ドラゴンボールZ ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜 -凡人の感想・ネタバレ-

凡人の感想・ネタバレ映画>ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜

執筆日:2018年4月12日

あらすじ・ネタバレ

ドラゴンボールの物語が開始するより前、原作1巻よりも前の時代。

のちに地球で孫悟飯により孫悟空と名付けられることとなる赤子が戦闘民族サイヤ人の母星、惑星ベジータで産声を上げた。赤子はカカロットと名付けられた。サイヤ人は生まれた直後に戦闘の適正を調べられ、潜在能力が低いとみなされた下級戦士は辺境の星へと送られるのが決まりだった。

サイヤ人は当時、その全員が宇宙の帝王フリーザの手下として動き、宇宙のあちこちで星を制圧するために活動していた。

カカロット、孫悟空の父親のバーダックはという勇猛なサイヤ人だった。バーダックもまた他のサイヤ人と同様にフリーザの手下として動いており、悟空が生まれた頃、カナッサ星という星で原住民を絶滅させるためにトーマセリパといった仲間たちと暴れまわっていた。

カナッサ星人を全て絶滅させ、バーダックたちが一息入れていた時、突然生き残りのカナッサ星人が現れる。そしてバーダックの隙をついて首に打撃を入れる。そのカナッサ星人は「お前に未来を予知できる能力を授けた。お前たちには呪われた未来しかない」と言う。バーダックはそのカナッサ星人にトドメを刺すが、直後にバーダックは昏倒してしまう。

意識を失ったバーダックは妙な夢を見る。それは惑星ベジータが爆発し自分も含めたサイヤ人が絶滅してしまうというものだった。それはカナッサ星人が言う通りの不吉なものだった。

バーダックは惑星ベジータのメディカルマシン(体力回復装置)で目を覚ます。妙な夢を見たとは思っていたが、それでもまだそれが予知だということはバーダック自身も信じてはいなかった。
トーマたちが別の星を制圧するためにバーダックを置いて再び出立したということを知ったバーダックはそれを追う。
その途中、バーダックは自分の息子のカカロットを見つける。元気に大泣きする元気な赤子だった。息子を見ているとバーダックの脳裏に再び、夢で見たような妙なイメージが浮かんでくる。装着しているスカウターで戦闘力を計測するとたったの1。自分の息子でも「クズめ」と吐き捨ててバーダックはトーマたちを追った。

一方バーダックの仲間のトーマたちは次のターゲットの惑星ミートへ来ていたが、フリーザの側近の一人であるドドリアにやられてしまっていた。瀕死のトーマに対してこれは「フリーザ様のご命令だ」と伝えるドドリア。トーマは「散々こき使っておいてこの仕打ちか」と恨み言を吐くが、ドドリアは容赦なくトーマにアッパーを食らわす。

トーマを追ってバーダックがミートに到着するが、そこで見たのは死した仲間たちだった。かろうじて生きていたトーマと話すとフリーザはサイヤ人を滅ぼそうとしているとバーダックに伝える。トーマは「仲間を集めてフリーザと戦え」と言い残して息絶えてしまった。
バーダックはトーマが腕に巻いていた布をとって血に染まったトーマの顔を拭いてやる。すると段々とその布は血で赤く染まっていくのだった。

スカウターに反応があり、気づくとそこには4人のフリーザの部下たちがいた。トーマの血で赤く染まった布を鉢巻きとして額に巻くバーダック。そして4人を相手に猛然と戦い始める。
バーダックの戦闘力は下級戦士としては異例で10000近くにもなっており、この4人よりもはるかに格上だった。しかし戦闘中、またも脳裏におかしなイメージが走り、バーダックの集中力を途切れさせる。それは自分と同じ顔をした青年が戦うイメージだった。
それでもバーダックは4人の敵を見事倒してしまう。

しかし今度現れたのはバーダックよりも格上のドドリアだった。「なぜオレたちを!」と尋ねるバーダックを無視してドドリアは口からエネルギー波を撃ち出してバーダックを始末しようとする。
ドドリアは殺したと思い込んでいたが、バーダックは生き残っていた。しかしかなりの重傷を負ってしまっていた。

バーダックが宇宙ポッドで惑星ベジータに引き返す途中、フリーザの宇宙船も惑星ベジータへ向かっていた。本当にフリーザはサイヤ人を滅ぼそうとしているのだとバーダックは理解する。

そして今度は惑星ベジータからもバーダックが乗っているのと同じ一人用の宇宙ポッドが射出される。それにはカカロットが乗っていた。辺境の星である地球に向かって発射されたのだ。これが親子の今生の別れだった。

