ワンダー・ウーマン -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ワンダー・ウーマン

執筆日:2018年5月08日

簡単なあらすじ・ネタバレ

主人公のダイアナは前作「バットマンVSスーパーマン」で登場した謎の美女。彼女は古い写真をブルース・ウェイン(バットマン)から受け取り、それを見て微笑んでいた。
その100年ほど前、ダイアナはセミッシラという女性だけが住まう島で暮らしていた。
ダイアナたちアマゾン一族は北欧神話の存在であり普通の人間とは違う超常的な戦闘能力を持つ。自分の母や叔母に厳しくも愛情をもって育てられたダイアナはたくましく成長した。ある日ダイアナは島の近くにさまよい込んだ男性スティーブと出会う。

スティーブは第一次世界大戦を終わらせるために連合国のスパイとして活動しており、ダイアナはその戦争は戦の神アレスの仕業だと断定。アレスを倒せば戦争も終わると確信した。ダイアナは島を出てスティーブと共に行動する。ダイアナとスティーブは徐々に男女として親密になっていく。
ダイアナは西部戦線を突破してドイツ軍に潜むアレスを倒すため、スティーブその他数名の仲間と共に自ら最前線に赴く。そしてダイアナがアレスだと確信していたドイツ軍総監ルーデンドルフを打ち倒すが、それでも戦争は終わらなかった。狼狽するダイアナの前に現れたのは英国側の人間であるパトリック卿。彼はダイアナたちの協力者だったのだが、実は彼こそがアレスだった。

アレスはダイアナが「ゼウスとヒッポリタの子」であることを伝え、人間など救うに値しないと言う。しかしスティーブが自分を犠牲にしてドイツの毒ガス爆撃機を爆破したのを見たダイアナは真の力に目覚め、「人間にも希望はある。私は愛を信じる」と言い、アレスを打ち倒す。

現代。冒頭と同じく、100年前の西部戦線で撮影したスティーブと映っている写真をダイアナは見つめていた。彼女は100年前とは違い直接的に世界を救おうとする気持ちを持っているわけではなかったが、「愛だけが世界を救える」という信念を抱き、世界が平和になるまで戦うことを決意していた。

詳細なあらすじ・ネタバレ

冒頭、バットマンVSスーパーマンで登場した謎の美女ダイアナが、ブルース・ウェインからあるものを受け取っていた。それはダイアナと複数の男性たちが共に映っている写真。それを見てダイアナは微笑む。

ダイアナが幼い頃の時代。
ダイアナはその頃、セミッシラという島に住んでいた。セミッシラにはアマゾン族という女性ばかりの民族が住んでいた。ダイアナはアマゾン族の王女ヒッポリタの娘であり、ヒッポリタが作った粘土にゼウスが命を吹き込んで生まれたのがダイアナだと教えられていた。ヒッポリタの妹、つまりダイアナの叔母にあるアンティオペはダイアナを戦士として厳しく育てており、当初はヒッポリタは反対していたものの、アンティオペの強い意志に押され、やはりダイアナを戦士として育てるようになる。

ヒッポリタとアンティオペにより育てられたダイアナは強く美しく成長した。アンティオペと組手をしている時に不意に爆発的な力を発揮し、周囲を驚かせるようなこともあった。ダイアナはセミッシラに立つ塔の中には神殺しの剣「ゴッドキラー」が収められていることも聞かされていた。

そんな時異変が起きる。セミッシラの周辺には結界が張ってあるが、それを突き破って人間界の戦闘機が入ってきたのだった。それは海に落ち、パイロットは溺れそうになる。それを救出するダイアナ。パイロットの名前はスティーブといった。

スティーブはドイツの軍服を着ていたが、スティーブを追ってドイツ軍が追ってきた。アマゾン族の女戦士たちは銃にも恐れることなく弓矢で戦う。しかしその中でアンティオペがダイアナをかばって死んでしまうのだった。

