ダンガンロンパ霧切5巻 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ>ダンガンロンパ霧切5巻

執筆日:2017年03月16日

関連作品の感想

ストーリー・ネタバレ

今回も前巻に引き続き、龍造寺月下からの挑戦として五月雨結に贈られた12の事件を五月雨、霧切、さらにそれに協力してくれる八鬼弾、水井山幸、サルバドール・宿木・梟、それにリコこと御鏡霊たちが解決するというシチュエーションが続くため、何度も場面転換を繰り返す。流れをシーン別に分けて解説。4巻解説も参照。見出しは、シーン番号:場所(担当探偵)の表記。

シーン1:リブラ女子学院(五月雨結)

4巻ラストで危機に陥った霧切ではなく、最初の場面は五月雨が担当するリブラ女子学院での事件現場。五月雨は龍造寺が五月雨に対して「自分と似ている」と発言したことを思い出し、また、五月雨に与えた12の挑戦の意図を考えていた。リコが御鏡霊であることをあぶり出すことなどが目的だと4巻の時点で分かってはいるが、五月雨はさらに深い理由があるような気がすると感じてもいた。

2人の女生徒の「灘月夜」と「遠秋津菜砂」は棺に閉じ込められていた状態であったため困惑している。灘はヒステリー気味の女生徒であるが、遠秋は落ち着いており、話してみると実に利発的なため、五月雨は「自分よりも探偵に向いているかも」とさえ思う。二人が棺に閉じ込められていた西側の円形の部屋とは対照位置にある東側の円形の部屋には被害者「竹崎花」の遺体が横たわっていたはずだが、五月雨が2人の女生徒を連れてそこに行くと、なぜか遺体は忽然と消えていた。さらにその部屋の扉が開くなり、東側の部屋から出ることができなくなってしまい、さらに五月雨、灘、遠秋の3人は困惑する。しかし五月雨は謎を解いてみせると自分を奮い立たせようとする。

シーン2:BAR「グッドバイ」(八鬼弾)

シャッター街の一角にあるBARグッドバイという現場を担当したのは探偵ナンバー666の八鬼弾。彼は相棒である「大葉良」、それにBARの不動産管理者である「洗群三」を連れて現場へ向かっていた。その途中、洗の携帯に着信が。すると「木玉勝実」という人物が助けを求めていた。彼はまさにBARグッドバイにいるという。救出するため、洗が持っていた鍵を使ってグッドバイに進入する八鬼。しかし木玉はまさに今、何者かに背中を刺されて死亡してしまう。しかし店内には誰もおらず、明らかに密室状態だった。犯人は裏口から逃げたに違いないと考えて八鬼は追いかける。そこで現れたのはリコだった。彼は「ここから先に進まないでください」と八鬼に忠告するが、それを聞かず八鬼は夜の街路を突き進もうとする。

シーン3:中世西欧拷問器具博物館(水井山幸)

中世拷問器具博物館の事件を担当したのは探偵ナンバー527の女性、水井山幸。彼女は本職は一級建築士であり、探偵は成り行きで始めたという眼鏡で和服の女性。彼女が事件現場へと足を運ぶとすでに警察が現場を捜索していた。しかもすでに何らかの事件により死者が出たという。封鎖されていたわけではないため水井山は博物館の敷地へと入り、捜査を開始する。死者というのは博物館それ自体ではなく、博物館から広い中庭を経て位置するプレハブ小屋での家事による焼死というものだった。被害者は大学教授の「井戸柿福寿」。現場にいた警察により退去を余儀なくされた水井山だったが、博物館と小屋の間の中庭の中心には首なしのアイアンメイデンがポツンと立っているのを確認することはでき、それが事件の鍵になると水井山は予想した。

シーン4:リブラ女子学院(五月雨結)

五月雨結、灘七夜、遠秋津菜砂の3人が学院の一室に閉じ込められたまま数時間が経過してしまっていた。灘はトイレに行きたい、喉が渇いたなどと喚くが、聡明な遠秋は五月雨と共に事件の謎を順序立てて考えてくれた。そのうちに五月雨はこの学院の名前が「リブラ」つまり天秤であることに着目する。そしてついにトリックが分かったと声を上げた。

