ビューティフル・マインド 評価 -凡人の感想・ネタバレ-

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執筆日:2017年05月29日

あらすじ・ネタバレ

韓国の作品で同名のものがあるが、ここでは2001年アメリカ映画のビューティフル・マインドのあらすじやネタバレを掲載。

数学者ジョン・ナッシュはプリンストン大学院に所属していた。しかしその変わり者ぶりから孤立しがちで、優秀な生徒のみが受けられるカーネギー奨学金制度を受けているマーティン(ジョンも受けている)に面と向かって批判をしたりした。それにもかかわらず、自分自身は論文を書くことができないために焦っていた。彼を励ましてくれたのはルームメイトのチャールズ。彼はいつもジョンを気さくに励ましてくれて、ジョンにとっては唯一の親友だった。友人たちとの酒の席から「ゲーム理論」の着想を得て、それについての見事な論文を書き上げてマサチューセッツ工科大学(MIT)に推薦された。

ジョンはウィーラー研究所の人間としてペンタゴンに招待されていた。そこでは暗号解析が行われていた。画面に表示されている数字を手掛かりにジョンは短時間でその謎を突き止めてしまってペンタゴンの人間を驚かせたのだった。

ジョンは大学での教授としての仕事を退屈としていたが、ある日パーチャーという国防総省の役人がジョンに接触してきた。
彼はジョンに対してソ連の暗号解析をするように指示してきたのだ。腕には識別番号を埋め込まれてアメリカのスパイということになってしまったのだ。ジョン の仕事は雑誌に隠された暗号を解き明かすことだった。

教え子の中で一人変わった女性がいた。それはアリシアという女性だった。彼女がジョンの研究室を訪問してきた時、ジョンはデートに誘う。それで二人は親しくなっていった。

ジョンは暗号解析の仕事を継続していた。暗号を解き明かした後は指定のポストへと入れるのだが、その時周囲には不審な気配を感じ、ジョンは恐れていた。
また、この頃ジョンの元にかつての親友パーチャーが姪のマーシーを連れて現れた。

ジョンはアリシアにプロポーズをして二人は結婚する事になる。しかし結婚式でもパーチャーの姿があった。
1954年、いつものようにジョンがポストに解析した暗号を入れたところ、ソ連の組織の人間に追われることになった。パーチャーの車に乗ってカーチェイスが始まる。なんとか無事だったが、この出来事を機にジョンは暗号解析の仕事を辞めたいとパーチャーに言った。しかしパーチャーは許さないと言った。もしやめるというのならばもうジョンを助けることもしないと。
このせいでジョンは夜はあかりを消すようにアリシアに強要するようにもなり、アリシアは不審に思っていた。

ハーバードの全米数学者会議でジョンは講義を行うことになったが、言葉がおぼつかないものであり受講者はジョンが何かおかしいことに気付いていた。そしてその場に黒い服を着た人間が現れる。ソ連の手の者だと思ったジョンその場から逃げ出してしまうのだった。しかし囲まれて捕らえられる。その人物たちはソ連の人間ではなく、ローゼン医師という精神科医だった。それは恐らくアリシアが連絡した。

ジョンはローゼンと対話。すると真の事実が明らかになる。ジョンの親友であるチャールズや国防総省のパーチャーなどといった人物は存在せず、さらに暗号解析の仕事というものまでジョンの妄想だったのだ。
このことを知って妻アリシアも驚く。ずっとチャールズや暗号解析の仕事も存在するものだとアリシアも思い込んでいたのだ。

アリシアがジョンの研究室に入るとそこには雑誌の切り抜きが無数に壁に貼り付けられて異常な様子だった。同僚の二人もおかしいとは思っていたが、ジョンは昔からおかしいので放置していた。ジョンがいつも入って行く施設は廃墟で、解析した暗号を入れていたポストには誰もそれを取り出さないままに放置されていたのだった。

アリシアはジョンと対面して全ては妄想だったことを告げる。ショックを受けるジョン。腕に埋め込まれたチップをえぐり出そうと自傷するが、暗号が消えたなどと言ってジョンは茫然とした。ジョンは薬を使った厳しい闘病生活を行うことになった。

