ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館

執筆日:2018年2月19日

簡単なあらすじ・ネタバレ

19世紀末のイギリスのロンドン。主人公のアーサーは弁護士。妻ステラは子供のジョセフを産むと同時に亡くなっていた。またアーサーは業績が悪いために事務所をクビになりかけていた。とある田舎の村のクライシン・ギフォードのイール・マーシュの館と呼ばれる館に住んでいたアリスという女性が亡くなったため、その書類整理仕事を最後のチャンスとして与えられた。アーサーはロンドンから向かう途中にサムという老紳士と出会った。アーサーが村に付き館へ行くが、何か超常的な現象が続けざまに起き、また村の人間たちは何かを隠しているようだった。実は館ではアリスの妹のジェネットという女性が自殺していた。ジェネットは自分の子供のナサニエルをアリスに奪われ、しかもナサニエルは館近くで沼に沈んで事故死してしまったためにアリスを恨んでいた。そのためジェネットは死後に強力な怨霊となり、自分を見た人間全てに災いをもたらし、子供の意識を操り、殺していたのだ。アーサーはサムの協力を得て泥沼に沈んだまま未だ見つからないナサニエルの遺体を引き上げてジェネットの遺体と共に埋葬、その怒りは静まったかに見えた。だが、ジェネットの怨念は変わらず、最後にはアーサーの息子のジョセフの意識を操る。自ら線路を歩きだし、列車に轢かれそうになったジョセフを救おうとアーサーも線路に入るが間に合わず、アーサー、ジョセフの親子は共に死んでしまった。二人は死後の世界で妻のステラと出会った。最後にジェネットの悪霊は次はお前だと言わんばかりにカメラをにらみつける。

詳細なあらすじ・ネタバレ

作品の舞台は19世紀のイギリス。冒頭で3人の幼い姉妹が飛び降り自殺して母親が絶叫する。

主人公のアーサーは弁護士。しかし業績が悪かった。クライシン・ギフォードという村でアリス・ドラブロウという女性が住んでいたイール・マーシュの館で遺言書を捜すことになり、これがうまくいかなければ所属事務所をクビにされてしまうという瀬戸際になっていた。 アーサーの妻は4年前に子のジョセフを産んだ際に具合を悪くして亡くなった。それ以来、アーサーの心はいつも沈んだままなのだ。

汽車を使ってクライシン・ギフォードへ向かう途中、アーサーはサム・デイリーという老紳士と出会った。彼は親切で、アーサーを駅から宿まで送ってくれた。サムはアーサーを食事にも誘った。

予約をしたはずなのに町の宿はなぜか満席で、町の人間はどことなくよそ者のアーサーに出ていってほうしいような雰囲気だった。宿屋の夫人は屋根裏の部屋を確保してくれたが、やはり「この町からは出て行ったほうがいい」とアーサーに忠告した。

翌日、アーサーは現地の弁護士のジェロームの家へと向かうが、彼は非協力的であり、やはりアーサーは独断でイールマーシュの館に向かう。館は村から離れたところに位置する。満ち引きする海の中を通るような道を抜けたところにその館はあった。道の途中には十字架が立っていた。

アーサーは一人館の中を調べていると、ナサニエル・ドラブロウという人物が1889年に7才で溺死したことを知る。来る時に見た十字架はナサニエルのものだった。 アーサーが館の外に出ると周囲な不思議な霧に覆われ、その時の様子を垣間見る。

このことを村に戻ってサムに話すと、ヴィクトリアという少女がなぜか自ら洗剤を飲んだ。そして間もなく死んでしまった。
やはり何らかのいわくがあの館にあるのは確か。帰ってほしいと宿屋の妻に言われるがアーサーは断る。

アーサーは宿屋を出てサムの家に泊めてもらうことになる。妻が死んでから霊のようなものを信じるようになったと言うアーサー。実はサムも妻エリザベスとの間にニコラスという子供をもうけていたが、すでにその子は亡くなっていたのだった。サムの家には大量の犬がいたが、子供がいなくなった慰めとしていたのだ。サムはアーサーに過去に囚われてはいけないと忠告した。
アーサーはクビにならないようにするためにはジェロームの助けがいると言い、サムと共にジェロームの家を訪れる。しかし地下には幽閉されている少女がいて、「ヴィクトリアを殺した」と騒ぎ出した。
その後アーサーは村人にも囲まれて「あんたが去らなかったからだ。館に行ったからだ」と責められてしまう。