シーン5:BAR「グッドバイ」(八鬼弾)

シーン2では犯人を追ってBARを飛び出した八鬼。しかしこのシーンでは、木玉が死んだこと、そしてなんとその第一発見者の八鬼が鈍器で殴られて死亡したことを淡々とニュース番組が伝えるのみで終わる。

シーン6:中世西欧拷問器具博物館(水井山幸)

水井山は聞き込み捜査をする。焼死した被害者である井戸柿のゼミ生である「真藤刀」という男子学生をステーキハウスに呼び出して話を聞くと、死亡した井戸柿は学生のレポートを丸写ししたり、共同研究者の研究を独り占めするなどしていたという。さらには、その共同研究者を自殺に見せかけて殺したという噂さえもあるという。真藤からさらにその共同研究者の知り合いを紹介してもらうことに。その人物との待ち合わせ場所へ向かう途中、水井山の前にも、リコが現れて「余計なことをしないでください」と忠告を残した。

その知り合いというのはその研究者(女性)の彼氏である「烏羽刈安」という男性だった。彼は明らかに井戸柿に恨みを持っている様子であり、水井山は烏羽が犯人であると確信をする。
その後、警察がいなくなった夜の事件現場へ水井山は向かった。もうほとんど事件のトリックも解決しつつあった。確証を得るため強引に博物館に入るなどをした水井山だった。博物館内部にあったのは、5つの首のない西洋の鎧だった。

シーン7:不明(霧切響子)

双生児能力開発研究所の事件トリックは見抜き、犯人も「堤塔矢」であると見抜いていた霧切だったが、4巻ラストで、堤が捨て身で車を崖にダイブさせたことで危機に陥っていた。霧切は意識混濁のままに堤に拘束されてしまう。そして堤は探偵役である五月雨に対して、霧切を人質とした交換条件を飲ませることを決意する。「霧切の命を助けて欲しければ自分を見逃せ」と要求するわけだ。堤は「あの場所なら安全だ」と考え、霧切を拉致し移動を開始した。

シーン8:リブラ女子学院(五月雨結)

リブラ女子学院でのトリックは解決した五月雨は灘、遠秋に対して解説を始める。つまり、リブラの名の通り、建物は天秤のような構造になっていたということだ。最初に五月雨が目を覚まし、遺体があった場所東側の円形の部屋、それに灘、遠秋の2人が棺に入れられていた西側の部屋は天秤として対になっており、重い方が地下に下がり、その場合「地下に沈んだ部屋」と「その上の空間」の2つの空間が存在することになるという仕組み。3人が出ることができなくなったのは、3人の重量により部屋が沈み込み地下になってしまったからだ。地下に入ってしまった部屋は扉を開けてもそこにあるのは壁であるため、扉もロックされてしまう。この仕組みを利用して、自分たちを閉じ込めた上で、西側の天秤の部屋に隠れた犯人は悠々と脱出したというわけだった。

しかし、トリックが分かったとしても3人が閉じ込められた状況が変わるわけではなかった。この状況から脱出するには西側の部屋に3人の体重を足した以上の重量が加わることが必要。どうにもできない状況が続いていたが、突如3人がいる天秤部屋が地上に上がり始める。そして扉を開けて現れたのは、4巻で枯尾花学園の事件を解決した後、現れたリコのヘリに乗ってどこかへと移動した「サルバドール・宿木・梟」だった。なぜここに宿木が現れるのか五月雨は全くわからないが、とにかく部屋を脱出できたことに安堵する。

しかし部屋から出た五月雨が目にしたのは、突如建物のエントランス側から現れた黒マントの人物だった。それはここで目を覚ました時に五月雨の前にいた人物。そしてその黒マントは宿木の頭を鉄パイプで殴りつけ昏倒させる。
五月雨が観念しろと黒マントに言うが、顔を表したその黒マントの正体はなんと、中世西欧拷問器具博物館を担当し、五月雨の味方であるはずの水井山幸だった。彼女は釘打ち機を五月雨に向けて突きつける。

シーン9:BAR「グッドバイ」(水井山幸)