ジョンとアリシアの間には子が出来たが、ジョンは仕事をしないで自宅療養となった。しかし、ジョンは薬のせいで性的に不能となってしまっていて、ジョンの働きがないゆえの経済的困窮からアリシアのストレスも限界に達しようとしていた。
さらにはかつてのような妄想が再発し、自宅近くの庭にまた雑誌の切り抜きを無数に張り付ける異常行動も行うようになってしまっていた。
アリシアはジョンに子供の世話を任せたが、ジョンは妄想のせいで危うく子供を溺れさせてしまうところであり、これをきっかけにアリシアは家を出ようとする。しかしジョンはなんとか「マーシーがいつまでも年を取らない」ということから幻覚、妄想であることを認識して正気に戻る。

ジョン、アリシアは自宅にローゼン医師と相談する。実はジョンは最近は薬を使っていなかったのだ。薬を飲むと副作用からまともに生活できなくなり、妻との関係を拒んでしまう自分に嫌気が刺したからだ。
ジョンはアリシアに対して「僕から離れて生活しろ」と提案する。一度はそうしようとしたアリシアだったが、例え危険があってもジョンと共に生活する覚悟を決めた。ジョンはアリシアの愛を受け止め、二人は抱きしめあう。

ジョンは古巣であるプリンストン大学を訪れた。そこではかつての同期マーティンが出世していて地位を確立していた。かつてはマーティンの論文を厳しく批判したりしたジョンだったが、結局は君が勝ったな、などと褒めながらジョンはマーティンに対して自分を大学に置いてくれないかと頼み込んだ。それを受け入れたマーティンだったが、ジョンの統合失調症は治らず、大学構内で暴れてしまうこともあった。

そんなことがありながらもジョンは大学へ通うことをやめなかった。そしてチャールズやマーシーやパーチャーに対して、たとえ目に見えたとしてももう二度と相手をすることはないと決意を固めた。

図書館で研究を続ける日々が続く。時は流れて1978年。ある日若いトビーという学生が図書館のジョンに話しかけてくる。それをきっかけに図書館で他の学生に教えることもあるようになった。それを見たマーティンはアリシアを呼ぶ。学生に慕われるジョンをアリシアは嬉しそうに見つめた。これをきっかけにジョンは教鞭を取る決意をする。

さらに時は流れて1994年。講義を終えたナッシュの元へトマス・キングという人物が現れた。ジョンがノーベル経済学賞の受賞候補者としてノミネートされているということを告げる。
食堂で話をすると、ジョンが統合失調症であるためにその様子を直接確かめるためにジョンに会いに来たのだという。
すると周囲の人物が次々とジョンの元にペンを置き始める。実は多くの数学者が食堂に集っていた。それはかつてジョンが学生の頃羨望の眼差しで観ていた光景だった。

ノーベル賞の授賞式でのジョンの式辞。
そこで妻アリシアに対して「今夜私があるのは君のお陰だ。君がいて私がある」という言葉を贈る。スタンディングオベーションで会場は沸き上がった。

式が終わって妻アリシアと話すジョン。未だチャールズ、マーシー、パーチャー三人の幻覚は見えていたが、何でもないと妻に言いながらエスコートした。

感想・評価

数日前にイミテーション・ゲームを見た後、「天才学者を扱った映画といえばこれもあった」と連想して観ることに決めた作品。
なのだが、実は視聴は2回目だった。しかしそれを完全に忘れていて、おかげでジョンが幻覚を見ているというところも見事に騙されてしまった。他の映画で例えるならシックス・センスを一度見たのに2回目の視聴では主人公が幽霊であることを忘れていた、というようなもので、一度観れば普通忘れないよなあ?ということをなぜか忘れてしまっていたのである。多分、それこそイミテーション・ゲームを直前に見ていたことの思い込みだ。あちらはイギリスの諜報機関MI6の暗号解析の仕事を数学者アラン・チューリングが行うというものであるわけで、そのせいか「暗号解析を行うよう政府側から命令される」なんていかにも妄想のような話を疑わないでしまったのだ。
しかしどういう理由付けにせよ一度見たのにそれだけインパクトある事実を忘れてしまったいたということは、恐らく1回目は流し見していたのだろうか?

