ダンガンロンパ霧切1巻 -凡人の感想・ネタバレ-

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スパイクチュンソフトから2011年に発売されたゲーム、「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」の登場人物である「霧切響子」が主人公ののスピンオフ作品。
一部では絶大な人気を誇るこのゲーム、いわゆる「キャラゲー」の極みとも言えるゲーム性なのだが、かく言う自分もこの世界感にはまってしまい、ヘビーなファンであるつもり。

この小説を手に取って読んでいる人間ならば当然原作のファンなのだろうから特に解説は必要はないとも思うが、一応、登場人物や世界観の解説だ。ゲームプレイ済みである前提で解説は書かせてもらうのでネタバレには注意。

霧切響子。彼女は「超高校の探偵」であり、探偵としての仕事を行うこと自体が自身の存在意義であるとインプットされているかのように行動する。これは原作で自分の能力を忘れている状態ですらもごく自然に事件の真相への探求を行っていたことからもわかる。
それで、本作品は原作ゲームから数年前、霧切が中学生だった頃の話となっている。彼女自身、登場人物が相当に多い作中でも屈指の人気なので作られたのであろう作品なのは間違いない。当然、作中での姿は背が低く幼く、「ロリ切」さんである。
そして、彼女以外の主人公がもう一人いる。それが「五月雨結」という、高校生の探偵。物語はこちらの彼女目線で語られる。ジャンルとしては推理小説なので、この二人が殺人事件を解決する物語だ。

実はこれを書いているのが2014年なのであって、1巻発売からは相当時間が経過しちゃってるわけだが、おそらくこの小説を読んだ人間が最初に持つ印象って、

この五月雨とかいう地味な奴誰だ!?霧切さん目線で書けや!

ということではないだろうか。いや、調べてないからわからないけど、自分だけじゃないよね。霧切響子が主役として銘打たれて発売された作品なのだから当然、彼女が語り部として書かれるものだと思ってたファンが大多数だと思うのだけれど、どうなのだろう。
実際、この五月雨という小説オリジナルキャラがまた、見た目も性格も地味極まりなく、正直なところ読んでていまいち好感を得られなかった。別に探偵として優れてるわけでもなんでもなく、とりえを挙げるとすれば「面倒見がいいこと」くらいなのだよな。また、クールな霧切がこの五月雨を「お姉さま」と呼ぶようになることにもどうにも違和感があった。中学生の時分とはいえ、そんなキャラかなあ?と疑問を感じずにはいられなかったのである。

しかしこういうのは慣れなのだな、と読み進めていくうちに思い知ることになった。ごく平凡な感性を持つ五月雨が霧切に振り回されっぱなしながらも、要所要所では年上のお姉さんらしく面倒を見てあげるのはほほえましくある。もっとガッチガチに冷たいタイプなのかと思えた霧切に関しても、五月雨に対して少しずつだが心を開いていく。ゲームでの高校生での彼女は徹底して冷静で、感情を露にすることもほとんどないが、こんな時期があったのだなあ、となんだかほんわかしてしまうのは確かだ。…しかしまあ、原作のファンであればこれが不穏な予兆であるとおのずと感じてしまうのも確かであろう。

それは、原作ファンであるならば彼女、霧切響子の手袋の話を思い出すからだ。彼女は原作ゲームにおいて黒い手袋を四六時中身につけているのだが、これは酷いやけどを負ったものであり、甘かった自分への戒めであるのだと、述懐している。そしてこの小説に登場する中学生の霧切の手にはまだ手袋は存在しない。つまりこの作品において火傷の由来が明らかになるはず、と誰しもが思うところだ。
一言で言うと、「まだあどけない心を持っていた霧切が火傷を負い、甘さを捨てるまでの物語」である、と、原作ファンの読者は予想するはずだと思う。これを書いている時点でも3巻は発売されていないので分からないのだが。そうなると、物語通して相方となる五月雨に若干の死亡フラグが立ち気味だ。1巻ではそれは特段目に見えるものではないが、2巻においてはこのフラグが徐々に見え隠れし始める。
霧切はどういう経過において火傷を負うのか(そもそも小説でも負わない可能性もありはするが)、五月雨は死んだりしないのか、その当たりがこのシリーズにおいて最も注目されるところであろう。

とはいえジャンルは推理小説、大部分は謎の組織にそそのかされた人物が起こす殺人事件の究明をする二人が描かれるのであって、そして1巻時点ではまだ物語の全貌が明らかになることはない。
わかることと言えば、復讐をしたがっている人間に対してそのチャンスを与える何か巨大な組織が存在しているという点。原作ゲームでは世界が大変なことになっているのだが、この作品のこの組織がそこらへんにつながっていくのかどうかというのも、原作ファンならばまた気にかかることであろう。

推理部分に関してはそれこそ自分は造詣が深くないものでこのトリックが推理小説ファンが舌を巻くものなのかとか斬新なトリックであるかというのは分からない。ただ個人的には普通に楽しく読めた。
探偵図書館、なんて突拍子もないものが出てくるあたりで若干違和感を感じたが、考えてみれば、元々がサイコポップで荒唐無稽気味な作品であるのでこれくらいは別に何ともないかとも。

1つの事件を解決した二人は、キャリアのある七村という探偵と接触し、「黒の挑戦」という殺人ゲームを開催する謎の組織に近づいていこうとする、というところで1巻は終了だ。

いつも笑顔だった彼女が笑顔を失ってしまったわけとは──?(嘘)
昔も霧切さんはあんまり笑わないし笑顔を失ったわけでもないです。「XMEN フューチャー&パスト」の感想書いた流れで思いついた絵。

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