アーサーはサムに送ってもらい再び館へ。徹夜で調べるという。サムは飼い犬をアーサーについていかせて、「影を追うんじゃないぞ」と再び忠告した。
本格的に館を調べ始めるアーサー。家の書物には「あの女は地獄までついてくる」といった呪詛の言葉が殴り書きされていた。
アーサーは館の外でナサニエルの墓を見つける。アリスの妹のジェネット・ハンフリーという女性の墓もあった。
館に戻ろうとした時、2階の子供部屋の窓に女性を見かける。家に戻っても誰もいなかったが、背後に女性の顔が映る。
アーサーはその子供部屋っで大量の手紙を見つける。アリスが息子を手放すことになったというジェネットの手紙もあった。つまりジェネットの息子ナサニエルはアリスに引き取られていたのだが、その原因は「ジェネットに精神疾患があるから」という理由だった。その後ジェネットの手紙は「ナサニエルを奪ったのは私を苦しめるため?」という恨み言も続いた。
ジェネットはアリスに息子に会うのも拒否されていたのでジェネットは強硬手段に出るという宣言をしていた。 その後、ジェネットの息子のナサニエルは池で溺死したが、アリスは埋葬すらしなかったのだという。そしてジェネットはこの館の子供部屋で首つり自殺をしたのだった。つまり、不可思議な出来事はジェネットの悪霊により引き起こされていたことだったのだ。

調査中に眠りに落ちたアーサーは犬の声で目を覚ます。何かを叩くドンドンという音がずっと聞こえ続けていた。そこでは椅子が動き続けていて、女性が座っているようだった。しかしアーサーが椅子の前に回り込んでみると誰もいない。
アーサーがその部屋の壁を破いてみるとそこにも「息子を見殺しにした」というジェネット・ハンフリーの呪いの言葉が刻まれていた。
外を見ると海の道の途中にある十字架のところから何者かが現れ、館に迫って来るのが見えた。窓に映る自分が絶叫する女性になるのも見た。
犬が吠えていたので一階へと降りると何者かが館に入ろうとしていた。アーサーが外に出ると大量の子供の霊が立っていた。
慌てて館に戻ると何者かの足跡が家の床に点々とついていた。
子供部屋に行くとジェネットが首つりをする瞬間のビジョンを見た。そして溺死したという泥だらけのナサニエルも現れた。恐らく十字架の場所からはい出したのがこのナサニエルだ。
アーサーが慌てて館から逃げようとするとそこにいたのはサムだった。

アーサーがサムと共に村に戻るとジェロームの家が火事になっていた。そこに飛び込むアーサー。取り残されていたのはジェローム夫妻の娘のルーシーという少女だった。彼女もアーサーもジェネットらしい女性を見た。そして直後、ルーシーは自らランプを足元に叩き付けて焼身自殺をしてしまう。
サムはアーサーに「ジェローム夫妻は元々子供がいたが死んでしまい、ルーシーは2人目だった。だから閉じ込めて守っていた」と説明した。サムに「あの女を見た」というがサムはやはり信じなかった。

アーサーがニコラスの墓の前にいるエリザベスと話すと「彼女を見た者の子供が死んでしまう」と言った。そして突如何者かがエリザベスに乗り移り「彼女が僕達にそうさせた」と話し始めた。つまり、アーサーの息子のジョセフの身も危ないということだ。
アーサーの息子のジョセフは家政婦と共に遅れて村に来ることになっている。アーサーはサムの車に乗り、ジョセフが来るのを阻止しようとする。だがもう間に合わなかった。

ジェネットに遺体を帰せば問題は解決するかもとアーサーは考える。アーサーはサムの車に命綱を結び付け、ナサニエルが死んだ底なし沼へと入った。場所はあの海の道の途中にある十字架の下だ。
十字架の真下を調べるとアーサーは何かを発見した。アーサーがしばらく浮かんでこないのでサムはあわてて車で引っ張り上げる。すると馬車が出てきて、内部にはナサニエルの遺体があった。

サムはこの遺体を埋葬しようと言うが、アーサーは母子を再会させると言う。
アーサーは子供部屋にナサニエルの遺体を置き、おもちゃを動かしてジェネットを待った。
サムは1階で待っていたが、亡くなった息子のニコラスを見かける。それに誘われたところ部屋に閉じ込められてしまった。 アーサーの周囲のろうそくが消えてジャネットが現れて怖ろしい姿をアーサーの前にさらけ出すが、すぐに消えてしまった。
そしてアーサーとサムはナサニエルを埋葬する。ジャネットの棺の中にナサニエルの遺体も入れ、親子が寄り添うような形にしたのだった。、 だが、その後館の中では「絶対に許さない」というジャネットの声が恨めし気に聞こえていた。