作品のジャンルとしては、ホラーのようなサスペンスのような、人間ドラマ。序盤はジョンの主観で幻覚であるパーチャーやチャールズとの関わりがしばらく描写されるのだが、中盤でこれらが実在しない人物であることが明かされて以降は闘病生活をするジョン、そして妻アリシアがそれを支えるという、ジョンに対するアリシアの献身的な愛が強調される構成になっている。夫が重度の精神病患者であることを知り、働けない夫のせいで困窮し、夫婦としての関係を拒まれ、ジョン自身からも「僕から離れた方がいい」と言われても夫のそばにい続けた。そうしてアリシアに支えられながらプリンストン大学に居続けるうちに教鞭も取るようになり、60歳を過ぎた頃にノーベル経済学賞も受賞。授賞式でアリシアに対して感謝の言葉を贈るシーンは実にグッとくる。

ところで、2015年にジョン・ナッシュ、アリシア・ナッシュ夫妻は交通事故で共に亡くなってしまったようで。
この映画のラストはまさにおしどり夫婦という言葉が相応しいくらいに仲睦まじい二人の姿を映して終わりとなるが、そういう事実と照らし合わせるとこのラストシーンを見るとなんだか悲しい気分になる。せめて冥福を祈りたい。

登場人物解説

ジョン・ナッシュ

演:ラッセル・クロウ
アメリカの数学者。天才的な能力を持っていたが、自分も知らないうちに重度の統合失調症を抱えており、幻覚や妄想に囚われていた。中盤までこのことは明らかにされないため見ている側はショックを受ける。幻覚やその幻覚の話す言葉がどこまで事実と同じなのかは分からないが、パーチャーやチャールズの言葉はジョン自身の功名心や自尊心がそのまま表れたようなものだ。それがジョン自身の内心だとするのなら1994年にノーベル賞を受賞した時はさぞ幸福だったろうと思う。つい最近の2015年まで存命だったのに、まさかアリシアと共に事故死というのは悲しい…。

アリシア・ナッシュ

演:ジェニファー・コネリー
ジョンの妻。元々は大学の教え子。ジョンが統合失調症であることに気付いたのは結婚してからだった。ジョンの様子にストレスを溜め込み爆発させることもあり、ジョン自身も「君も僕から離れた方がいい」と言って別居を促すがそうはせずに支えた。ジョンがノーベル賞受賞時にアリシアに感謝の言葉を贈るシーンは落涙もの。

パーチャー

演:エド・ハリス
ジョンが見ている幻覚の人物その1。アメリカの秘密機関の人間で、ジョンに対して雑誌に組み込まれているというソ連の暗号解析を行うように指示する。最初のうちはジョンと1対1で会うのに徐々にどこででも登場するように。

チャールズ

演:ポール・ベタニー
ジョンが見ている幻覚の人物その2。学生時代の同居人のように描写されていたが、実はジョンは一人部屋に住んでいた。役者さんはアヴェンジャーズのヴィジョン役もやっているようで。

ローゼン医師

演:クリストファー・プラマー
ジョンの主治医。この医師が出てきたところで初めて視聴者側としてはジョンが統合失調症だということを知ることになる。

マーティン

ジョンのプリンストン大学での同期。ジョンは面と向かってマーティンに対して批判したりしたが、マーティンはというとむしろジョンに対して寛容に接していた。MITへの推薦がジョンに決まった時も笑顔で「おめでとう」と言う。闘病生活を脱しようとするジョンがプリンストン大学を訪れた時には教授として地位を確立していた。ジョンの頼みを聞き入れ、さらに学生と接するようになったジョンを見て喜ぶなど、もしかするとこの作品で最も良識的な人物では。

項目別評価

実際には存在しない幻覚を見ている、というのは騙される人はすっかり騙される。本質はジョンとアリシアの夫婦愛の物語か。序盤でのペンを贈るシーンを忘れた頃の後半で持ってくる演出はいいシーン。が、少し調べると事実と異なる部分や描いていない部分も多いということに少々がっかり。しかし映画に落とし込む以上はある程度そういうことは仕方ないと思い直し、評価には反映しないことにした。だが、同じく天才学者を主役にしたイミテーション・ゲームとどちらが面白いかというと、個人的にはあちらを推す。

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