バニラ・スカイ 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2017年12月31日

あらすじ・ネタバレ

この作品は白いマスクをつけた主人公デイヴィッド・アームズがなんらかの理由で犯罪を犯して捕まり、その彼が精神分析医マッケイブに対して何があったかを回顧、説明するという形になっている。

デイヴィッド・アームズは父親が死んだことで、自分が父の会社の株式51%を所持することになった。そのためデイヴィッドは大金持ち。そして彼はジュリーという美しい女性と肉体関係を持っていた。そんな彼を親友のブライアンはうらやんでいた。デイヴィッドは会社の役員は自分が持つ株式を狙っているため油断ならないと考えていた。

デイヴィッドは自分の誕生日パーティを盛大に開く。そこにはブライアンの恋人のソフィアという女性も参加していた。徐々にデイヴィッドは純真なソフィアに惹かれるのだった。しかしデイヴィッドは楽しみは後回しにするタイプであり、ソフィアにすぐには手は出さず、徐々に親密になっていくのを楽しんでいたのだと、マッケイブに話した。一方、半ばストーカーと化してきていたジュリーに対しては距離を置くようになっていた。パーティにもジュリーは招待していなかったのだった。

ある日デイヴィッドはソフィアの家に行き、そこでさらに親密になっていたのだった。しかし家から出たところでジュリーが待ち受けていた。彼女はデイヴィッドを車に乗せるとデイヴィッドに対して思いを吐き出し始めた。自分がどれだけデイヴィッドを愛しているかを語りながら車を暴走させ、ついにはハイスピードで高所から落下、大事故を起こしてしまう。

これによりジュリーは死に、デイヴィッドは助かったが右腕と頭に重大な怪我を負ってしまう。特に頭の怪我に関しては重大で、顔の右半分が醜く変形してしまい、さらに常に痛みに悩まされて日常生活に支障があるほどだった。医師は「この仮面には再生機能がある」と言って白いマスクをデイヴィッドに渡した。これを装着してデイヴィッドは生活するようになった。

ある程度回復した時、デイヴィッドはついに再びソフィアに会いにいった。彼女は戸惑いながらも相手をしてくれたが、変形した顔のままクラブにもついてくるデイヴィッドにはさすがに愛想を尽かした。デイヴィッドの親友でソフィアの恋人であるブライアンも同様だった。

ソフィアに振られ、ブライアンにも愛想を尽かされたデイヴィッドは自暴自棄になり路上で眠ってしまう。しかし起きるとそこにはソフィアがいた。彼女はなんとデイヴィッドと一緒に暮らし、支えるのを決意したのだという。こうしてデイヴィッドとソフィアは共に暮らすようになった。

こうしてデイヴィッドはソフィアに支えながら生活することになったが、異変が起きる。
なんと共に寝ていたソフィアの姿が死んだはずのジュリーになってしまったのだ。

これに驚いたデイヴィッドは「家に侵入者が忍び込んだ」と警察に連絡したが、どうも周囲の様子がおかしい。実際はデイヴィッドはソフィアを殴って暴行していたのだ。しかしそのことを覚えていないデイヴィッドは狼狽するのだった。

この後、デイヴィッドはレストランで謎の男に出会った。その男が言うには「僕らは知り合い。ネットで知り合い、契約を結んだ。君が望めばこの世界はその通りになる」などと意味不明なことを言った。一笑に付すデイヴィッドだったが、「例えばこのレストランにいる客たちを全員黙らせたい」などと言った瞬間に本当にいその通りになってしまう。全くわけがわからないデイヴィッドだったが、確かに何らかの契約を行ったのをうっすらと覚えていたのだった。

その後家に戻るとそこにはやはりジュリーがいたが、姿がソフィアと入れ替わったり、また元に戻ったりする。もうデイヴィッドには現実なのか夢なのか、わけがわからなかった。そして錯乱したデイヴィッドはジュリーだかソフィアだかわからないその女性を殺してしまう。しかし彼女は確かにジュリーではなくソフィアだった。

ここまでの話をマッケイブに話し続けてきたデイヴィッドだったが、結局マッケイブからすると彼の話にはつじつまが合わないことが多く、わからないことだらけだった。残念ながらもう精神分析医としての仕事は終わりだと言ってデイヴィッドに別れを告げるマッケイブ。しかしその直後、デイヴィッドはテレビでやっていたLE(LIFE EXTEND)社のCMを見て何かに気付く。その会社は以前からよくテレビで見かけていて、「死ぬ状態だったはずの犬を蘇生させた」として有名な会社だった。この会社こそ、おぼろげながら記憶に残っている「デイヴィッドが契約を交わした相手」だとデイヴィッドは確信したのだ。