場面は切り替わり、八鬼がBARを飛び出してリコを見かけ、犯人を追うために駆けだした後。八鬼が遭遇したのは水井山だった。八鬼はなぜ水井山がここにいるのかを疑問に思うが、とりあえずBARグッドバイであった事件の概要を話す。すると、それを水井山は話を聞いただけでトリックを解いてしまう。簡単に言えば、八鬼がBARグッドバイの扉を開けた時に、犯人が仕掛けたロープを使った罠が作動し、被害者である木玉勝実の背中に毒塗りのナイフが刺さるというものだった。そして犯人が不動産会社の人間の洗群三であることまでも、水井山は見抜いていた。それを聞いて八鬼は感心し、まだ現場にいるはずの洗の元へと戻ろうとするが、その八鬼に対して水井山は、背後から鉄パイプで殴りつけ殺害してしまう。シーン5の時点で八鬼が何者かに殺されたことは分かっているが、この犯人はなんと水井山だった。

シーン10:リブラ女子学院(五月雨結)

場面はリブラ女子学院に戻る。仲間と思っていた水井山がなぜこんなことをするのか問いただす五月雨。水井山はこのリブラ女子学院の被害者である「竹崎花」とは因縁があるらしかったために殺害したらしい。そしてさらになぜ水井山がこの殺人だけではなく、八鬼を殺害したりして五月雨たちを妨害するというと、龍造寺を崇拝しているかららしい。彼女は「探偵としても、犯罪被害者救済委員会としてもまだ引退してほしくない」と考えているためにやっているらしい。一級建築士である水井山は「美しいカタチ」に魅せられるという性質があり、龍造寺から読み取れる信念はとても美しいカタチをしている。そのために龍造寺の信奉者となっているのだ。そして水井山は「この世で最も多くの人間を救ってきた英雄を誰かが救おうとしたか?」と言う。龍造寺も誰かによって救われるべきだと言い、それを為したいのだというのだ。

五月雨と水井山が問答している間に、いつの間にか水井山が殴りつけた宿木が消えていた。彼の身体は灘と遠秋の2人の女学生が引きずって、さきほど五月雨、灘、遠秋の3人が閉じ込められていた天秤の部屋へと連れて逃げ込もうとしていた。水井山は宿木たちが無事に逃げ込んだことを忌々しく思うも、釘打ち機を五月雨に突きつけて「このまま時間切れまでここにいてもらう」と脅しをかけた。
だが、そこで突然ある人物が現れる、それは安保五郎、ワン・エリー、簪一耕助の3人だった。彼らは4巻で宿木が解決した枯尾花学園の事件の登場人物であり、宿木と共にヘリに乗った3人。彼らの力により水井山は無力化され、五月雨たちはようやく事件から解放された。
この3人組はさきほど宿木が五月雨の元に現れる直前に西側の天秤部屋と入ったために五月雨たちがいる天秤部屋が地上に上がったのだった。そして東側の天秤部屋に入った宿木、灘、遠秋の3人を救出し、ようやく一連の事件は解決となったのだった。

非日常編

五月雨は自分の学園寮へと戻り休んでいた。
4巻で決めていた通りならば正午に八鬼、そこから十五分間隔で宿木、水井山、霧切から連絡が来るはずだった。八鬼からは連絡がなく、さらに昼のニュースで八鬼が死んだことを五月雨は確認する。宿木が連絡してくるはずの時間にはちゃんと着信があった。出てみると、相手は遠秋だった。重傷を負った宿木に代わって電話をしてきたのだという。彼女から、枯尾花学園の事件は宿木の手により解決したこと、そして宿木は死んだ相棒である魚住のために探偵としての戦いを辞めるつもりはない、ということを伝えられた。

その後、逮捕された水井山からは連絡が来るはずはないと思っていたが、まさかの着信があった。警察署からかけているのだという。こんなことができるのも龍造寺の力だ。五月雨に対して自分が解決した中世西欧拷問器具博物館とBARグッドバイの事件の説明を五月雨にする水井山。拷問器具の方の事件は、簡単に言えば「首のないアイアンメイデンの上に氷を置いて光を収斂させて発火させる」というトリックだったことがここでわかる。それらを告げるともう二度と会うこともないと五月雨に告げ、水井山は電話を切ってしまった。