惑星ベジータに戻ったバーダックはサイヤ人たちが集まっている酒場へと向かうが、瀕死の状態のため足元もおぼつかない。ようやく酒場に辿り着いたバーダックは「フリーザは自分たちを滅ぼそうとしている」と伝える。
だが、サイヤ人たちはバーダックの言葉は信じず、笑ってバカにするだけだった。バーダックは「てめえら全員地獄へ落ちろ」と吐き捨てて去る。

バーダックは塔の屋上に向かって階段を上る。その中でもまた惑星ベジータが爆発する予知を見て、これがこれから起こる現実なのだと理解する。
だが屋上へたどり着いたバーダックは「俺が未来を変えて見せる」と闘志を燃やし、単身、空に見えるフリーザの宇宙船に向かっていった。

フリーザの宇宙船に近づくと、宇宙船からは無数のフリーザの部下たちがバーダックに向かって襲い掛かって来る。だがバーダックはひるまずにそれらを蹴散らしながら猛然と飛んでいく。
それを見ていたフリーザは「上部ハッチを開けなさい」と側近のザーボンに命令する。そして自分へ歯向かうバーダックに対する怒りの表情をあらわにした。

バーダックはついにフリーザの宇宙船に辿り着く。「俺は貴様が許せねえ」と息巻くバーダックに応えるかのようにフリーザが宇宙船のハッチから姿を現す。
バーダックは「これで全てが変わる」と言い渾身のエネルギー弾を放つが、フリーザの指先から出たエネルギー弾はみるみる大きくなり、バーダックのエネルギー弾を飲みこみ、そして惑星ベジータに向けて超巨大となったフリーザのエネルギー弾が放たれる。

バーダックはそのエネルギー弾に飲み込まれながらも、自分の息子カカロットがフリーザと対峙する予知を見ていて、満足気に笑みを浮かべる。そして息子の名前を呼びながら惑星ベジータもろともに消え去ってしまった。そして「俺の遺志を継げ。サイヤ人の、惑星ベジータの敵をお前が討つんだ」というバーダックのモノローグが流れる。

惑星ベジータ消滅の知らせはサイヤ人の王子であるベジータにも伝えられた。フリーザの仕業ではなく「巨大隕石の衝突により消滅した」と伝えられたが、母星が消えたということを知ってもベジータは全く狼狽えることはなく、興味なさげだった。

一方、カカロットが飛ばされた地球。
宇宙ポッドはとある山奥に落下していて、それを見つけたのは孫悟飯だった。そして大声で泣く赤子に対して「孫悟空」という名前をつけてやったのだった。
こうしてドラゴンボールの壮大な物語は幕を開けることになった。

感想・評価

映画ではなくテレビスペシャルとして放映されたドラゴンボールのエピソードゼロ作品。最近ブロリー出演の劇場版3作の感想を書いた流れで、ブロリーと同じく「ドラゴンボールファイターズ」のDLCキャラとして配信された悟空の父バーダックが主人公のこの作品のネタバレ感想を書く。

この作品何度も視聴した。本当に何度も。
でも何度見てもいくつになっても、この作品やっぱ素晴らしいなあとしみじみ思うわけですよ。
この作品、ドラゴンボール作品としては実に異質な部分が多く、しかしそこがまた魅力となっている。

まず、主人公が正義の存在ではないということ。
というかバーダックはフリーザの言うことを聞いて罪のない星々を滅ぼしているので完全に悪の側なのだ。言ってしまえば巨悪の使い走りをやっていたちっぽけな男が反逆するという話なのだが、善悪を越えた男の意地やプライド、闘志を強調するものとなっている。悟空とは違って敵を裸締めで殺すというようなダーティな戦い方をするのがバーダックの特徴だが、これがまた格好良い。

それとBGMが異質。
この作品を知っている者ならば恐らく誰もが印象に残っている「ソリッド・ステート・スカウター」。バーダックのテーマ曲と言っても過言ではない曲だろうが、これがまた素晴らしい、ここぞという場面で流れるのが実に格好良い。この作品、当時のテレビアニメのドラゴンボールで使われている曲を使っているのだが、このソリッド・ステート・スカウターだけは完全にこの作品オリジナルのものであり、他作品への流用はない。それゆえ特別感があり、この作品を語るに外せない要素の一つとなっている。

そして主人公が敗北して終わるのだが、これがまた良い。
鳥山明が原作に設定を逆輸入したというのは有名な話。原作26巻でフリーザが悟空を初めて見た時に「あいつに似ている」と気付くシーンがあるのだが、この「たったひとりの最終決戦」に触発されてあのシーンを入れたのだという。

