ディファイアンス 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ディファイアンス

執筆日:2018年1月15日

あらすじ・ネタバレ

1941年のベルロシア(現ベラルーシ)でのナチスのユダヤ狩りから逃げる、両親を失ったユダヤ人の物語。

長兄トゥヴィア、次男ズシュ、三男アザエル、四男アーロンの4人兄弟は森を進んで逃げていた。
逃亡中、森に棲んでいる父の友人コスチュクが匿ってくれた。ここで、トゥヴィアたちの両親を殺したのは警官のベルニッチだと言われた。元々コスチュクのところにいたユダヤ人の女性、老人らが同行する事になった。この中にはかつてトゥヴィアの教師だったハレッツという老教師もいた。

トゥヴィアはこの警官の家に行って拳銃を突きつけ復讐する。ベルニッチに加え、息子ら2人も殺害。「私も殺して」と懇願する妻は放っておいた。

トゥヴィアはズシュに「これ以上連れを増やすな」と忠告され、「わかってるこれきりだ」と答える。
しかし直後、トゥヴィアは何人ものユダヤ人を連れてきてしまう。この中には元雑誌記者イザックや従姉の息子のラザールもいた。呆れるズシュ。
さらにホロディッシュから北というペレツとヤコブと遭遇する。ホロディッシュでは3000人も殺されたという。ズシュの妻と子はホロディッシュにいたが、両方が死んだことを知った。ズシュは絶望し、「なぜ俺たちだけが生き残った?」と泣きながらトゥヴィアに問いかけた。

ペレツ&ヤコブの話でロシア人が武装組織を結成していることを知る。ズシュは復讐に萌え、トゥヴィアの制止を聞かず、それに参加しようとする。結局トゥヴィアも復讐に参加することになった。 夜間、道を通るドイツ兵を強襲。バイクに乗っていた者と車に乗っていた数人を殺したが、直後もう一台やってきてトゥヴィくたちは窮地に陥る。ここで三男のアザエルがはぐれてしまった。ヤコブとペレツは死んだ。 こうしてトゥヴィアはズシュの復讐に乗ったことを後悔することに。森に戻ったトゥヴィアはドイツに対して積極的に攻撃を仕掛けるのではなく、守りに徹し、森で長い間暮らす決意をした。

ルールとして「農家から略奪はするが同じ家からは何度もしない。貧しい家からは一切しない」という取り決めをした。そして「死ぬことになってもせめて人間らしく死のう」と皆に語った。
コスチュクの元へ行くと「ユダヤ人の味方」という張り紙と共にコスチュクは殺され、吊るされていた。一方アザエルはここに逃げ込んでいて生きていた。ベラハイアという女性二人もいた。

こうして強奪して日々を生きる生活が始まった。その中で牛乳屋からズシュがミルクを強奪したが、これが禍根を残すことになる。

トゥヴィアの妻も殺されたことをトゥヴィアも知った、平静を装ってはいたが明らかにショックを受けていた。 ミルクを強奪した牛乳屋が密告し、警官が森の中に入って来る。トゥヴィアたちの集団はすでに大所帯。食料や弾を持って急いで逃げた。トゥヴィアやズシュは迎撃する。するとビエルスキを出せば引いてやると言う。さらに口で駆け引きをしてなんとか退かせることができた。しかしズシュは「牛乳屋を殺さないからこうなった。兄貴は甘い」と言われる。

キャンプ地が見つかってしまったため場所を移して別の森に移動した。
新たな地で偵察をすると別の武装団と出会う。ロシア人の組織だった。ドイツと敵対しているという意味ではトゥヴィアたちと同じであり、敵対する理由はない。ヴィクトルという組織のトップと会話した。そして「精鋭をよこしてユダヤ人が戦えるという証明をしてみろ」と言われた。こうして一応、このロジア人組織(パルチザン)とは同盟関係ということになった。

トゥヴィアたちの仲間である雑誌記者イザックは集団には「共同体が必要だ」と言う。つまり武力を持つだけではなく、方針、信念のようなものがいるとアドバイスした。
ここである避難民たちが集団に加わった。彼らはバラノヴィっチェという街のゲットー(ドイツが強制的にユダヤ人をひとまとめにしている住居区)から逃げた者で、ゲットーの人間は毎日のように殺されているという。イザックのアドバイスを聞き入れたトゥヴィアはこれをなんとかしてやりたいと考える。これを救出するとトゥヴィアが言うとズシュは反対した。トゥヴィアもズシュに対して「こんなことがなければベラはお前の相手などしない」と言い、喧嘩になる。トゥヴィアがあわや石で殴りつけようとするがすんでの所で止まる。