次はいよいよ霧切から連絡が来るはずだが、時間をいくら過ぎても携帯はならなかった。
霧切に何かがあったのだと分かり、居ても立っても居られなくなった五月雨は外へ出た。そしてそこで出会ったのはリコだった。
彼はエキドナ号の事件はあっけなく解決しており、その後何をしていたのかというと、他の事件を見守っていたのだという。担当外の事件に手を加えるのはルール違反かと思って手は出さずにいたのだという。宿木、八鬼、水井山それぞれの前に現れたのは、自分の担当の事件は簡単に解決してしまっていたからだった。
それはさておき、さらにリコは霧切が双生児能力開発研究所の事件の犯人に誘拐されてしまったことも知っていた。そしてその犯人、堤が霧切をどこに連れていくかと推理したところ、「龍造寺の城である」という結論に達した。そうして五月雨は、リコと共に以前龍造寺と会った彼の城へと向かうのだった。

龍造寺の城に到着すると、そこには龍造寺が召し抱えるたくさんの子供がいた。彼らから話を聞くと、龍造寺は留守であり、堤は霧切を連れて確かにこの城に立てこもっているのだという。また、この城にはリコが事件発生前に捕らえた事件の犯人5人が監禁されていたが、堤はその5人を解放もしたという。この5人もまた堤と同じようにまだこの城の中にいた。

だが一度はリコに簡単に捕らえられた彼ら、この場にはリコがおり、またもリコの手によりあえなく無力化されるだけだった。リコが彼らの相手をしている間、五月雨は堤と霧切がいるという5階へと向かった。
そこに確かに堤、それに拘束された霧切もいた。シーン7で企んでいた通り、堤は五月雨に対して霧切の命と堤の自由を天秤にかけた交換条件を持ちかける。五月雨は迷うことなく霧切の命を救うことを選ぶ。そして堤は「龍造寺は留守などではなく、1階の隠し部屋にいる」と言う。そこへ行き探偵役の五月雨が降参したことを伝えに行くぞと五月雨、霧切と共に移動を開始する。しかしそこに現れたリコはこの展開には納得がいかないと言い、あっけなく形勢は逆転してしまう。どちらにせよ龍造寺には会う必要があると考え、五月雨、霧切、リコ、堤の4人は隠し部屋へと向かったのだった。

龍造寺の隠し部屋にあったもの。それは龍造寺月下の死体だった。彼は何の病気かはわからないが重い病を抱えており、もう先は長くはないことを悟っていた。リコによれば、実は龍造寺は元々警官だったのだが、刑務所から脱走した囚人により妻と子を殺害され、以来、警官をやめて探偵になったのだという。
龍造寺が持っているリモコンのスイッチを押すと、彼が遺した映像が再生され始める。そこで龍造寺は五月雨に対して「君が選んだ道は自分が進めなかった道だ」と言い、五月雨の精神性とゲームの勝利を認める。またここで五月雨は、12の事件は全て星座になぞらえられたもので、犯人の星座は全て事件のモチーフと一致していることを知ったのだった。

さらにリコに対してのメッセージも流れ始める。「白い封筒を選べばリコは以後、龍造寺月下として自分に成り代わり生きていくことになる」が、「黒い封筒を選べば犯罪者救済委員会にリコは敵として認知される」という選択を迫るものだった。これこそが密室十二宮の真の目的だった。つまり、龍造寺は自分の後継者としてリコがその立場を継いで欲しいと思っていたのだ。

リコがその選択に決断を下す前に、隙を見て堤が隠し持っていたデリンジャー銃を五月雨に突きつけた。本当に撃てるのかと言う霧切に対して躊躇なく発泡し、霧切は左手を負傷してしまう。五月雨と堤の距離が近いためにリコですらも手が出せない状態となったが、そこでどこからか銃弾が飛んできて、堤の眉間を撃ち抜いた。