バーダックとフリーザの戦闘力差を考えればまさに万が一にも勝ち目はなかったわけだが、フリーザに向かっていった時のバーダックの頭には「勝てないかもしれない」などといった後ろ向きな感情はまさに微塵もなかったはず。
勝ち目があるなしの問題ではない、今立ち向かわねばいけない、勝敗の彼岸にある意地やプライド、それを貫き通して見事に散っていくバーダックの姿は男子の魂に、本能に語り掛けてくるものがあるのだ。
自分のエネルギー弾がフリーザの出したエネルギー弾に飲み込まれる時のバーダックは「なに!?」と驚くが、これは裏を返せばこの瞬間まで自分の勝ちを疑っていないということになる。ドドリアにさえ勝てなかったバーダックがフリーザに打ち勝つことが出来ると本気で考えていたのか?と言えば、恐らく本気で考えていたのだ。

理屈を振り切って、今戦わなければいけないから戦うだけだ勝つだけだ、というこの精神は、「悪」の側の人間でありながらも気高く高潔で、実にヒーロー的。

この精神はまさに悟空にも継がれたのだろう。先に感想を書いた「燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦」の中で悟空はブロリーに何度打ちのめされながらも立ち上がり決してあきらめる事はないが、ヒーローというものの本質はここにある。いくら強大な相手を目の前にしても折れない、諦めない。自分より実力が上だとなれば戦意を喪失してしまうベジータとはまさに正反対。正義だとか悪だとかという上辺の立場、精神などより、この不屈の精神というものにこそ、男子が憧れるヒーロー性というものは宿るのだと思う。
バーダックというキャラクターの人気は初登場から30年近くが経過した今も衰えていないが、瀕死の重傷で、しかも味方の一人もいない状況でなお、闘志を燃え盛らせるそのヒーロー性こそが、男子の心を撃ち抜くのだろう。

そしてエンディングで「光の旅」が流れる中アニメでの悟空の勇姿が映され、最後にバーダックたちをバックにフリーザと向かい合う悟空のイラストが表示されるが、ここまで作品を観ると、ドラゴンボールという作品の壮大さを感じずにはおられず、何か切なさもこみあげてくる。ドラゴンボールでこんな感情にさせてくれる作品は他にはないと思う。
ドラゴンボールのエピソードゼロとして、出来過ぎているくらいに完璧な作品。いくつになっても熱い心を思い出させてくれる大傑作。

人物解説

バーダック

声:野沢雅子
カカロット、孫悟空の父親。最下級戦士ながらも戦闘力は10000に迫る。つまり少なくとも原作で悟空がベジータと戦った時よりは上であり、上級戦士らしいナッパよりは遥かに上ということになる。粗野で粗暴なサイヤ人ではあるが、誇りと意地を貫いてフリーザに挑み散る。

トーマ

声:曽我部和恭
バーダックの仲間4人のうちではリーダー格?ドドリアとその部下?たちにやられてしまう。フリーザがサイヤ人を滅ぼそうとしていることをバーダックに教え、「仲間を集めて戦え」と言い残した。このトーマ以外の3人の名前は作中では出てこない。

セリパ

声:三田ゆう子
トーマと同じくバーダックと親しい仲間の1人で紅一点。セリパという名が作中呼ばれることはない。トーマと同じく惑星ミートでドドリアとその配下に殺される。

ドドリア

声:堀之紀
ザーボンと並んでフリーザの側近を務めるピンク色の宇宙人。戦闘力は22000程度とされる。原作では地球で瀕死の重傷を負った後に復活したベジータにやられる。バーダックが10000だとしても倍以上なので勝てるわけはなかった相手。

フリーザ

声:中尾隆聖
宇宙の帝王。宇宙中の星々を制圧してわが物とするのを生業としている。戦闘力は530000。最終形態では1億以上とされる。ドドリアに勝てないバーダックが万に一つも勝てる相手ではないが、サイヤ人を危険視しており、いつか自分を脅かすかもしれないと考えて滅ぼしてしまった。

カカロット(孫悟空)

声:野沢雅子
知らぬ者はいないであろう、漫画「ドラゴンボール」の主人公。バーダックの息子。生まれた時の戦闘力は1しかないため、最下級戦士とみなされ、脅威のない辺境の星である地球に送られることとなった。結局、悟空は父親の名前すら知る機会もないのだが、ブロリー初登場の映画「燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦」でブロリーの父親のパラガスから「バーダックのせがれだろ?」という発言を聞いている。映画はパラレルなので、原作だけ見れば結局バーダックの名前は知らないということになる。

項目別評価

ドラゴンボールZ「たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜」評価

主人公バーダックは孤高で気高くこの上なく格好良く、その精神に心揺さぶられずにはいられない。最後まで視聴すると切ないような悲しいような感情もこみあげてくるというのもドラゴンボール作品としては異質。ドラゴンボールのエピソードゼロとしてはほぼ完璧だと思う。

凡人の感想・ネタバレ映画>ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