マッケイブを呼び戻し、デイヴィッドは彼と共にLE社へ赴いた。それはその社名通り人間を冷凍保存させ、命を延長させるサービスを提供する会社だった。生きている人間に限らず、死者さえも復活させることもできるというものだった。その業務の中には「lコールドスリープさせたうえで顧客が見たいと思う通りの夢を見せるサービス」もあった。LE社の女性の説明を聞いているうちにデイヴィッドはついに真実に辿り着いた。今見ているのも全てこのLE社が提供する夢の中なのだ。

何かトラブルがあれば救護員がかけつける、とLE社の女性は言ったので、デイヴィッドは部屋を飛び出し、LE社の救護員に何度も助けを呼び叫んだ。するとそれに応えて救護員が現れる。それはレストランで会ったあの謎の男だった。

救護員の名前はヴェンチュラと言った。彼が言うには「最初にデイヴィッドと会ったのは150年前」らしい。つまり現実世界では150年前からデイヴィッドは夢を見続けていることになるらしい。
現実でのデイヴィッドはソフィアに振られた直後にLE社と契約し、その直後に死亡した。彼が死んだ時には愛想を尽かしたブライアンもソフィアも皆悲しんだのだという。

そしてデイヴィッドは死後、LE社と契約した通り、夢を見続ける措置を受けた。夢はソフィアに振られて路上で眠った時から始まったのだという。ソフィアと共に住むようになってから以降は全てが夢であり、ジュリーとソフィアを混同してしまっていたのはジュリーに対しての負い目からデイヴィッドが精神的に不安定になり、そのため夢が不安定になってしまったから、という理由だった。

LE社の屋上まで来るとヴェンチュラはデイヴィッドに選択を迫る。このまま夢を見続けるのかそれとも現実へ戻り蘇生措置を受けるのか。その場に現れたマッケイブは「彼を信用するな」とデイヴィッドに言うが、このマッケイブもデイヴィッドが生み出した偽りの存在にすぎない。「娘の名前は?」とヴェンチュラに問われて答えることができないことに気付いたマッケイブはようやく自分が都合よ作られた存在にすぎないことを自覚し、「私は娯楽のためだけに作られた存在か!」と叫ぶ。しかし彼も事実を受け入れ、デイヴィッドに別れを告げるのだった。
そしてソフィアもまた屋上に現れ、デイヴィッドに別れを告げた。

現実に戻る洗濯をしたデイヴィッド。現実に戻るためには屋上から飛び降りる必要があるのだという。意を決して飛び降りたデイヴィッドが地面に衝突する瞬間、「デイヴィッド」とソフィアが呼ぶ声が聞こえ、デイヴィッドは目を覚ました。これが結末で、エンドロールへ。

感想・評価

自分にとってずっと昔に見たが内容を覚えてない映画。なんか最近みた「トータル・リコール」の感想でも「マイノリティ・リポート」の感想でもこんなねむたいこと書いたが、実際これら3つは連想して観ている。トータルリコールといえば…」と考えてマイノリティ・リポート、「マイノリティ・リポートといえば…」と考えてバニラ・スカイ。あんまり内容は覚えてないのに、と言っておいて変な話だが、なんとなく似た感じのSFであるという点は3つ見て間違っていなかったなとも思った。物語の核心部分だけは無意識に覚えてたってことなんだろうなあ。漠然とした記憶ってのも案外アテになるものなのかもしれない。それはともかく以下感想。

恐らく物語に隠された大きな秘密に気づくことができる人間は一人もいないのではないだろうかという作品。「仮想世界かも?」とまでは読めたとしても、「LE社という会社が提供している仮想世界の中でデイヴィッドがジュリーへの負い目を持っていたために悪夢を見始めるようになってしまった」なんて事実は読みようがないだろう流石に。LE社の夢を見るサービスもまた酷い欠陥を持ったもんである。多分デイヴィッドは財産にものを言わせて夢を見るサービスに対して継続的に大金を払い続けているのだろうが(救護員ヴェンチュラがもうすぐデイヴィッドの金が尽きる旨の発言をしている)、こんな重大な欠陥があるとは。

それにしても単純にコールドスリープに入ったってだけじゃなく、「死んでいたとしてもスリープ状態に入って夢を見続けられるし、望めば蘇生できる」ってのもまた凄い。150年先の未来では人類は死をも克服してしまったらしい。