そして龍造寺の家の壁を破壊して出てきたのは戦車だった。さらに中から現れたのは、最後のトリプルクラスゼロ探偵、ジョニィ・アープだった。彼は「ルール違反者の処罰完了」と言う。そしてリコに対して保安官バッジを投げつけて「自分についてこい」と言う。突如現れた第三の選択。なんとリコはそれに乗ってしまう。ジョニィ・アープもまた、龍造寺月下、新仙帝と同じように、犯罪者救済委員会に属する人間。それについていくということはリコまでもが犯罪者救済委員会に入ることを意味している。そのためリコに対して霧切は「私たちと敵対することになるわ」と言うが、リコは「それが一番楽しみなんじゃないですか」と言い放った。そしてジョニィは霧切、五月雨に対して勝負をしようと言い残し、何かが入ったケースも残しておく。それを開くとそこにはスナイパーライフルが入っていた。

日常編

どこかの空港に老紳士が現れた。タクシーに乗ると彼は「面白い顔を作れるようになったじゃないか、新仙」と言い、変装した姿の新仙を見破った。それに感心した元トリプルクラスゼロ探偵の新仙帝は「我々とは無関係の未解決密室殺人事件が二週間前に発生している。これをどちらが先に解決できるか競争しませんか?」と持ち掛けた。それを老紳士は「いいだろう。準備運動にはちょうどいいかもしれん」と言って承諾する。老紳士の正体、それは霧切響子の父方の祖父、「霧切不比等」だった。そうして新仙帝と霧切不比等がその殺人現場へと向かったところで5巻は終了。

感想・評価

「密室十二宮」と銘打たれた4巻から続く12の事件は今回で全て解決となり、またトリプルクラスゼロの一人である龍造寺月下が死亡。五月雨、霧切ペアはトリプルクラスゼロのジョニィ、そしてついに敵に回ってしまったリコとの対決は不可避、さらにトリプルクラスゼロと対等の存在であると思われる霧切不比等が因縁の相手である新仙帝と対峙。この世界では天上人とも言えるトリプルクラスゼロとの真向からの戦いがついに間近ということで、まさに風雲急を告げるといった今後が予感されるところで5巻は終了だ。

5巻の見所といえば、眼鏡探偵の水井山幸の存在か。
十二星座になぞらえているところまでは前巻時点で予想がついたものではあったが、仲間だと思っていた水井山がまさかの犯人側であり、さらにはそれにとどまらず、龍造寺を支援するために引っ掻き回そうとするというのは完全に予想の外だった。そもそも前巻で宿木、八鬼、水井山に対して五月雨&霧切が助力を得ようとしたのは「一度、黒の挑戦に巻き込まれた探偵は白だろうと思われるから」だったためそこは覆られないだろうと安心していた。しかしまさか水井山がむしろ犯人側の人間だったとは。

五月雨たちの協力者の残る2人、八鬼、宿木に関して。
八鬼は水井山によりあえなく死亡、宿木は重傷を負いながらも生存だ。八鬼は別に悪いことをしたわけでもないし不憫なのだが、扱いはまあ妥当という感じだろうか。4巻で宿木、水井山、八鬼が協力者となったところで、やはりどう見ても一番頼りにならなそうなのは八鬼だった。だってリーゼントみたいな頭してるし、クレバーに事件を解決しそうにはないもんなあ。きっと八鬼の知り合いの知り合いの知り合いくらいには大和田がいそうだもんなあ。なんて思ってしまった。
それは想像でしかないが、ファンサービスとして八鬼の知り合いの「大葉良」がゴスロリギャンブラーにギャンブルで巻き上げられたという話をする場面がある。霧切が中学生時点で生粋の探偵であるように、あの人も中学生で凄腕ギャンブラーだったようです。

久しぶりに登場したと思ったら途端に水井山に頭カチ割られる宿木にも焦ったが、こちらは生存しててよかった。そういう目に遭っても「魚住のために戦い続ける」と五月雨にわざわざ伝える熱い男。その無暗に皮肉屋っぽい見た目に反して最後まで本当に熱い男だった。五月雨も、彼が最後まで味方でいてくれたことには非常に感動している。1巻から何度も探偵の汚いところを見てきて、半ば失望していた五月雨にとって彼の存在はある意味大きかったんじゃないだろうか。