こうしてトゥヴィアとズシュは決裂。ズシュは本物のパルチザンに参加すると言い、ズシュの考えに従う者たちを連れてロシアの組織へと加わった。
トゥヴィアはユダヤ人ゲットーへ行き殺される前に自分たちに加わるように言う。しかし「数が多すぎるし老人が多いので無謀だ」と反対する。しかし「我々が守る。パルチザンもいる」と説得する。すると多くのゲットーの者がトゥヴィアについていくことを決めた。その中には後々トゥヴィアと親しくなるリルカという女性もいた。

こうしてユダヤ人ゲットーの者が仲間になったため一挙に大勢がビエルスキ・オトリアッドに参加した。
本格的な集団になってきたトゥヴィアの組織。女も銃を取り戦う方針なので女たちも訓練した。ただし食糧に余裕がないため女の妊娠は絶対に禁止だというルールもあった。

アザエルは意中の女性のハイアに告白して結ばれた。森の中で結婚式を執り行った。
一方、パルチザンとして最前線でドイツと戦うズシュ。勇猛なズシュは指揮官にも一目置かれていた。

厳しい冬がやってきて、凍えるような寒さの上に食糧も底をついた。ゲットーに帰りたいという者が出始めた。トゥヴィアはやむなく自分の愛馬を殺して食糧にした。
ズシュはパルチザンの中でできた友と語り、「ユダヤ人は死ぬことだけは誰にも負けない」などと自虐を言う。兄は誰よりも頭に来るくそったれだとも言った。

チフスまで蔓延し始めた。トゥヴィアもこれにかかってしまう。ペニシリンが必要なので所持しているパルチザンの元へ行くが断られる。しかし、そこにいたズシュは「俺たちの村にならある」と言う。ついでに村の無線機も破壊すれば一石二鳥だと。こうして久しぶりにトゥヴィアとズシュの兄弟は共に行動し、故郷の村へ行った。そしてズシュは病気のトゥヴィアを置いて薬を取りに行った。

しかし無事に戻ってきたのはズシュのみだった。「戻ってこないか」とズシュに言うトゥヴィア。しかし彼は来なかった。 組織の中でトゥヴィアの悪評がはびこり、一部の者がずるをして食糧の配給で余分にもらっていた。トゥヴィアの病気は重症化していた。

ズシュは共にパルチザンに加わった仲間のユダヤ人、ロヴァがユダヤ人差別を受けたとしてロシア人に謝罪を求めた。そのロシア人は渋々謝罪をした。

一方トゥヴィアたちの組織。かねてから素行の悪かったアルカディは「トゥヴィアに対してもうリーダーじゃない」と言ってバカにしたが、病床に伏していたとゥヴィアは起き上がり、そんなアルカディを射殺した。そして「俺の決めたルールを破る者は許さん。嫌なら出ていけ」と言う。しかし出て行く者はいなかった。
トゥヴィアの病はリルカの献身的な看病もあって改善して動けるようになった。そして厳しい冬も終わる。

ここでリルカはタマラという女性が妊娠していることを知る。しかしこれはルールを破ったからではなく、以前、ドイツ人に暴行されたがためだという。リルカに対してトゥヴィアには絶対に言わないで、この子を生みたいと言った。
生まれた子供はトゥヴィアに見つかった。そしてタマラもその相手の男も出ていってもらおうと言うがドイツ兵に暴行された結果だとリルカに教えられ黙った。。さらにリルカは「子供は希望になる」と諭した。今まで触れ合うこともなかったトゥヴィアとリルカだが愛を確かめ合った。

ある時、偵察隊がドイツの斥候を見つけてそれが持っていた文書を発見した。それにより大軍を使って2日後に森を囲むのだとわかった。それは聖書に記される出エジプトの日と同じだった。
斥候が民たちに暴行されるが、トゥヴィアも両親の仇としてかつて3人を私情で殺した身。トゥヴィアは止めなかった。こうして斥候の皆に嬲り殺された。

ビエルスキ・オトリアッドを見捨ててロシア軍は逃げる決断をした。これを聞いたズシュは見捨てられないと言った。しかし逆らったら銃殺だとヴィクトルに言われる。 空をドイツの機が飛んでいる。トゥヴィアは今すぐに移動を開始することにしたが、空爆は始まってしまう。
トゥヴィアも空爆に巻き込まれて怪我を負う。この次は歩兵隊が来る。アザエルら男性は食い止めるために逃げずに森で待ち構えた。
トゥヴィアはこれには参加せず、非戦闘員を率いて逃げていた。しかし広大な沼にさしかかってしまう。アザエルたちもほぼ壊滅してしまった。