アーサーの息子のジョセフが家政婦と共に列車で村にやってきた。だがこれ以上この恐ろしい村にいる理由はない。予定を変えてすぐにロンドンに戻るというアーサー。
アーサーがサムに対して世話になった礼をしているうち、ジョセフはジャネットの姿を見ていた。そして自ら線路の上を歩き始めた。アーサーは慌てて抱き上げようとする。列車が二人に迫る。この瞬間、サムは通過する列車の向こう側にジャネット、そして死んだ多数の子供たちの姿を見た。

アーサーはジョセフを抱えて線路の上で立っていた。周囲にはサムも誰もいない。ジョセフが「あの女の人誰?」と言う。線路の上にはアーサーの妻ステラがいた。
親子三人は共に線路の上を歩いてあの世へと行ってた。それをジャネットが見つめていたが、最後にカメラ目線になったところでエンドクレジットへ。

感想・評価

生きるもの全てを恨んで、全く関係のない相手にまで危害を及ぼしまくるド悪霊により主人公とその息子も死んでしまうという、どうしようもないバッドエンド。

呪怨なんかでも思うところだけど、こうまで理不尽に死をふりまかれると恐怖より怒りが先行してしまうものがある。ホラー映画はバッドエンドが定番ではあるが、この作品に関しては泥まみれになってまで息子を見つけて埋葬してやった、というアーサーの行為が本当にただの無駄足であり、胸糞悪い。てっめえこの○○○○があああ〜!という怒りばかりが湧く。グッドエンドで良かった。解決したと思ったら怨霊の方は何も納得していなかったというのもホラーの定番なのは分かってる。だがこの作品はどこか者悲し気なゴシックホラーであり雰囲気は良いので、余韻のあるしんみりとしたグッドエンドの方が調和したのではと感じた。

ナサニエルの遺体だが、ああいう泥だらけの中でああまで原型を残しているということが果たしてあるのだろうか。死蝋というやつだろうが、あんな泥の中ではるか昔の遺体を捜そうとするアーサーには「ええ…おいおい…ええ…」という感じでちょっと引いてしまった。まさに勇者。だからこそ!これで納得しとけやクソババアがあああ!というジャネットに対する怒りが強くなってしまったわけだ。何やっても納得しないならもういっそあの館燃やしちゃおうぜ。そっちの方がよほど解決になりそうだ。
それにしてもあの館、潮が引いた時だけ通れる海の道を通った先にあるという、フランスのモンサンミシェルさながらのファンタジーみたいなロケーションだが、あれって実在するのだろうか。怨霊がいるわけでないのであれば是非とも生で見てみたい場所だ。

最後まで観ていても1つわからなかったのが、「アリスは結局なぜジェネットからナサニエルを奪ったのか?」という点だ。ジェネットがアリスに出した手紙の中に「ジェネットはアリスが手配した医者により精神障害者と判断された」とあり、また「自分を苦しめるためにナサニエルを奪ったの?」というジェットの恨み言もある。だが、これはジェネットの主観であり、本当にそうなのかはわからない。本当にジェネットが頭がおかしくなっていたのか?アリスがジェネットを嫌っていたのか?何せアリス自体がすでに故人であるため判らないのだ。だが、アーサーの上司に「アリスは人格的に問題があり、訪問者にお茶一つ出さない」という事をアーサーに言ってもいるため、性格が悪い人間であるということは推測できる。よって恐らく「ジェネットを苦しめるためにナサニエルを奪った」というのは真実なのだと思う。その場合にせよ、なぜアリスがジェネットを苦しめようとしていたのかまでは不明だが、もとをただせばアリスが元凶ということになるかもしれない。

そしてどうやらこの作品続編があるようだ。でもこの手の話は往々にして、いくらシリーズが続こうが成仏して万々歳!とはならんのだよなあ…。しかし雰囲気は好きな作品になったのは確かなので、是非とも2も見てみたい。幸い、Netflixで2も配信されているので続けて視聴することにする。

人物解説

アーサー・キップス

演:ダニエル・ラドクリフ
法律事務所所属の主人公。4年前に子をもうけたが、妻ステラはそれと引き換えに命を失った。それ以来常に心を沈ませているようで、息子のジョセフにそれを指摘されている。そんな調子だからか仕事の方も芳しくないようで、雇われている弁護士事務所から「イール・マーシュの館の書類整理の仕事をちゃんとやらなければクビにする」と言われる。しかし館に行ったせいでジェネットの怨霊に目をつけられてしまう。ナサニエルの遺体を引き上げてジェネットの怒りを鎮めようとするが、その努力も空しく、ジェネットに目をつけられたジョセフを救うために線路に入ってジョセフと共に死んでしまう。その後迎えにきた妻ステラと共にあの世へ行ってしまった。