巻が進むにつれて結お姉さまには破滅を思わせる不穏な描写ばかりが目立ってきたが、今回は、龍造寺から「君は私が歩けなかった道を歩き始めた」ということを言われるのもあり、むしろそれを払しょくしたような印象さえ受ける。ただ、霧切が誘拐されたと聞いた時にはまた妹のことを思い出して焦燥しているし、何よりやはり霧切草での霧切さんの態度もあって…ね。どうしたって不穏さを完璧に消すことはできないだろうが、それでも結お姉さまにはひたすら頑張ってほしいと思うばかり。
今回、当初は色々ともめてた二人の女生徒の灘、遠秋の二人とは最終的に打ち解け、特に遠秋との電話では彼女に憧れを抱かれもしている。相変わらず飾らない性格が好感をもたれるのか人たらしっぽいところは健在であり、また今回は初めて自力でトリックを見破るのもあり、一段と成長したようにも感じられた。

密室十二宮の概要は4巻感想でも掲載したが、その更新版を以下掲載。解決/未解決としていた「状態」の項目は削除し、代わりに「犯人」の項目としている。密室12宮、とはいうもののリコが簡単に解決してしまった事件が6つもあるため、実質的に描写された事件は半分の6つのみ。

黒の挑戦の場所 凶器 トリック その他 担当した探偵 犯人 犯人誕生日 犯人星座
BAR「グッドバイ」 ナイフ、カリブドトキシン、ロープ 密室 - 八鬼弾、水井山幸 洗群三 11月1日
中世西欧拷問器具博物館 アイアン・メイデン 密室 - 水井山幸 烏羽刈安 8月30日 乙女
武田幽霊屋敷 どうたぬき 密室 ゴムバンド 霧切・五月雨 杜若こりす 12月8日 射手
黄泉水族館 氷塊 密室 - 御鏡霊(リコ) 朽木嘉永 2月10日 水瓶
黄泉水族館 硫酸 密室 ガスバーナー 御鏡霊(リコ) 朽木乙子 2月25日
枯尾花学園 ろうそく 密室 - サルバドール・宿木・梟 打田透 5月5日 牡牛
音張島 ギター 密室 スピーカー 御鏡霊(リコ) 梁弘法 12月29日 山羊
豪華客船「エキドナ号」 密室 - 御鏡霊(リコ) 嶋白男 8月1日 獅子
リブラ女子学院 鉄パイプ 密室 - 五月雨結 水井山幸 9月29日 天秤
沢目鬼自然会会館 丸太 密室 羊皮紙、宝石 御鏡霊(リコ) 朧竜虎 4月13日 牡羊
大望洋館 大バサミ 密室 - 御鏡霊(リコ) 熊野聖果 7月1日
双生児能力開発研究所 ナイフ 究極の密室 鎖、南京錠 霧切響子 堤塔矢 6月12日 双子

登場人物・キャラクター解説

五月雨結

リブラ女子学院の事件を一人担当。事件に巻き込まれた聡明な性格の遠秋津菜砂の助けもあったとはいえ、5巻にして初めて事件トリックを単独で見破ることになった。龍造寺から「似ている」と言われていたのが不穏ではあったが、少なくとも今回はその龍造寺自身から「自分とは違う」という趣旨のメッセージを受け取り、危うさは若干持ち直した感がある。しかし「連れ去った」という言葉を聞いて妹に関するトラウマを刺激される場面は今回も存在する。

霧切響子

4巻ラストで気を失い、犯人である堤に拉致されて龍造寺の城に監禁されてしまう。活躍の場はこの5巻では全く存在しない。無論のところ探偵の能力自体は申し分なしなのだし、合気道を習得しているため五月雨などよりは戦闘能力も上のはずだが、リコのような非現実的なものではなく、今後も危ない場面はたびたびありそうではある。今回、左手を銃弾がかすめるという描写があり、ついに因縁の手の怪我の描写が来るか?と思わせる。が、手袋の下の怪我は「火傷」だったはずだし、描写からすると今回の怪我はそれほど重症ではなさそう。じゃあこの怪我の上になんらかの理由で火傷を負うのかと思うと痛ましい。今回は12すべての事件を解決したと判った時に五月雨と共に飛び跳ねる場面がある。その前には五月雨に抱き着くシーンもあるが、これくらいならもうおなじみという感じである。ちなみにおなじみの折り畳みピンナップでもお姉さまと抱き合い、胸に顔をうずめている。
2人の絆はもうすっかり強固なものとなっているが、これが強まれば強まるほど、あの手袋の存在がどうしても引っかかってしまう。