路上で寝て起きたらソフィアがいたところからデイヴィッドの夢なわけだが、正直、ここの「しょうがないから面倒見てあげるわ、でもあなたが堕落したら見捨てるわよ」(要約)ってソフィアにはちょっと自分もマジで惚れちゃいそうだったんですっかり騙された。「なんだこのヒロインは滅茶苦茶いい女すぎるだろありえないだろ俺も惚れちゃったよ」とかまで考えた。はい、こんな都合のいい聖母みたいな女性ありえませんでしたという話だったんでよくも騙したなあああ!?ってなったんですけどね。

この映画、巷では「難解だ」って意見もそれなりにあるようだ。確かに、デイヴィッドがマッケイブに何があったかを述懐するシーンとその回想のシーンが何度も入り混じるので時間軸構成が二重になっているし、話が飛び飛びな部分もあるので前後がわからなくなることもある。さらに終盤では突如仮想世界という設定が降ったように発生するので確かにボーっと見ていると混乱するかもしれない。2回以上見直したりしたくないならばじっくり見ることを推奨する。

登場人物解説

デイヴィッド

演:トム・クルーズ
主人公。父親が死んだことで大手出版社の株を51%持つことになる。プレイボーイがゆえにジュリーをストーカー化させてしまい、身の破滅を招く。事故後の腕をぶらぶらさせて引きつった顔でフガフガ言葉になってしまってからのデイヴィッドは、自業自得とはいえ観ていてつらい。デイヴィッドの夢の救護員であるヴェンチュラは「最初に会ったのは150年だ」と言っているのでその間ずっと夢を見続けているらしい。

ソフィア

演:ペネロペ・クルス
デイヴィッドが惚れた女性。ブライアンの恋人だがデイヴィッドが寝取った形になる。しかしそれはデイヴィッドの夢の中の話だった。事故を起こした後のデイヴィッドを振ったが、彼女もブライアン同様にデイヴィッドを悼んだ。ラストシーンでも現れてデイヴィッドは彼女に「生れ変わって猫の世界で会おう」と言って別れを告げた。

ジュリー

演:キャメロン・ディアス
デイヴィッドのセ○レでありストーカー。「1晩に4回も抱いた!4回もよ!」とか言いながら車を暴走させて130キロのスピードで橋から落ちて壁に激突。これによりデイヴィッドは腕と顔に重傷を負い、ジュリーはというと死亡。しかしバグってしまったデイヴィットの夢の中では、ソフィアがジュリーに見えるという現象が起きてデイヴィッドを翻弄する。夢に入る前に死んでいるので、このジュリーは間違いなく死んでいる。

マッケイブ

演: カート・ラッセル
デイヴィッドの理想の父親像としてデイヴィッドの夢の中で生み出された存在。デイヴィッドが昔見た映画「アラバマ物語」の主人公がモデルになっている。ソフィアを殺してしまったデイヴィッドの精神分析医を担当。2人の娘を溺愛しているらしい。彼自身デイヴィッドが生み出した存在であるのだが、マッケイブはそれと知らず現実の人間だと思い込んでいたため、ラストシーン直前でヴェンチュラに「二人の娘の名前は?」と聞かれて答えられないいことで「私は娯楽のためだけに作られた存在か!?」と怒り、狼狽した。だが一息入れるとその事実を受け入れてデイヴィッドを見送る。なんかこのマッケイブが主人公でもこの映画は成り立ちそうだ。

ブライアン

演:ジェイソン・リー
デイヴィッドの親友でありソフィアの友人。モテないのが悩みで「どうせ俺なんか」という発言が何回もある。ジュリーは「憧れの女性」でソフィアは「身近に咲く草花」などというように表現した。どちらとも親しくなるデイヴィッドを妬みそうな立場なのでもしかするとこのブライアンが黒幕なのかもというようにも思えてくるがミスリード。事故後のデイヴィッドの様子には流石に付き合ってられないようで見放したが、彼の死後には3日にわたり別れの会を開いた。

ヴェンチュラ

演:ノア・テイラー
デイヴィッドの夢の中の救護員。「最後に会ったのは150年前だ」という発言から、デイヴィッドは150年間夢を見続けているとわかる。それほど時間が経過しているため、今は「オアシス社」と名前を変えているらしい。このあたりがよくわからなかったのだが、150年の間、デイヴィッドの夢はループしているか何かなのだろうか?

項目別評価

謎が明かされる終盤では突如作品がSFになり戸惑うが、このラストを認められるかどうかで評価が分かれる作品だろう。自分は実に面白いと感じた。同時期のトム・クルーズ映画マイノリティ・レポートと同じ程度には面白い。

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