全てのドイツ兵を倒した後、アマゾン族たちはスティーブへの尋問を行う。縛られると嘘をつけなくなるムチの力によりスティーブは真実を話す。今は第一次世界大戦の最中であり、スティーブはアメリカ所属の諜報員であり、ドイツに忍び込んでいた。イザベル・マルという女性博士が所持する、新型の毒ガスの製法の書かれたノートを奪い、その後ドイツに追われてセミッシラに辿り着いたといういきさつだった。
ダイアナは戦争は北欧神話の軍神アレスの仕業であり、アレスを倒せば戦争も終わるのだと確信する。
そしてダイアナは島にある塔に潜り込み、神殺しの剣「ゴッドキラー」を手にする。

ダイアナは独断でスティーブを逃がし、自分も共に外の人間世界へと飛び出すことを決意する。ヒッポリタはそれに反対することなく、「外に出ればもう二度と戻れない。それに人間の世界はあなたが救うに値しない」ということをダイアナに伝えて母としてダイアナを見送ったのだった。

ダイアナはスティーブと共にロンドンへと向かう。ダイアナはすぐにでも激戦区の西部戦線へと向かってアレスを探しがっていいたが、スティーブはまずはドイツ軍から奪ったノートを上官へ届けるのが先だとダイアナに諭す。スティーブの秘書のエッタと会った後に作戦本部へと向かうが、途中でドイツ兵に襲われる。しかしダイアナの超人的な能力によりこれを撃退する。

ようやくロンドンの作戦本部へとたどり着いてスティーブは上司にノートを渡す。その内容は新型の毒ガスの製法だったのだが、今すぐに行動を移すことはできずダイアナはやきもきする。それに触発され、結局ダイアナとスティーブは独断で西部戦線にある毒ガス製造基地の破壊を計画するのだった。
スティーブはネイティブアメリカンの酋長、諜報員のサミーア、狙撃手のチャーリーから協力を得ることができた。またイギリスの高官であるパトリック卿もスティーブたちを助けてくれると言ってくれた。

ダイアナ、スティーブ、酋長、サミーア、チャーリーの5人は目的地を目指すが、そこは激戦区の西部戦線。1年以上塹壕からドイツ軍と撃ちあっても全く先へ進めないような状態が続いている泥沼の戦地だった。ダイアナはそこで戦争の現実を目の当りにする。スティーブは「全ての人を救うことはできない」とダイアナを諭すが、ダイアナは単身で塹壕から飛び出してガントレットと盾を使って銃弾の雨を防ぎながら戦地を駆け抜ける。スティーブたちもそれに続く。
その勢いで村を解放したダイアナたち。そこでつかの間の安息を得た。ここでダイアナ、スティーブ、酋長、サミーア、チャーリーの映った1枚の写真を撮影してもらった。これこそがダイアナがブルース・ウェインから受け取った写真だった。

ドイツ兵たちが集まるパーティに単身で忍び込んだスティーブ。そこにはイザベル博士、それにその上司のルーデンドルフ総監がいた。ルーデンドルフこそアレスであると、ダイアナは見込んでいた。一方スティーブはイザベルを口説いて暗殺しようとするが、ダイアナがルーデンドルフを殺そうとしていたためにそちらを止めることを優先し、スティーブの計画は失敗する。
直後に毒ガス弾が村へと発射され、村の人間たちは全滅してしまった。ダイアナは「さっき殺していれば止められていたのに」とスティーブを責める。

ダイアナはルーデンドルフを追いかけてドイツ軍基地へと到達する。そこにはイザベル博士が作った新型毒ガス弾を積んだ複葉機があり、これを止めなければ多大な被害が出てしまう。スティーブ、首長、サミーア、チャーリーの四人はこれを止めるために動き、一方ダイアナはルーデンドルフを追撃する。

イザベル博士が作った増強剤を使ったルーデンドルフは人間離れした力でダイアナと戦うが、ダイアナはこれに打ち勝つ。しかしルーデンドルフが死んでも戦争は止まらないことを知り愕然とするのだった。結局、戦争はアレスが起こしているのではなく人間自身が起こしているのだと理解したダイアナは「母が言った通り救うに値しない」とスティーブに言うが、スティーブは「それでも信念のために行動する」と言い、爆撃機を止めるために行動する。