御鏡霊(リコ)

4巻で宿木のところに現れた時点でほとんどわかっていたことだったが、やはり予想通りに自分の担当であるエキドナ号の事件は簡単に解決していた。前巻では宿木、今回は八鬼、水井山の前に姿を現す。あまりに難なくに自分の担当事件が終わってしまったために時間を持て余していたようだ。八鬼に対しては「ここから先に進まないでください」、水井山には「余計な事をしないでください」と忠告しているが、これはつまり、八鬼に対しては「ここから先に進むと水井山に殺されますよ」、水井山に対しては「龍造寺の味方をしてゲームの邪魔などをしないでください」と言っていたことになるのだろう。霧切がさらわれたことも知っていたため、すべての現場の事情を把握していたことになるのだろう。分身の術でも使ってるのかという身軽さだ。
それだけではなく龍造寺の城ではスコップで銃弾を防ぐなどというような非常識かつ圧倒的な戦闘力も見せつけ、縦横無尽の活躍を見せるが、「霧切、五月雨と敵対するのが楽しみだから」という子供じみた理由(子供なんだけども)でジョニィ・アープの誘いに乗ってしまい、ついに五月雨、霧切とは袂を分かつことになってしまう。トリプルクラスゼロのコンビに宣戦布告された主人公2人の行く末やいかに。

水井山幸

この5巻での主役はある意味この水井山になるか。「美しいカタチ」を好む一級建築士であり探偵でもあるが、龍造寺に心酔し、彼を勝利させるために五月雨の邪魔をしようとする。リブラ女子学院の犯人役であり、ここで五月雨たちを閉じ込めた状態でBAR「グッドバイ」へ行ったりもしていたらしい。感情の波は少ない和服眼鏡美人といういで立ちだが、よく転んで眼鏡を落とすドジっ子属性持ちでもある。この水井山は「龍造寺も救われるべき」と考えていた。

八鬼弾

元々はギャンブルを好む荒くれ者だったが、探偵として活躍することはギャンブルよりも胸躍ることだと感じ、探偵となったらしい。しかしあまり頭が切れる方ではなく、最も金額の低い案件であるBAR「グッドバイ」の事件を解くことができなかった。代わりにそれを聞いただけで解いてしまった水井山に感心するが、直後、わけもわからず水井山に撲殺されてしまう。過去は知らないが少なくとも現在はギャンブルからは足を洗い、悪徳探偵というわけでもないのに理不尽に殺されてしまい不遇。この八鬼の後輩の大葉という人間もギャンブルを好んでいるらしいが、あのセレスティア・ルーデンベルクと勝負して完敗したらしいことを口にする。

サルバドール・宿木・梟

なんとも素敵な名前をしている腕利きの探偵。4巻では単独で事件を解決して活躍したが、今回は閉じ込められていた五月雨の元へ現れるなり水井山に頭を殴られて昏倒、そのまま入院コース。しかし八鬼とは違い生存。遠秋を通して五月雨に「彼女(2巻で死んだ相棒の魚住絶姫)のために戦い続ける」というメッセージを残す。今回で登場は最後だろうが、最初から最後まで株を落とさなかった正義の探偵。

遠秋津菜砂

五月雨の担当したリブラ女子学院の事件に利用された女生徒その1。赤毛のボブヘアー。灘月夜とはクラスメイトで、百合百合しい関係。灘からはナズと呼ばれ、五月雨もナズちゃんと呼ぶように。灘とは対照的に聡明な性格で、論理的に五月雨とトリックについて意見を交わし、解決のため協力する。五月雨は「自分より探偵に向いてるかも」と言うほどに利発的な人物。事件後、宿木の代理として五月雨に電話をし、そこで探偵を目指したいと発言する。赤毛ボブで百合っぽいというと小泉を連想させるものがある。

