島たちも劔岳に挑み始める。

人夫と木山は温泉で別行動。柴崎と宇治と生田だけでワシ岳という山へ行く。吹雪の中3人は。天幕を貼ったが強風で吹き飛んだ。助けが来てくれたおかげで助かった。この時生田は案内人の宇治が迷ってしまったと疑った。。後に柴崎も実は疑ってしまっていたことを宇治に白状し、謝罪した。

小島たちも登山を始める。宇治は劔岳にはいつ挑むのかと気を遣うが、柴崎は「作業をするだけだ」と答えた。
6月16日にでようやく27箇所のうち1箇所のやぐらを造標できた。残り26箇所。
山岳会が危険な場所の位置を教えてくれた。地元の人間は登れるわけがないと陰口を言っていた。
しかし柴崎はその地点から登れないかと提案した。渋る宇治だったが、そこに向かった。
あまりに険しい断崖にやはり無理だと判断するも、生田は一人岸壁を登った。しかし岸壁から落ちてしまう。けがは軽症だった。しかし一旦立山温泉に戻ることになった。

一方山岳会も一人がリタイアし、小島が宙づりになったりの危機に直面し、苦戦していた。 生田がけがの治療ため遅れて柴崎たちに追いつき、その時測量隊の皆あての手紙や、宇治の息子から宇治への手紙を渡した。
7月に入り小島たちが柴崎に挨拶しにきた。「自分たちの上りはやはり遊びなのかもしれない。あなた方は登ってからが仕事だ」と敬意を示した。
柴崎が生田から受け取った古田からの手紙がナレーション。「地図は国家のためでなくその地域に住んでいる人達のためではないか」というものだった。宇治の息子の手紙は宇治を励ます言葉だった。。

柴崎と宇治は行者の「雪を背負って雪を降りろ」という話を思い出し、雪渓を通ることを二人とも考えていた。
困難な道程ではあったが、測量隊一行は雪渓を通り、さらにその先の急な岸壁も登った。
頂上が近づいたが、宇治は「頂上に最初に到着するのは柴崎たちだ」と先を譲る。しかし柴崎は「あなたはもう仲間だ。あなたがいなければここまで来れなかった。最後まで案内を」と言った。
そうしてついに剣岳山頂に、7月13日に到達して四等三角点を造標した。前人未踏だと思われた場所だが、修験者の錫杖が落ちていた。
そのことを報告した玉井だったが、上官からは「初めてでなければ意味がない」と言われた。そして今回の柴崎の功績ははなかったことにしないか?と言われる。
玉井大尉だけは評価したが、新聞にも錫杖の件は乗り、功績は評価されなかった。

家で待つ柴崎の妻はその新聞を読んだが、夫の「何をなしたかではなく何のためになしたのかが重要だよな?」という言葉を思い出し、夫の味方だと呟き、歌を歌った。
柴崎に対し、記者の牛島がインタビューをする。そして行者が死去したことを柴崎に伝えた。

劔岳山頂を観測していた柴崎たちだったが、遅れて登頂した山岳隊がそこにいて、柴崎たちを旗による合図で祝福した。 これに対して「登頂おめでとう。あなたたちは私たちのかけがえのない仲間です」と返した。
最後に古田の声で「名もなき人たちにより日本地図は作り上げられた。それは彼らの家族の記録でもある」という言葉が流れ、エンドロールへ。

感想・評価

邦画はほとんど見ないが、有名作「八甲田山」で昔圧倒され、さらに最近(一昨年くらいだったか)もう一度改めて見て、「ロケに妥協がないから引き込まれるんだろうなあ」なんていっちょまえに分析してみたりしたのだが、この作品はその八甲田山のカメラマンである木村大作という人が監督。

そんな人が監督をするとなれば撮影に拘りが出るのは当然だったらしい。空撮やCGを使わず、実際に立山連峰、劔岳で撮影をしたのだという。こういう職人気質なこだわりには感服。CG無しっと聞いてまてよ、となったのだが、じゃあ柴崎らが雪崩に巻き込まれるシーンも…?さすがにそれはそんなわけはないと思うが、雪崩で埋まった生田を演じた松田龍平が酸欠で失神したという事実はあるらしい。

話はというと「空白地帯になっている劔岳の測量を行うと共に前人未踏となっている劔岳超常に山岳会の人間よりも先に登れ」と、つまり二兎を追って両方捕まえろという、無茶な命令をされた軍の測量士柴崎が地元の案内人宇治と共に劔岳頂上を目指すというもの。命令通りに達成するも「実は千年前くらいに修験者が到達していた」という残酷な結末。しかし最初は互いに対抗意識を燃やしていた測量部と山岳会は共に劔岳の厳しさを実感する中で仲間意識が芽生え、互いを尊重し合うという気持ちのいい終わり方になっている。
事実に即した物語であるため、教養や雑学を得るためとして見ても絶対に損はない作品。興味があるなら是非。

登場人物解説

柴崎芳太郎

演:浅野忠信
陸地測量部の主人公。三点うんちゃらのために調査をすることになった。案内人の宇治に対しては劔岳の下見をした時に信用に足る人物と思い、信頼と共に敬意を持って接する。

宇治長次郎

演:香川照之
準主役で案内人。古田には「山に関しての鋭い勘のようなものを持っている」と評された。幸助という息子がいる。

生田信

演:松田龍平
山岳会に対抗意識を燃やす柴崎の後輩。血気にはやる少々生意気な若者で宇治に食ってかかるような場面もあるが、そのうちに柴崎同様の敬意を持つようになる。

古田盛作

演:役所広司
柴崎の先輩。5年前劔岳に登ろうとしたが登れなかった。柴崎に宇治を紹介した。

木山竹吉

演:モロ師岡
測量部の一員。ベテランで柴崎からの信頼も厚い。

行者

演:夏八木勲
山を誰よりも知っているという行者で剣岳にこもっている。柴崎と宇治が下見に行った時に出会い、天候が荒れていたので宇治の提案で無理矢理下山させた。宇治よりも劔岳に詳しい、真の劔岳のエキスパートということになる。

玉井要人

演: 小澤征悦
大尉で柴崎の上官。上官の中では唯一柴崎を評価している。

小島烏水

演:仲村トオル
山岳会の人間。測量部に対抗意識を燃やしている。自分たちが単純に山に登ることを目的としている中、測量部は登ってからさらに仕事があるということで、敬意を示すようになった。

岡野金次郎

同じく山岳会の人間。小島に次ぐサブリーダー?測量部で言う生田ポジションか。

宇治幸助

宇治の息子。父を心配して警告する。

鶴次郎、久右衛門

地元の人夫たち。よく喋る賑やかし。

柴崎葉津よ

演:宮崎あおい
柴崎の妻。夫に献身的で常に味方であらんとする、絵に描いたような良妻賢母。

項目別評価

CGを使わずに行ったロケなだけあって映像は臨場感たっぷり。「八甲田山」のように大量の死人は出るものではないが、劔岳の過酷さは十分に伝わってくる。実際にあった物語を描いており、測量についてのちょっとした知識も得られるので見て損はない。

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