そこで突如ダイアナの元に現れたのはパトリック卿だった。実はルーデンドルフではなく、イギリス所属のパトリック卿こそがアレスだったのだ。アレスに向かって神殺しの剣ゴッドキラーを突き立てようとするとゴッドキラーはあえなく破壊されてしまう。そこでアレスはダイアナに真実を話す。実はダイアナはヒッポリタとゼウスの娘であり、粘土から生まれた存在などではなく、ダイアナそのものが神殺しのゴッドキラーだったのだ。

アレスはゼウスに敗北して以降、ゼウスが生み出した人間という存在が欠陥品であると考えていた。人間の愚かしさをダイアナに説くアレス。強大な力を持つアレスにダイアナは押されてしまう。

一方スティーブは毒ガスを積んだ爆撃機に乗り込み自分もろとも自爆する決死の覚悟をする。スティーブはダイアナに「君は世界を救え。愛している」と言い、自分が大事にしていた腕時計をダイアナに託した。
ダイアナがアレスに抑え込まれている間にスティーブは爆撃機もろともに自爆し壮絶に死んでしまう。

それを見たダイアナは慟哭し、同時に真の力を解放する。アレスはダイアナの目の前にイザベル博士を突き出して「さあ殺せ」と誘導するが、ダイアナはそれに抗い、「愚かな人間でも希望もある」と言ってイザベルを見逃す。
そしてアレスと最後の決戦に挑み、打ち勝つのだった。
そして第一次世界大戦は終結を迎えたのだった。

再び現代。冒頭と同じくダイアナは写真を眺めており、そしてこの写真を見つけてくれたブルース・ウェインに礼のメッセージを送っていた。
かつての大戦から100年ほどが経過した。今のダイアナはかつてのように青臭く世界を救おうなどとは考えていなかった。しかしスティーブが教えてくれた「愛」こそが世界を救うのだという信念は変わらず持っていた。
その思いを語るモノローグの中、ビルの上から飛び立つダイアナがラストシーン。

感想・評価

DCコミックスの実写化も盛んに行われている現在。しかしマーベル作品同様、主役級のヒーローが複数人登場するので作品の時系列がよくわからなくなってしまう可能性もある。一作目が「マン・オブ・スティール」で二作目が「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」で、三作目がヴィランたちが活躍する「スーサイド・スクワッド」、そして四作目がこのワンダー・ウーマンということになる。この作品は「バットマンVSスーパーマン」で登場しながらも正体が不明だった謎の美女ダイアナの正体を遅ればせながらも明かしますよーという作品になっている。バットマンVSスーパーマンの前にこの作品出してくれないと混乱するだろなんて当たり前のことを思いもするのだが、バットマンVSスーパーマンで出てきていたあの写真がどういうものなのか、それが綺麗に明かされるだけで凄くスッキリするというのもある。別作品から話が続いてなるほどなーこれがあの写真かーと遅れて理解できる、というのもなかなか映画ではないことであり、新鮮だ。

ストーリー自体はワンダーウーマンという存在の生い立ち、アイデンティティの確立までを描いたものであり、愛する人間の死が真の力を目覚めさせるなどという展開も含めて実に実に王道。
旧大戦の時代だということもあり、マーベルの方の「キャプテン・アメリカ ファーストアヴェンジャー」を彷彿とさせるものもある。

物珍しいものはないのだが、王道っていいな、と素直に思える内容になっている。何より、スティーブの存在が良いね。実に良い。
スティーブはただの人間でしかないが、自分の使命を全うするために自分の命すら犠牲にし、神であるダイアナのアイデンティティを決定づけた。ただの人間が神であるダイアナの行動原理の根底にまで影響したわけだ。そしてダイアナは100年が経過した今もその気持ちを色褪せずに持ち続けている。いいですよね、こういうなんというか道徳的な話は。いつまでも変わらないゆるぎない信念。こういう話に弱いんだよなあ。