トゥヴィアはどうするのか選択を迫られる。諦め自決まで考えるが、しんがりを務めたアザエルは生存して「不可能なんてない。沼を渡ろう」と鼓舞した。
これに触発され絶望仕掛けたトゥヴィアも動き始める。ベルトで互いに結び合い、沼を渡るという作戦だった。 長く険しい行程だったが、ついに沼を渡り切った。

初期メンバーであるハレッツの具合が悪くなってしまう。彼はトゥヴィアに「私は信仰を失いかけていたが、神は我々に君をつかわした」と言い、これまで皆を導いてくれたことを感謝した。
沼を渡り切った直後にも間髪入れずドイツの戦車がやってくる。これを迎え撃つ一行。トゥヴィアは回り込んで大量の敵を倒す。しかし敵が勘づくと集中攻撃を受けて動けなくなってしまう。イザックは玉砕して無残に死んでいまう。

そんな絶体絶命の状況で新たにやってきたのはズシュたちソ連軍、パルチザンだった。彼らは一気にドイツ兵を蹴散らした。
ズシュと合流したトゥヴィアはまた(ソ連側に)戻るのか?とズシュに問うとズシュは「いいや」と返した。パルチザンは去り、ズシュはトゥヴィアと和解した。

こうしてビエルスキ・オトリアッドは再び新天地で森にキャンプを作る。
ナレーション。これから2年の間森に潜み、新たなキャンプには学校や保育所などもあった。そしてどんどん数は増えていき、終戦時には1200名が生き乗ったという。

そしてビエルスキ兄弟のその後が語られる。
アザエルはソ連軍に入隊したがその6ヵ月後に戦死した。ハイアとの子供を見ることはなかった。 ズシュはニューヨークに移住して運送会社を経営した。
トゥヴィアも渡米して兄弟一緒に働いた。そしてトゥヴィアはリルカと生涯連れ添った。
ビエルスキ・オトリアッドは自分らの活躍を喧伝することはなかったが、彼らに救われた子孫は数万人に及んでいるというナレーションを最後に、エンドクレジットへ。

感想・評価

第二次世界大戦の一端、ベラルーシでの森の中での何年ものユダヤ人&ロシア人とドイツ人との戦いを描いた作品。ビエルスキ兄弟のことはこの映画で初めて知ったため、こんな戦いもあったんだなあとまず驚き。戦争といえば何かを陥落させる、壊滅させる、占領する、そんなイメージが先行するが、同胞を助け、共に生き、長く生きながらえるための守りの戦いというのもあったということだ。

この作品でも隠すことはなく描かれているが、トゥヴィア率いるビエルスキ隊は決して正義の組織というわけではない。ユダヤ人からは英雄とされようと、彼らが住んでいた周辺の住民からは強盗扱いなのは紛れもない。トゥヴィアは民家からの強奪を禁じてはいないし、ドイツ兵が捕らえられた時にはリンチを止めることもなかった。ズシュがミルクを強奪した牛乳屋などからすればただの悪人以外の何者でもないだろう。この牛乳屋、腕を撃たれたりもして散々だ。

しかしこの時代のこの地域のユダヤ人というと、ズシュが「死ぬのだけはどの人種より上手い」などと皮肉ったようにただ善良に生きるだけではナチスに虐殺されるだけの存在。当人たちからすればモラルがどうこう言っている場合でないのは間違いがなく、もちろん潔く死ぬのが正しいわけなどもない。個人的には彼らの行いはやむを得ないものだったと判断する。最近見たばかりのアルゴでも事実と映画の相違について考えさせられたばかりだったが、せめて現実のトゥヴィアもこの映画ほどではなくとも、道徳を重んじる人間だったと信じたい。

登場人物解説

トゥヴィア・ビエルスキ

演:ダニエル・クレイグ
ビエルスキ兄弟の長兄。情に厚く足手まといとわかっても逃げながらユダヤ人を新たに引き込み、それらを率いて逃亡する。そのうちに数が増えていきビエルスキ・オトリアッドと名乗るようになる。道徳を重んじる性格だが、復讐心にかられて両親を殺した者を息子ごと殺したり、ドイツ兵に攻撃をしかけたりもした。しかしそういった行動が間違いだったと判断し、ユダヤ人をまとめて森の中で生きる決断をする。荒っぽいズシュとは何かと反目。ゲットーに住んでいた女性リルカと良い仲になり、戦後は彼女と共に生き、生涯連れ添ったらしい。

