ダンガンロンパ害伝 キラーキラー 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ漫画>ダンガンロンパ害伝 キラーキラー

執筆日2017年05月09日

関連作品の感想

評論

ダンガンロンパ、希望ヶ峰学園シリーズの外伝ならぬ「害伝」。全3巻。
江ノ島盾子に端を発した「絶望」の感染により滅んだ世界で絶望の残党と戦う「未来機関」。その第六支部所属の主人公「聖原拓実」とその相方でヒロインの「麻野美咲」が活躍する物語。二人は第六支部の「特殊事件捜査科」に所属しており、猟奇的殺人の解決を担当する。

実は聖原は「キラーキラー」と呼ばれる「殺人鬼殺しの殺人鬼」。「宜保浦中学校殺人事件」という殺人事件の生き残りであり、これは実は江ノ島盾子の姉の「戦刃むくろ」が犯人。この殺人を見て美しいと感じた聖原は戦刃の殺人に憧れ、自分も殺人を犯すようになった。しかしそれは麻野たち未来機関の人間には知られないままに未来機関に身を置いている。
各エピソードにおいてはまず殺人事件が起き、聖原と麻野がそれを捜査、そして聖原が犯人を特定した後、1対1で対峙する殺人鬼に対して「殺し愛」があるかどうかを採点してから一瞬の元に「超〜殺人」という決め台詞とともにその殺人鬼をはるかに上回る常識はずれのチカラで殺害するというのが基本的な流れとなっている。最終エピソードでは宜保浦中学校殺人事件のもう一人の生き残りであり、聖原のように戦刃の殺人を見て狂ってしまった殺人鬼「不死川周二」と対決。これに勝利し、麻野の首に取り付けられた爆弾を「一度首を切断してもう一度くっつける」という神業で解除し麻野の命をも救う。自身がキラーキラーであることを未来機関にも知られ、瀕死のまま姿を消した聖原は麻野の元に現れる。そして二人は「超心中殺人」をする(つまり一生を添い遂げる)と誓い合い、上司に書置きを残して二人とも未来機関を去る。終わり。

…という話である。
この作品、連載開始直後は単に「キラーキラー」という名称の漫画として連載していて、3話目で突如、実はこれはダンガンロンパ世界の物語であることが明かされ、タイトルも「ダンガンロンパ害伝 キラーキラー」と改められた、という経緯がある。1話目と2話目ではダンガンロンパ関連の単語は全く出てこない。主人公ら2人の所属も「特殊事件捜査科」としか明言されず、3話目にしてはじめて「未来機関の特殊事件捜査科」であることがわかるのである。
こういう奇の衒い方が、V3やダンガンロンパ十神を経験した今となると余計に「ダンガンロンパらしいなあ」なんて思えないこともないわけだが…。

正直この漫画、あんまりおもしろくはない。ダンガンロンパの名を借りていなくてもいいのではないのか?という内容でしかないのだ。まず主人公とヒロインが作品オリジナルのキャラであり、ダンガンロンパ本編のキャラと関わりは全くない。未来機関の人間がファンサービス程度に出て来はするのだが、それも主役の2人にはほとんど関わりがない。展開としても、悪趣味な殺人事件が起こりそれを目茶苦茶に強い主人公が一蹴するという緊張感も何もないもの。というか主人公がインチキ臭いほど強いのが正直白ける。この聖原は戦刃むくろの殺人技術に憧れていて神聖化しているのだが、間違いなく戦刃などよりもはるかに上の強さ。例えば小さいナイフで建物全体をバッサリ刈ってしまうとかそういうとんでもない荒唐無稽な破壊描写をいとも簡単に行ってしまうのだ。ダンガンロンパ世界の最強の戦闘力を持っているのはこの聖原で間違いがない。

雑な展開に雑な解決が続くので褒めるのもちょっと難しいのだが、この作品の一つの特徴と言えば「荒廃した世界」を描いているところにある。
「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」の後で主人公の苗木誠たち生き残り6人は未来機関という機関に所属、そして未来機関というのは江ノ島の影響を受けた絶望の残党たちと戦っていたという設定のはずなのだが、この荒廃した世界というのはゲーム本編などではほとんど描かれていない。ゲームの方の外伝である「絶対絶望少女」で外の世界が少しは描写されはしたが、あれも塔和シティという限定された地域の話でしかなかった。アニメの「ダンガンロンパ3」においても、宗方たち未来機関が絶望の残党と戦ってきたことはそれなりに描写されたが、例えば荒廃した世界で一般人がどう日常を過ごしているかなどは不明だった。絶望に感染した悪人だけでなくごく普通の一般人などが何度も登場するのは、このキラーキラーをおいて他にないのだ。この件に関しては、この作品を見るに「病院などはじめ各種機関はある程度正常に機能しており、アイドルのライブなども開催されたりはするが、発生する犯罪件数は未だ異常に高い状態であり予断を許さない」という感じ。この滅んだ世界に関しては何かで説明してほしいなとは絶対絶望少女のレビューでも書いていた通りなので、こういう形であれ、一応は明らかにしてくれたのは個人的には評価したいと思う。

それはいいのだが、とにかく作品自体の出来がね…。
繰り返すが本編キャラとは全くかかわりのない2人の話であるため、ダンガンロンパの名を借りている意味がほとんどないように思えてならない。上述した3話目のサプライズをやりたいだけの作品だったような気もする。ライブ感を重視する、驚かせることに注力する、という点においては確かにこれもまた、ダンガンロンパらしい作品であると言えるのかもしれないが。あとこれはダンガンロンパ十神にも言いたかったことなのだが、作品の完結はアニメの3の放映時にどうにか合わせるべきだったろうと思う。やはりそうすると話題性、盛り上がりが全く違ってくるし。現在、ダンガンロンパと言えば最新作の「V3」のことを指す状態となっていて希望ヶ峰学園シリーズは影が薄くなってしまっている状態なので、こうひっそりと結末を迎えるとなにかもの寂しさも感じてしまうものがあるんだよなあ…。

項目別評価

まるで共感できない上にインチキくさい戦闘力を持つ主人公、特に魅力を感じないその相方、雑な展開、そして当然のように打ち切りじみたラスト…。
せっかくダンガンロンパの名前を借りてるのだからもう少し上手いこと料理できなかったのかという印象。しかし本編などではほとんど不透明な「一般人を含めた滅んだ世界の状況」を描いたという点では稀有であり、そこに価値があると言えるのでテーマ性に反映してみた。

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