マーベル作品と比べるとこちらはまだ走り出したばかりとも言えるわけだが、ワンダーウーマンが今後どういう形でストーリーに関わってくるのか、どういう活躍をするのか、実に気になるところ。

人物解説

ダイアナ

演:ガル・ガドット
主人公。バットマンVSスーパーマンで謎の助っ人としてバットマンとスーパーマンの助けに入っていたが、その正体は謎だったので今作で正式に明かされたことになる。女性しかないアマゾン族の姫。セミッシラという島でアマゾン族は外界と隔絶した暮らしを続けていたが、スティーブが結界内に入ってきて、スティーブンから話を聞いて外の事情を知ったことで、第一次世界大戦は軍神アレスの仕業だと確信。スティーブと共に人間世界へ。アレスだと思い込んでいたルーデンドルフを倒しても戦争が終わらず、戦争は人間自身が原因で起こっていることに気付くと「人間は救うに値しない」と一度は見限るが、自分の命を懸けて爆撃機を破壊したスティーブに心動かされて愛の神として目覚め、アレスを打ち倒す。100年後の世界ではスティーブと仲間たちと映った写真をブルース・ウェインから受け取り、懐かしんでいた。
母のヒッポリタはダイアナに「粘土から作られてゼウスが命を吹き込んだ」と教えていたが、実はダイアナはゼウスとヒッポリタの子供そのものであり、ダイアナ自身が神殺しの力を持っている。セミッシラにあった神殺しの剣というのはダミーでしかなかった。

スティーブ

演:クリス・パイン
アメリカ所属の連合国スパイ。ドイツに潜り込んで毒ガスの精製式の書かれたメモを盗み出す。追撃を受けるうちにダイアナたちアマゾン族が住むセミッシラに迷い込み、海で溺れかけたところをダイアナに救われる。戦争を終わらせるためにアレスを倒そうとするダイアナと共に行動。ダイアナの超人的な力を借りつつ西部戦線を突破していく。ダイアナがルーデンドルフを倒しても戦争が終わらないことを知り茫然とした時には「俺だって誰か一人のせいにしたい。しかし大事なのは使命を全うすることだ」とダイアナに諭す。ダイアナに対して「君は世界を救え」という言葉を残し、毒ガスを積んだ爆撃機と共に爆死。それによりダイアナは覚醒した。

ルーデンドルフ

演:ダニー・ヒューストン
エーリヒ・ルーデンドルフ。第一次世界大戦時に実在したドイツ軍人。この作品では大戦中に死んでいるが、史実では1937年まで生きていたらしい。イザベル博士からもらった増強剤を使うと人ではないような力を持ち、視聴者としても人間ではないような印象を受けてしまうが、これはミスリードであり、実はアレスではなかった。

イザベル・マル博士

演:エレナ・アナヤ
通称ドクター・ポイズン。女性。防毒マスクが効かない神経毒の製造に熱心。顔の左半分を覆うようなマスクをしているが、これは顔に刻まれた傷を隠すため。この手のキャラクターが女性科学者というのは非常に珍しいと思う。

アレス(パトリック卿)

演:デヴィッド・シューリス
イギリス所属の政治家。ダイアナとスティーブが少数で毒ガス兵器を破壊するために動くのを支援するなどするが、実は彼こそがアレスだった。ゼウスの子供だが、ゼウスの作った人間が欠陥品であることを証明したがっていた。それをダイアナにも訴えるが、ダイアナはスティーブの死により愛に目覚めたため、アレスの思惑通りにはならず、自分の妹であるダイアナと戦う。しかし強力な雷を身に受けて敗北、消滅。

項目別評価

映画「ワンダー・ウーマン」評価

話自体は王道中の王道。しかしただの人間であるスティーブが奮闘し、ダイアナの心を動かしアイデンティティを決定づける物語は感動的。バットマンVSスーパーマンですでに登場していたダイアナが映っている写真の由来が解けるのもすっきりする。今後もDCコミックスの実写映画には期待だ。

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