ズシュ

演:リーヴ・シュレイバー
次男。組織のサブリーダーだがトゥヴィアとは正反対で荒っぽい性格なためトゥヴィアとは何かと衝突する。しかしその分戦闘では勇敢で頼りになる。バラノヴィッチェという町のゲットーを救出するかしないかでトゥヴィアとは決定的に決別して、組織を抜けてロシア人のパルチザンに入った。しかしパルチザンにはユダヤ人を見下すロシア人がいたり、トゥヴィアたちを見捨てる決定をするなど、ズシュにとって必ずしも良い場所でもなかった。そして喧嘩別れはしたもののトゥヴィアとは深い絆で結ばれていた。最終的にはどういう理由でか沼を抜けたところで勃発したトゥヴィア軍VSドイツ軍の戦いに参加してトゥヴィアを救出。そのままトゥヴィアの元へと戻った。戦後はニューヨークで会社を経営した。ベラといい感じに。

アザエル

演:ジェイミー・ベル
ハイティーン〜くらいの三男。ハイアに気がある。最初は父親が殺されたことで大泣きするなど情けないところを見せるが、沼を渡る時にはしんがりをつとめ、諦めかけたトゥヴィアを差し置いて皆を励まして希望を与えるなど、著しく成長した人物。

アーロン

演:ジョージ・マッケイ
四男。ユダヤ人狩り時家にいたが隠れていたので助かった。10才くらいか。しかしショックで口がきけなくなる。それにしても、兄弟の年の差が激しすぎて親子にしか見えないのだが。あと、このアーロンだけ戦後どうなったのか語られていない。が、wikipediaによればどうやらなんと2018年現在も90才を越えて存命らしい。

ハレッツ

演:アラン・コーデュナー
トゥヴィアも幼い頃教えを聞いたことがある老教師。しかしトゥヴィアは「言っていることはよくわからなかった」と言う。コスチュクが家に匿っていた人物で、初期から組織におり、森の中でも皆に教えを説いていた。ドイツがユダヤを虐殺するような時代になり信仰を失ったとトゥヴィアに言うが、終盤、力尽きる前にはトゥヴィアに「神は我々に君を遣わした」と言って息を引き取った。

イザック

演:マーク・フォイアスタイン
元雑誌記者。ハレッツとよく論争をしている男性。ビエルスキ隊で数少ないインテリ。初期メンバーだが、ラストの沼を渡ったところの戦闘で特攻をしかけて無意味に死んでしまった。

リルカ

演:アレクサ・ダヴァロス
トゥヴィアといい感じになる女性。ゲットーからやってきた。トゥヴィアが病気になった時は献身的に看病。戦後は生涯トゥヴィアと連れ添った。この作品でヒロインといえばこのリルカ、あるいはハイアだろう。

ハイア

演: ミア・ワシコウスカ
ドイツ兵を攻撃して返り討ちにあった時にアザエルが離れ離れになってしまったが、その時アザエルはコスチュクの家に匿われていた。そしてその時共に匿われたのがこのハイア。後にアザエルと結婚する。戦後まで生き延びて子供も産んだたようだが、アザエルはその子供を見ることなくソ連兵として戦死したらしい。

ラザール

演:ジョンジョ・オニール
兄弟たちの従姉の息子で頼りない。一貫してキャンプ地の見張りをさせられている。

ロヴァ

演:ケイト・フェイ
ズシュと共にパルチザンについていったズシュに親しい友。しかしユダヤ人だからということで不当にロシア人に殴られた。これに怒ったズシュは謝罪を求めて、渋々ながらも謝罪させた。

アルカディ

演:サム・スプルエル
トゥヴィアの組織に入ってきた何かと素行の悪い人物。冬になって食糧が無くなると、増長していってトゥヴィアはリーダーじゃない、俺がリーダーだと言い出し、トゥヴィアに射殺される。

コスチュク

演:ジャセック・コーマン
トゥヴィアたちビエルスキ兄弟の父親と親しく、トゥヴィアたちを匿ってくれた。しかし二回目に会った時はドイツ人に殺され吊るされていた。

ヴィクトル

演:ラヴィル・イシャノフ
ソ連軍のゲリラ部隊パルチザンのリーダー。敵の敵は味方、ということでトゥヴィアたちとは共闘関係になるが、トゥヴィアたちがペニシリンを請いに行くと「兵士が優先だ」と言われたり、ズシュと共に入隊したロヴァをバカにして理不尽な暴力がふるわれたりして、作中のパルチザンの印象はあまりよくない。しかし最後のドイツとの戦いではズシュだけでなく部隊で救助に来てくれていた。

ベルニッチ

警官。兄弟たちの両親を殺したためトゥヴィアに復讐され、2人の息子ごと殺される。しかしトゥヴィアは気持ちがいいものではなかったようで、ズシュには「殺した時の顔が浮かぶ」と言った。

項目別評価

なるほどこんな戦いもあったんだなあと思わせる、第二次大戦の一端を描いた内容。トゥヴィアたちは必ずしも正義ではないが、それでも現実的なラインで義理人情を重んじるトゥヴィアには好感が持てた。

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