灘月夜

五月雨の担当したリブラ女子学院の事件に利用された女生徒その2。遠秋とは対照的にヒステリー気味で、ほとんど役に立たず、トイレ行きたい飲み物欲しいと喚くばかりだった。遠秋には友情以上の情を持っている百合百合しい関係。閉じ込められる時間が長くなりにつれ精神がおかしくなりかけていた。しかし最後には重傷を負った宿木を助けてほしい、と言いながら、遠秋と共に五月雨に泣きつく。性格も口も悪く、友人に過剰に依存しているというキャラ付けから、遠秋の存在も合わせて西園寺を思わせるものがある。もしかしたら意図的なものなのかも。

堤塔矢

双生児能力開発研究所の犯人で霧切にトリックも自分が犯人だということも見破られていたが4巻ラストで強引に窮地を脱し、霧切を龍造寺の城に拉致監禁する。密室十二宮の犯人の中では、水井山を除けば最も食い下がって五月雨たちを苦しめはしたが、最終的にはジョニィ・アープに狙撃されて死亡。双生児能力開発研究所で双子を殺したのもそいつらに妻を殺されたからなのだから、考えてみればかなり哀れな人物ではある。しかし最後にリコの代わりに龍造寺に成り代わろうとするのはもはやただの欲望からの行動だしいくらなんでも分をわきまえろって感じだったが、当然の如く死亡。しかし彼は双子を殺したことでとりあえず恨みは晴らしているので、事件を起こすことなくリコに捕らえられた5人などと比べれば、考えようによっては扱いはマシなのかもしれない。デリンジャー銃で霧切の左手の甲を撃ち、負傷させる。

龍造寺月下

トリプルクラスゼロ探偵で五月雨に密室十二宮の黒の挑戦を与えた人物。重い病に侵されており、五月雨たちが発見した時にはすでに死亡していた。今回明らかになったのは、元警官であること、犯罪者に妻と子を殺されてから探偵になったこと、そして五月雨は自分とは違う道を歩み始めたと認めていたこと。そして、御鏡霊ことリコに対して自分の名を継いで欲しいと願っていたこと。密室十二宮はリコをその後継者に相応しいかを図る最終試練も兼ねていて、それが真の目的でもあった。しかしリコはというとその遺志は「退屈なもの」だと断じてしまい、ジョニィと共に行く道を選んでしまう。結局龍造寺の後継者の件はそっちのけになってしまったが、この件が今後どういう形でか関わってきそうな気もする。

ジョニィ・アープ

ついに現れた最後のトリプルクラスゼロ。ずいぶん豪快かつエキセントリックな性格のようで、堤を換気扇を通して狙撃するというゴルゴ並の狙撃をした直後戦車に乗って登場する。霧切に「long time no see」と言う。1巻で霧切の発言として「彼に銃の撃ち方を教わった、彼が私を覚えているかはわからない」というのがあったがちゃんと覚えていたらしく、二人は顔見知りだ。おなじく1巻の霧切の発言から、唯一日本において銃の携帯を許されている探偵で、日本での肩書は「法執行官」ということになるらしい。現れるなりリコを勧誘し、さらには五月雨と霧切に対して勝負をしようと言い、スナイパーライフルの入ったケースを五月雨&霧切の元へと残す。それを使って何をするつもりなのかは不明だ。

霧切不比等

絶対絶望少女では霧切響子の縁者として塔和シティに囚われていた要救助民。ダンガンロンパ霧切においては2巻終盤で孫に電話越しに新仙の存在を示唆、忠告をしたこと程度でしか登場していなかったが、5巻ラストでまさかの登場。ロサンゼルスにいたが、日本に戻ってきたらしい。五月雨、霧切がジョニィ、リコの相手をするので、残る新仙の相手は、新仙と因縁のあるこの霧切不比等がするということだろう。探偵図書館の創設に関わっている人物で、実力はまず間違いなくトリプルクラスゼロと対等。ダンガンロンパ十神では、おなじく要救助民である十神の執事であるアロシャイス・ペニーワースの活躍が描かれたが、このダンガンロンパ霧切においてはこの霧切不比等の活躍が描かれることになりそうだ。孫の響子同様、将来的に生存していることが確定しているので、おそらく命の危機に見舞われるようなことはないだろう。。

凡人の感想・ネタバレ>ダンガンロンパ霧切5巻