サム・デイリー

演:キーラン・ハインズ
館に向かう途中の列車で出会った紳士。何かとアーサーに親切にしてくれる準主役、相棒ポジション。妻のエリザベスとの間にかつてニコラスという息子をもうけたが、それもジェネットの怨念により殺されてしまった。しかしサムは悪霊の存在など信じないようにしていた。イール・マーシュの館でニコラスの霊と出会う。ラストではアーサーとジョセフが列車に轢かれるのを目前で見て、その瞬間、列車の向こう側に殺された子供たち、そしてジェネットがたたずんでいるのを見た。

ジェネット・ハンフリー

演:リズ・ホワイト
アリスの妹。アリスに息子のナサニエルを取られ、さらにはそこでナサニエルは事故死してしまったためにアリスを激しく深く憎み、その後自殺。そして村の全ての人間が恐怖するとんでもない悪霊と化した。館を訪れた人間は例外なく標的として、その子供の心を支配して殺してしまう。いや、アーサーとは無関係のヴィクトリア、ルーシーといった子供も死んでしまったため、例え館に行かずとも被害は受ける可能性がある、ということか。さらに死んだ者は成仏できずにジェネットのしもべのようになってしまうためさらに最悪。地縛霊というわけでなくあらゆる場所に現れて殺すため、相当に理不尽な存在。アーサーがナサニエルの遺体を引き上げてジェネットの墓に入れてもその怒りは全く収まらず、アーサーの息子ジョセフも標的にしてしまう。

ジョセフ・キップス

演:イーファ・ドハーティ
アーサーの息子。4才。ジョセフを生んだ際にアーサーの妻ステラは死んでしまったために母の顔を知らない。絵を描くのが趣味で、パパはいつも沈んだ顔をしている、と指摘した。先にクライシン・ギフォードへ行ったアーサーを家政婦と共に追ったが、駅のホームでジェネットに目をつけられ、アーサーとサムが目を離した隙に線路を歩き出し、救出しようとしたアーサーと共に列車に轢かれて死んでしまった。あの世の世界?でステラを見て「あの女の人誰?」と発言するのが最後の台詞。

アリス・ドラブロウ

館の持ち主。ジェネットの姉。この人物が先月亡くなったからということでアーサーはこのアリスが住むイール・マーシュの館という場所へ向かい、遺言書を捜すこととなる。ジェネットの怨霊が人々を恐怖に陥れてはいるが、このアリスが妹のジェネットの息子ナサニエルを奪って養子とし、さらに底なし沼に沈んで死んだために埋葬もしなかった、というのが事の発端とも言える。全く登場しないのでどういう人物なのか不明なのだが、アーサーの上司によれば「客にお茶も出さない」ような人物なのであまり褒められたような人格ではないらしい。しかし、まさにアリスに深い深い恨みを持つジェネットの怨霊が居座り続ける館にずっと居て、しかもこのアリスの死因は自殺というわけでもないようなので、良く言えば豪胆、相当に太い神経の持ち主だったのでは?とも推測できる。

エリザベス・デイリー

演:ジャネット・マクティア
サムの妻。子供のニコラスを失っているため子供の話に敏感。食事中にナイフを持って暴れ出す。慰めにイヌをたくさん飼っている。ニコラスの墓の前でアーサーに村の事情を全て話したが、その時に殺された子供たちに取りつかれた。

ジェローム

アーサーが協力することになった弁護士。この人物が非協力的なためにアーサーが館に行くことになった。ルーシーという娘がいるが、アーサーが館へ行ってジェネットの怨霊を刺激したせいかルーシーも死ぬことになってしまった。

ナサニエル・ドラブロウ

ジェネットの子供だがアリスに引き取られた。館の近くの沼に馬車と共に沈んで死んでしまったが、泥だらけであるため引き上げることができなかった。館では泥だらけの姿でアーサーの前に姿を現す。アーサーがサムの車を使って引き揚げたが、腐敗せず死蝋化していた。この遺体を実の母のジェネットの墓の中に埋葬してやってもジェネットの怒りは収まらなかった。

ステラ・キップス

アーサーの妻でジョセフの母。しかしジョセフを生むと同時に死んでしまったため、ジョセフは母親の顔を知らない。ラストシーンで汽車に轢かれて死んだアーサーとジョセフを迎えに来た。

宿屋の妻

宿屋運営している家の夫人。冒頭で三人の娘が飛び降り自殺するシーンが描かれるが、これはこの宿屋の娘たち。アーサーに対して「町を出た方がいい」と忠告する。

項目別評価

映画「ウーマン・イン・ブラック」評価

19世紀のイギリスの田舎村という舞台の雰囲気は心地よい。演出は完全にお化け屋敷系、いきなりビックリドッキリ系。理不尽な怨霊に沸いてくる感情は恐怖、よりも怒りが強くなってしまった。

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